昨日は日曜日だったので夕食は、慣習となっている通り実家で食べた。
マスヲの家族では下戸はいないため、母親もお酒をたしなむし、弟は毎日晩酌するため実家で顔を合わせるときにはたいていお酒を口にしている。
マスヲが日曜日に実家で家族と食事をする時に、お酒を飲む割合は2割くらいだろう。
昨日もそうだったのだが母親と弟だけがお酒を楽しみ、マスヲだけがノンアルコールのビールであわせることが多い。
マスヲの住む地域では昨日は梅雨明け前なのに、日中35度を超すような暑い日になった。そのせいか母親もそれなりにお酒を飲んでいたのかもしれないが、少し気になるようなやり取りがあった。
マスヲが最近同人誌に出戻りをしたことを以前話していたのだが、小説で何を書きたいのかと聞かれたのだ。
この手の質問は誰にされても相手に併せて答えなければならないこともあって、非常に難しいし答えるのが面倒臭いのだが、その前に質問されたこと事態にいくつもの疑問が湧いたのだ。
まず、母親は小説どころか本を読まない。むかし、『風と共に去りぬ』が好きだと話していたので、原作の文庫本をプレゼントしたことがあるが、目が疲れるからと言って一切読もうとしなかった。
また、以前マスヲが同人誌に参加していた時のことにはほとんど興味を示していなかったからだ。逆に亡くなった父親は同人誌に発表した作品を読んでくれたし、マスヲが小説を書くことを好意的に捉えてくれていた。
ちなみに父親の読書冊数はマスヲの家族の中では断トツだろう。父親がウイスキーを嗜みながら本に目を通していた姿は良く目にしたし、癌で病院に入院していたときも何冊かの文庫本を枕もとに置いていたほどだ。
まったく小説を読まない母親に対して何をどう答えるのか困ってしまったが、次の言葉しか出てこなかった。
ヒューマニズムかな、と。こっちは必死に考えて答えたのに母親はピンと来ていないらしく、少し絡みがちに、もっとわかりやすいようにと追加の説明を求められたのだ。
社会的なことや時事的なことを今は意識して書こうとは思わない、そのようなことが問題になるのもそれを引き起こしているのが人間なのだから、と追加説明するのが精一杯だった。
それでも、母親は納得できていない様子だったが、有名私大の文学部を卒業している弟が間に入ってくれたので母親の気持ちもその場では収まったようだったが、マスヲの言ったことをどこまで受け入れてくれたのかはわからない。