淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

ありがとう

 マスヲの母親は花が好きなようだ。結婚前には花嫁修業のひとつとして草月流の生花を嗜んでいたようだし、マスヲと弟が社会人になったあとにはカルチャーセンターでフラワーアレンジメントの講習に通っていたほどだ。

 ここ数年の母の日には花束かフラワーアレンジメントを贈っている。

 

 今年の母の日にはマスヲの娘が選んだ生花による花束を贈る予定だったが、友人がオーナーのフラワーショップが大変忙しかったために断念した。

 代わりに作成されてあったフラワーアレンジメントから娘が妻と義母と母にそれぞれ選んで贈ったことを以前の記事「5月の第2土曜日」で書いた。

 

 七夕の夜に妻の実家を訪ねて娘に会った理由は2つある。ひとつは先日ふたりで蛍狩りに出かけた写真を現像して彼女に贈ること。そして、もうひとつは母親の誕生日に花束の花材を選んで渡してもらうことの了承だ。

 昨日は母の誕生日だったからだ。

 昨日、娘を連れだすことを妻から七夕の夜に許可をもらったので、娘がスイミングスクールの終わった後の夕方の16時30分に彼女を迎えに行った。

 

 毎年、父親の生前から母親がビアガーデン好きなので母の誕生日には浩養園などに出かけていたが、今年は趣向を変えて塚田農場で食事をすることになっていた。

 お店の予約時間は18時30分にした。

 そのために妻の実家のある名東区から名2環と名古屋都市高速を乗り継ぎ、小牧にある友人が経営しているフラワーショップに向かった。

 先日は下道でフラワーショップに向かったので、道が違うこともあって娘も少しテンションが高くなっていた。

 

 今回は友人に事前連絡することを失念していたのにも関わらず、毎度変わらずに気持ちのよい対応を終始してくれた。

 前回訪れたときは母の日の前日だったために他の従業員やお客が多かったせいか心持ち緊張していたような娘も、昨日は硬さが見られなかった。

 マスヲの友人でもあるフラワーショップのオーナーが生花から、ラッピングやリボンの選択まで彼女の選択を優先しながらも上手くリードしてくれたおかげで、初夏らしい素敵な花束が出来上がった。

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 その最中、特に生花を彼女が選択することはマスヲにとってはとても興味深く、生花どうしの組み合わせには彼女特有の個性を発見したし、時にはオーナーとマスヲの目があったシーンも何回かあった。

 ちなみにフラワーショップのオーナーの友人も子供は2人の女の子なので、多少はマスヲと似たような経験をもっているのかもしれない。

 

 出来上がった花束の持ち歩き方をマスヲが娘に教えたが、出来た花束が立派な大きさで彼女のまだ少し小さな腕では持ちにくそうだったが、なんとか車が停めてある駐車場まで運んでもらった。

 そして、花束を大事に乗せてから2人は車に乗り込み、マスヲの実家まで高速を車で走らせた。実家近くのインターを降りると小さな渋滞に捕まってしまった。

 実は母には娘が当日参加することと、花束を渡すことを隠していたので、先に出かけてしまう可能性があった。

 マスヲたちが着く前に出かけないようにと18時の10分前くらいに母に電話で連絡をした。

 

 そして18時ごろ実家に到着して母親に花束を渡すことが出来た。娘が家で書いてきたという手紙も一緒に、だ。

 せっかくなので娘が母に花束を渡す様子の写真をスマフォで写真に撮った。

 それから、母親には娘と実家から先に予約してある食事先まで向かってもらうことを頼んだ。マスヲは車を自宅に置いてくる必要があったからだ。

 

 マスヲの車に娘の小さな袋が忘れてあったことを自宅で車から降りるときに気が着いたので、その袋も食事先に持って行くことにした。

 その袋にはまだ何か入りそうだったので、マスヲの保育園からの友人から、先日もらった沖縄土産のちんすこうを2、3個入れておいた。

 実はマスヲは沖縄銘菓のちんすこうが大好きだ。そんなことを友人に話したことがあったかも、記憶があやふやだったが多分話したことがあったのでそれを覚えてくれていたのだろうと思う。

 彼はそういったさりげないところで活かされるような記憶力は素晴らしいからだ。口ではぶっきらぼうなことを言うことも多いが根は優しいのをマスヲは知っている。

 ちんすこうは好き嫌いがはっきり分かれるお菓子だと思うが娘にとってはどうなのだろうか。今度会ったときにさり気なく聞いてみたい。

 

 妻との約束で娘にシャワーを浴びさせてから送ることを約束していたこともあり、マスヲの実家から妻の実家までタクシーを使うことをすでに想定したいたために、最寄りの駅までは自転車ではなく歩いた。

 駅まで来るとタイミング良く次の電車は急行だった。18時30分には間に合いそうもないが、10分ほどの遅れで済みそうだ。母と弟に10分ほど遅れることをメールで伝えた。

 

 マスヲが店に着くと予約を取ってなければ座れないくらい混雑していた。店員に案内されて予約席に向かうと母と弟と娘の3人でメニューを開いていた。

 店の代表的なメニューを何品か注文した。大人3人はビール、娘は日向夏ソーダを頼んで4人で母親の誕生日を祝して乾杯した。

 

 室温が少し低めに設定してあったせいか少し寒さを感じた。

 店員に室温を上げてもらうことを頼むと気持ちよく対応してくれた。また、母親が小さなブランケットのようなものを娘にかけてくれた。

 そんな様子が店員の目に入ったのか、子供が肩にかけられるようなものを用意してくれた。そんな気遣いがこの店の居心地の良さにも繋がっているし、人気になっている理由のひとつだろう。

 鍋料理の炊餃子を頼んだのだが、それを食べ終わるとそれでも娘は寒いと行ったので、少しだけ2人で店外に出た。

 店の入口で娘を肩車しながら通り過ぎる車などを一緒に見たり、店の入口の窓ガラスに予約客の歓待の言葉が書かれている欄にマスヲ一家の名字などを2人で見ながら過ごした。

「また寒くなったらお父さんが外に連れてってくれるもんね」店外から戻ると娘は言ってくれた。

 

 母親もそれなりに満足している感じだったので、娘のためにミニラーメンと炊餃子の後にいれる鍋料理用の締めのラーメンと手羽先のから揚げを注文した。

 娘はお腹が一杯になりだしたことを感じはじめたが、もう少しだけこの空間を味わいたかった。

 娘のために塚だまプリンと大人3人はざぶとんメンマと飲み物を、それぞれ最後の注文とした。

 最後に注文した料理と飲み物を口にし終わると会計をして店を出た。20時ごろだったと思う。

 

 塚田農場がある通りは広い国道のせいか、思っていたよりも気持ちのいい風が吹き抜けていった。昨日の日中の暑さを連れ去っていったような風だった。

 そんな風の中を4人はマスヲの実家に向かうためにターミナル駅まで歩いた。

 

 駅まで来ると運よく次の電車は普通電車だった。マスヲの実家の最寄り駅は普通しか停まらないからだ。そして、その電車も数分後にホームに滑り込んできたので、4人で乗り込んだ。

 降りる駅は乗車駅から数駅で、乗車時間も10分ないほどなのだが、それ以上に乗車時間が短く感じた。

 電車が降りる駅に着いた。マスヲが子供のころにはその駅は有人駅だったのだが、今は無人駅なっている。

 娘にとっては無人駅の自動改札を通るのは初めてだったのだろう。楽しそうに真っ先に一人で改札を通過して行った。

 無人の駅舎を出て幹線道路を渡り、実家が近づくにつれて全員が蒸し暑さを感じていた。

 塚田農場がある街よりもマスヲの実家の方が郊外になるはずなのに、だ。

 

 実家に着くと弟は慣れた手つきでいつもの晩酌のように追い酒をはじめた。そんな弟としばらく娘はふざけながらじゃれあっていた。

 しばらくすると娘が帰りたくない、マスヲの実家に泊まる、と言い出した。

 今まで娘がマスヲの実家に泊まったことはなかったがもちろん悪い気はしない。

 マスヲは泊まらないけどいい?、と言っても泊まると言ってきかなかった。

 仕方がないので妻に電話をして娘の意思を伝えるが、何となく予想はしていたが答えは帰ってこなかった。そして電話を娘に渡した。彼女はすぐに察して自分からも母親に必死に頼んでいた。

 するとそのときだった。娘が突然泣き出したのだった。妻が言いたいことだけ言って電話を切ってしまったようだ。

 

 娘はうつ伏して背中を見せながら声を出して泣いている。そんな娘に対してマスヲは背中を優しくさすり続けた。

 そんなことしたかできなかったのが切ないし、父親として情けなかった。

 どれくらい泣き続けたのかわからなかったが泣き疲れて顔を上げたタイミングで、母親が彼女に優しく言ってくれた。

 泊まるにしても帰るにしてもシャワーは浴びないとね、と。

 すると母親に促されるようにして娘は母親と一緒に浴室に向かっていった。

 その間に弟と雑談しながら、タクシーの呼ぶ時間を決めてスマフォのアプリで予約した。

 弟はかなり酔っていたせいもあってか、タクシー料金のことを気にしていたようだ。公共交通機関を使って娘を送っていくことを提案してきた。

 マスヲは時間も遅いのでタクシーと公共交通機関では大回りしなければならなし、複数の乗換が発生するために時間がかなりかかることと、小学性の娘がパジャマで帰ることを強調してその提案を断った。

 彼がもし小学性の娘の父親になったとしたら、パジャマ姿で公共交通機関に乗せるかを改めて聞いてみたい。

 

 娘が浴室から出てきた。予約した時間に充分間に合いそうだった。自分で着替えた服や荷物をまとめる姿を見ていると、父親らしいことはしてやれていないが当たり前の様に成長している姿が垣間見えて嬉しくなってくる。

 予約しているので少し早めに来てもよさそうなのに、時間になってもタクシーは来なかった。

 心配になってタクシー会社に電話するとこちらの予約時間が間違っていたようだった。21時40分を22時40分に入力を間違えていたようだ。

 お酒や妻の態度、娘の泣いている姿などで動揺したこともあるが、それでも間違えた自分に1番の非がある。

 すぐに娘に謝ってタクシーの手配にとりかかったがなかなか手間取った。

 次のタクシーが実家に到着したのは、22時近かったと思う。

 

 タクシーに乗ると実家の大体の方面を伝える。娘に妻の実家の住所を聞くと正確に覚えていて、運転手がそれをナビに登録してくれた。

 そのルートがマスヲや妻の車のナビにも出ないルートなので、新鮮だった。

 走りはじめてしばらくは娘と何気ない話をしていたが、話題が途切れたタイミングで運転手に目的地までの料金の概算を聞いた。5000円くらいかと。そうしたら、彼もそれくらいだと思うと答えてくれた。

 その後はしばらく娘と通る道に関連した思い出話をしていた。だが、夜遅くなっていたせいもあるだろう。実家の直前でマスヲの手を握りながら彼女は寝てしまった。

 妻の実家の近くにはある中学校があるが、そのあたりまで来るとタクシー料金が運転手とマスヲのほぼ読み通りの金額になっていた。

 運転手にこういうふうにお互いにお金の感覚があう人と仕事をすると上手くいくかもしれませんね、と言ってお互いに笑いあった。

 マスヲがビジネス上のバートナーに模索されるうな言葉を頂くのはたまにはあるが、自分からビジネスパートナーを模索するような言葉を口にするのは今までには記憶がなかった。彼にはそんなことを感じさせる何かがあったのだろう。

 

 タクシーが妻の実家の前につくやいなや、妻はマスヲはおろか運転手にさえ何も言わずに運転手側の後部座席を開けて娘を抱きかかえた。

 タクシーの配車時間を自分が間違えたことを告げて謝ったが、それが聞こえているのかも分からないほどに手早く娘を連れ去って行った。彼女と目が合った記憶もない。

 マスヲに対しては当然不満があったことは理解できる。ただ、運転手にだけはひとことあるべきだったと思う。

 それとも彼女は昨夜だけ忘れてしまっていたのだろうか。ありがとう、という言葉を。

 マスヲは呆然としながらも、運転手に料金を支払って車を降りた。

 期待してはいなかったが妻も両親も誰も表には現れず、ひとりだけ住宅地の裏路地に取り残されてしまったのだ。

 スマフォを見ると、タクシーが到着した数分前に妻からメールの着信があった。

 まだですか、メールを確認するとその一言だけだった。

 その文面を暗い路地裏でしばらく見ていた。

 

 スマフォズボンのポケットにしまってから、地下鉄の駅に向かう市バスのバス停の方にあてずっぽうに歩きはじめた。

 しばらく歩くと、乗っていたタクシーが止まっていたのでマスヲが向かいたいバス停を尋ねたら道を教えてくれたので、その方向に向かって歩き続けた。

 すると先ほどのタクシーが横付けしてくれて、運転手が料金は要らないからと言って乗車を促してくれたのだ。

 本当にありがたかった。たぶん、歩くことではなくて数分でも、独りでないことが気持ち的に嬉しかったんだと思い返している。

 バス停の手前で降ろしてもらったときにも心からお礼が言えていたと思う。ありがとう、と。

 

 バス亭まで来ると最寄りの地下鉄までのバス停の数が思ったよりも少ないことがわかったので、このままバスを待つか地下鉄の駅まで歩くかを考えていた。

 するとマスヲと同世代くらいの婦人が2人通りかかった。おそらく地元の人間でマスヲよりは土地勘がありそうだった。ひとりは自転車を手で引いて、ひとりは歩いていた。

 時間は23時過ぎだったので話しかけるのに少し躊躇したが、思い切って話しかけた。地下鉄の駅まで歩くのか、このままバスを待ったほうが効率的かを。

 すると二人とも気持ち良くお互いに相談しながら、歩いても15分ほどだが次のバスまでの待ち時間を考えるとこのまま待った方がいいのではないかと答えてくれた。

 お礼を言うと2人はまたお互いに話しながら通り過ぎていった。

 

 しばらくするとバスが見えてきて、バス停に停車した。バス停にはマスヲの他には誰もいないので乗車客はいないのだが、バスの車内にも誰もいなかった。

 結局終着の地下鉄駅のバス亭まで誰も乗ってこなかったのでマスヲの貸し切りだった。

 それからはたまには利用している地下鉄と市バスの乗り継ぎで自宅近くのバス停まで向かうつもりだった。

 地下鉄の駅校内や電車内も、乗り継ぎのバスターミナルやバス車内も23時を過ぎているのにわりと混雑していた。

 特に乗り継ぎのバスターミナルは終バスのこともあってマスヲが並んでいる最中も列が少しずつ伸びていった。

 列の最初の方で数人の若い女性のグループが居た。20歳くらいだろうか。ひとりの女性は自転車を引いており、列からはみ出していた。

 乗車するバスが停車すると、先ほどの若い女性のグループのうち何人かは見送りだった。自転車の彼女ももちろん見送りだった。

 バスが発車するまで彼女たちは見送っていた。

 

 自宅近くのバス亭ではマスヲ以外に数人が降車した。数時間前実家近くを歩いたときよりは少し涼しく感じた。

 誰もいない自宅に着いた。簡単にシャワーを浴びてベッドに入ったら思ったよりもすぐに眠ることができた。

 しかも翌日の目覚めもよくて眠りの質も高かったと感じている。

 子供の泣いた背中や妻の態度などを気になってなかなか眠れないかと思っていたので、起きたときから少しびっくりしている。

 

 今日は日曜日のために恒例になっている実家で夕食を取ることになっている日だ。

 実家を訪れるとリビングに昨日娘が選んだ生花が花瓶に飾ってあった。

 会食時に昨日、気を使わせたことのお詫びの気持ちを一言母親と弟に伝えたが、2人ともそれほど気にしていないようにふるまってくれた。

 帰り際に母親が思い出したように妻から今日メールが届いたことを話し出したので、文面を聞いたら次のような文面だったそうだ。

『昨日はありがとうございました。』

 

 このblogを書きだしてからは、自分が少しずつではあるが客観性と精神的な強さが高まっていると思っている。

 マスヲを当たり前のように支えてくれている人たちのお陰です、ありがとう。

 そして黙って読み続けてくれる読者、気が向いた時に読んでくれる読者、blogに対する意見や感想の言葉を贈ってくれる読者にも、ありがとう。

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