今の現場におたふく風邪なのに出勤している女性がいる。現場のプロパー社員だ。職場の非同期通信ツールで彼女がそう呟いていたのだ。
マスヲはおたふく風邪には罹患したことが無いので、気になって仕方がない。
おたふく風邪に罹患していると思われる人物は、マスヲが今参加しているプロジェクトではキーパーソンの1人であることは間違いない。彼女が他者への2次感染防止のために出勤を控えればプロジェクトの進捗にかなりの影響があることは確かだ。
彼女が休みを取るとプロジェクトが遅れて納期までに仕事が間に合わなくなる可能性も少なくないだろう。その場合は会社にある程度損害があるかもしれない。
だが、おたふく風邪は感染力が強い病気のひとつで、学生であれば罹患してから平均5日は通学を控えることが法律で決められている。
また、大人が感染した場合は子供よりも症状が酷くなるのが一般的だ。しかも、成人男性が完成した場合は20%から30%の割合で合併症として睾丸炎になるリスクがあり、悪化すると生殖機能にまで影響する。
過去には感染による当事者同士の民事訴訟に発展したケースもある。
マスヲが彼女のせいで罹患したら、症状のレベルにもよるが生殖機能を奪われるようなことにでもなったら法律を盾に彼女と相手先の会社と争うことは必至だろう。
別件でマスヲは過去に勤めた法人と民事訴訟で争ったことがあるので、裁判が決して大袈裟ではないことだと捉えているからだ
今の現場には若い男性社員も多い。マスヲは1人の子供を残しているが、彼女のせいで彼らからそのチャンスを奪ってしまう可能性もゼロではないはずだ。
彼女はおたふく風邪が成人男性にかかった場合のリスクを知らないのだろうか。
彼女に知識が欠けているならば、何故まわりのプロパー社員が何か言ってあげないのだろうか。最低限の人間関係が社内で築けていないのだろうか。
また、相手先の会社の衛生管理はどうなっているのだろうか。それが一番問題だと考えているので、マスヲは自社へ連絡して相談している。
仕事第一主義な会社やそのような会社に準じて働く人間が自分の健康や人生を取り返しのつかないことにするのはマスヲには関係ない。
ただ、そのような人たちが別の思想を持った人たちに迷惑をかけるのだけは許されないことだと、マスヲは思う。