淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

野蛮人のように

 今の現場のオフィスビルは表通りから近いせいか選挙カーからの呼びかけが聞こえてくる。選挙戦も佳境に入ったせいか、選挙カーが通り過ぎるのも増えてきたように感じるし、ウグイス嬢たちの呼びかけも熱を帯びてきているようだ。それでも、自分は窓側の席ではないせいかそれほど気にはならない。

 だが、あの男は違った。串勝男は。選挙カーの街宣が気になって集中力が切れたようだった。
「俺って野蛮人だからさぁ」舌打ちをして、唐突に語りだした。
 そんなことは言われなくても少し付き合っていれば彼がワイルドなのはわかる。
「日本の領空に入って来るようなやつらはさぁ、打ち落とせばいいんだよ」と彼は続けた。
 あまりにも唐突なせいもあったかもしれないが、周りの人間は文明人なせいだろう。誰も何も言えなかった。ただ、何もなかったように周りは仕事を続けていた。

 マスヲは思った。こういうことを言う人間に限って身内や身の回りの人間が少しでも危機にさらされると豹変するだろう。
 ちなみに彼は結婚していて子供もいるようだ。もし、自分の子供が乗っている飛行機が打ち落とされるようなことがあったらどうなろうのだろうか。
 また、彼のようにハードな男はもちろん選挙にもいかないだろう。そして、政治によって何か不都合なことが起きたら突然怒りだすが、詩的な言葉を呟くかのどちらかだろう。

 彼と出会った当初は今よりもっとワイルドだった気がする。自分にも何かといらぬおせっかいの言葉をかけてきたし、串カツにもソースをかけずに食べていた。
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 ところがいつの間にかソースを串カツにかけるようになったかと思えば、ポエジーな台詞を吐いたのも今では懐かしい。
 今日の彼の間食はコンビニのおにぎりだった。パリッとした海苔の音を響かせて食べてはいたが、彼にはそんなソフトな食べ物は似合わない。

 食後にはスマフォを弄りだしてくつろいでいたが、マスヲがお手洗いに行くために席を立つとスマフォから手を離した。
 女性部長をはじめプロパー社員からはマスヲが座っていれば彼は死角になって何をやっていてもわかり難い。そんなことまで計算していたのだろうか。もし、そうだとしたら何が彼をそんなに神経質にさせてしまったのだろうか。
 先日の女性部長のムチが癖にならずにただ痛かっただけなのだろうか。
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 彼には自分で言うように、野蛮人のように生き続けてほしい。