淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

ダンスパーティー

 生花の業界で仕事をしていたことがある。そのころに知りあった友人がフラワーショップを営んでいることもあって、毎年母の日には花束かフラワーアレンジメントを贈ってきた。
 昨日、特別な予定もない土曜日だったので自宅でのんびりしていると、前触れもなく母親が訪ねてきた。母の要件が何なのかもわからなかったが、突然話を切り出してきた。今年は花束はいらないこと。理由は今の時期、切り花は持ちが悪いから、と。
 母は言葉を続けた。代わりに鉢植えの花をプレゼントして欲しいと。具体的な品種まで調べて指定してきたのだ。その品種とは、『ダンスパーティー』。母によるとアジサイの一種らしい。

 実は、昨日の朝一番に電話で花束を依頼済だった。花の業界で働いていた経験上、母の日の前のこの時期、フラワーショップが忙しいのはわかりきっているので、前もってお願いしていたのだ。
 それにしても、母の行動には少々面食らった。確かに、毎年花をプレゼントしているのが恒例になっているとはいえ、プレゼントの内容を指定してきたことに。
 また、その花について自分が全く知らなかったことも、花についての関心が薄くなっており、新しい情報を吸収していないことも、改めて思い知らされた。

 申し訳ない気持ちで友人に電話した。まずは、まだ花束を作りはじめていないかを確認するために。すると、まだ手を付けていないらしかった。
 次に、ダンスパーティーのことを話すと友人は当たり前のように知っていた。在庫の確認をしたら大丈夫のようだった。
 こちらが迷惑をかけている気がしたので、二鉢の取り置きとラッピングを依頼した。

 自宅から友人のお店までは10㎞ちょっと。混んでいなければそれほど時間はかからないが、週末の日中だったので思ったよりも時間がかかった。
 友人が切り盛りしている花屋さんは、名古屋市の郊外にある。駅と病院の近くにあることもあって、昨日も店内は賑やかだった。
 店の奥にいる経営者である友人に声をかけると取り置きしてくれていた、鉢植えを見せてくれた。『ダンスパーティー』を初めて見た瞬間だった。
 事前に何も調べていなかったので、その花姿に驚いた。典型的なアジサイを連想していたが、全く違ったからだ。見た目からガクアジサイの一種だということは分かったが、見た目からそれほどの人気品種だと自分は思えなかった。

 料金を支払うときにお釣りは要らないね、とオヤジギャグを友人からプレゼントされた。彼の見た目は自分よりずっと若いが、彼の言葉が互いの間に流れた時間を感じさせる。若々しく見えるフラワーショップのオーナーも着実にオッサンの階段を上がっていることも。

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買い求めた、ダンスパーティー。
 助手席に乗せた鉢植えを気遣いながら、そのまま実家に向かった。週末ドライバーが溢れた郊外の道を運転して。
 母親は在宅していたので、一日早い母の日のプレゼントを手渡した。彼女の我儘を聞き入れたせいか、多少は嬉しそうにしていた気がした。

 母の日である今日、実感で弟と3人で夕食を食べた。母によるリクエストで宅配ピザを。
 食事中にテレビを見ようとすると、リビングの脇にまだ見慣れていない鉢植えの花がそっと置かれていた。