淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

10年に一度、40年に一度

 一晩考えたが、昨日の日中に起きたことを書き残しておくことに決めた。文章は常に冷静かつ客観的に書かなくてはならないと、断じることはできないと思えたからだ。自分にさえ、正直であれば。

 昨日は土曜日。通常であれば自分にとって完全はオフの日である。会社員としてのシステムエンジニアの仕事も、副業であるラーメン屋のアルバイトも普段は休みだ。副業先には週一回、毎日曜日に働くことになっているからだ。

 だが、今週末は事情がいつもと異なった。まず、今日の日曜日は自分が参加している同人誌の例会の日。同人が集まり、掲載された作品について議論しあう、一年に8回しかない大事な日だ。
 そのために、今日は休みをもらっていた。通常であれば、同人誌の例会のある週末は完全にオフになる。

 だが、今週末は最初から事情が違った。副業先のラーメン屋は商売を初めて今年で40年。それを記念して、一昨日の金曜日から本日の日曜日までイベントを行うことになったのだ。
 そういった事情から、自分が恩義を感じている社員に土曜日の出勤を依頼されたので、事情を鑑みて了承した。前日が会社の懇親会だったが、11時出勤のシフトだったこともあって。
 だが、状況が突然変わった。21日の火曜日に店から連絡があり、9時出勤にして欲しいと言われたのだ。理由は専門学生のあるバイトが突然、休むと言い出したからだ。昨日、彼が休んだ理由を聞いたが理由は聞いていないようだ。

 会社関係の避けられない金曜日の呑み会だったので、開き直って深酒してやろうと目論んでいたが、当日はある程度自省して飲酒しなければならなくなったのが、自分としては面白くなかった。世の中自分の思い通りにならないが常とはいえ。

 昨日、副業先には予定通り9時に出勤した。金曜日は一次会で解散だったし、その後も1人で寄り道もしなかったので、体調もそれなりだった。
 仲の良い社員とパートの女性が前日のイベントのことを話題にしながら、開店の準備作業をしていた。

 11時の開店前の休憩時間にあることが話題になった。皆で賄いのラーメンライスを食べながら、ある人物が何時に出勤するかについてだ。
 その人物とは店の責任者でもあり、店のアイドルでもあるマコちゃんのことだ。通常の週末の営業日であれば、充分に対応できる人員はいたが、イベントに対応するのであれば、アルバイトが1人休んだために、人手が欲しいのは否めない。
 だが、それでも皆マコちゃんと働くことだけは避けたかったのが本音だったと思う。
 少なくとも、その場にいた社員は暇だったら、奴にはギョーザでも握っていてもらうと口にしていたくらいだから。

 だが、皆が望まない方向に物事は進んで行く。開店前に店の責任者は現れたのだ。自分は彼の姿を見るだけでげんなりしていた。
 出勤してすぐに昨日の売上について、テンション高く話し出した。中でも回数券の売上については他の店との売上比較を強調して熱く話していた。
 彼の分析によると、来店客が増えている一番の要因が地元の新聞紙面への全面広告だと考えているらしい。彼にとってはその新聞が大事なようで、その新聞を捜し出した。

 開店の準備作業の際に、前日の新聞は厨房内の汚れ防止のために、あらゆるところに敷くことになっている。昨日は自分がその作業を行っていた。
 自分がせっかく敷いた新聞を一か所ずつめくりだし、散らかし始めた。自分にとっては面白くない。自分の作業した結果を台無しにされたのだから。そんなに、その新聞が大事であれば、前日の閉店時によけておけば済むことだったのに。頭が悪いとしか言いようがない。

 自分の作業した場所を散らかした結果、マコちゃんは何とか新聞を見つけだした。そして、皆にその紙面を見せびらかし始めた。この広告を打つのにどれくらいの予算が必要であるかの推論を口にしながら。
 自分にとってそんなことはどうでもよかった。そんな広告の予算にお金をつぎ込むのであれば、自分のいや、他の従業員の時給を少しでも上げて欲しいと今でも思っている。

 少なくとも自分は10年間で時給が10円しか上がっていない。逆に10年間、退職を申し渡されてもいない。
 であれば、店や会社にとって必要な人間であると考えても自惚れではないはずだ。
 そんなことを考えながら、店の責任者への軽蔑をますます強めた。普段より従業員に負担がかかる場合、仕事場の責任者であったなら、気を使うのが普通だ。
 もう一人の社員は、お酒が好きな従業員全員に身銭をきって缶ビール数本を差し入れしていたほどだ。自分にとってそれくらいの配慮は当然だと思う。お互いに気分よく働くための心遣いは嬉しかった。
 ここ数年自分が貴重な休みを割いてまでアルバイトを続けているのは、そんな配慮をしてくれる彼と一緒の時間を過ごしたいのが理由のひとつだ。

 ちなみに、店の責任者であるマコちゃんから、今までプレゼントされたものはひとつだけ。明らかに自分に非があったと考えた翌週の日曜日に、あるものをプレゼントされた。トクホのコーラ1本だった。ペプシでもコカ・コーラでもないところにはびっくりした。
 自分が夏の仕事中に飲んでいるのはキリンのメッツだったからだ。彼にそんな観察力があったなんて驚きを感じえなかった。
 だが、まわりの彼への評価は違った。50歳を過ぎた大人が自分の非を詫びるために、相手に贈呈するものが500mlのコーラ1本であることが、皆から馬鹿にされることになったのだ。

 話を昨日のことに戻す。店の営業が始まった。予想通り、開店前に店の入口には多数のお客が列をなして待っていた。
 パートの女性が扉を開けると一気に店の中は賑やかになった。お店にはカウンターしかない。
 こういった混雑した時はある方向から客に詰めてもらって座ってもらう方が、お店側にとってはお客に対応しやすいし、トラブルも起きにくいのでお客にも迷惑をかけることが減ったはずだ。
 案の定、最初に簡単なオーダーミスがあって開店早々に躓いた。

 店の責任者がわざわざ出勤してくるのであれば、ある程度の心づもりを来てほしかった。ただ、来るだけでは子供の使いと一緒だ。そんな人間が店で一番の給料を取っている。ボルボ特別仕様車を乗り回せるほどの。
 イベント中は回数券が文字通り飛ぶように売れた。普段は600円のラーメンが11杯食べられるものが6000円。イベント中は5500円で販売されることになっていた。
 自分はそれほどお得感を感じなかったが、びっくりするほど売れていく。1人で2冊3冊と買っていく客も珍しくなかったが、更に驚いたのがそのように買っていく客のほとんどが、馴染みではない人が多かったからだ。ラーメン1杯に50円も節約しなければならないほど、彼らの暮らしぶりは厳しいのだろうか。
 だったら、その分自炊したほうが節約できてかつ、身体にもいいはずなのに。

 店のスタッフたちが回数券の販売に振り回されているときに事件は起こった。回数券を3冊購入希望のお客が居たので、自分はその対応をマコちゃんに依頼した。お客から受け取った20500円を彼の目につきやすいある場所に置いて、その場所についても説明しておいた。
 すると、彼はお釣りを客に持っていかずに二度手間になったことを自分に怒鳴りながら当たり散らし始めた。
 自分は彼にお客から受け取ったお金のことを説明したはずだと、言い返したが結局は水掛け論になった。

 彼も自分も気持ちは収まらない。そんな気分のまま自分が居ても厨房内の雰囲気が悪くなるだけだ。最悪、暴力を伴うような喧嘩に発展する可能性だって、その時の状況であれば否定できない。
 自分は一言残してタイムカードを押して帰宅した。帰ります、の言葉を残して。

 その後の店の事は知らない。昨日のうちはそのことが気になってモヤモヤしていた。マコちゃんはともかく、お客や他の店の従業員には迷惑をかけたのだから。
 今朝の営業が始まる前に謝りに行くことも考えたが、辞めた。もう少し時間を置いてもっと冷静になってからの方が良いと考えたからだ。
 だが、今でもはっきり言えることがある。自分が正しいとは思っていない。だが、店の責任者である彼の当日の対応に、全く非がなかったとはどうしても考えられない。