淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

やっぱり、元気ですか?

 昨日、想定したことが起きた。ある女性からLINEでメッセージが届いたのだ。
 文面は次のようなものだった。『おはよう ございます 元気ですか? 😊😊😊』。
 自分はスタンプのみ返信した。すると数時間後にまた、メッセージが送信されてきた。『元気ですか?』、と。

 このメッセージが来ることになった経緯を書き綴りたい。
 先月中旬に、以前勤めていた会社の同僚から電話があった。近いうちに自分とお酒を飲みたいと。了承したが、来月からの現場の予定が未定なので、近々にしてくれないかと話した。
 すると、相手が今は名古屋で仕事をしていないこと、7月からは名古屋での仕事になることを説明された。

 仕方がないので、相手の都合に合わせて呑む予定を今月にし、彼の現場が名古屋市内の高岳に決まったことを聞いたので、そこから近い東新町焼鳥屋を自分が予約した
 そして、彼と久しぶりに夜遊びしたのは今週の火曜日だった。

 当日、自分が先に焼鳥屋の店内で待っていると、彼が表れた。少し太ってはいたが、顔色も良く元気そうだった。
 彼は自分よりも後に会社を辞めたのだが、自己退職というより辞職に追い込まれていた。心臓の調子が悪く、無理ができない状態となったので、会社から煙たがられたのだ。
 当時、彼の顔色は見るからに悪く、一発で病人とわかるほどだった。

 だが、先日は自分がビールを注文すると、彼もあわせてくれた。その後も自分よりも一回りほどペースは遅かったが、それなりにお酒を楽しんでいた。
 彼に体調のことを聞くと、かなり調子がよくなったことを教えてくれた。ストレスを減らせたことと、服薬し続けた効果なのだろう。

 一緒に勤めていた会社やお互いに知っている同僚の近況などを一通り話し終わると、彼が河岸を変えることを提案した。どこに行きたいかかを尋ねると、彼はフィリピンバーに行きたいと答えた。さも当然と言った表情で。
 確かにここは東新町。名古屋で、いや全国でも指折りのフィリピンバーが軒を連ねる聖地だから、もっともな提案だった。

 だが、自分は気が乗らなかった。フィリピンバーで働く女性たちにねだられて連絡先を教えると、面白味もなく鬱陶しいメールやメッセージがメールなどで送られてくるからだ。
 そのことは口にしなかったが、自分が躊躇している様子が伝わったようだ。相手が気遣ってくれた。嫌ならいいよ、と。

 彼は自分よりも、8歳年長。年長者に誘われて遊びを躊躇しているようでは、遊び人としての矜持に関わる。自分は少し考えて、あることを提案した。自分がよく知っている紹介所が営業していればフィリピンバーに、営業していなければ他の業態のお店で飲むことを。

 雨上がりの繁華街の裏路地を奥へと進んでいく。20時を過ぎたばかりの平日のせいか、人通りはともかく客引きもまばらだった。
 考えたら、東新町の裏路地を歩くのも久しぶりのような気がした。繁華街の中にある公園の角を折れると、見慣れた紹介所から灯りが漏れていた。

 紹介所に入ると主が居た。いつもと変わらず感じの良い笑顔を浮かべていたが、以前よりも元気そうだった。
 彼も心臓を患っており、体調が良くないと何度か聞いたことがあったからだ。体調のことを彼にも聞くと、お陰様で一言返してくれた。顔色とその言葉で彼の体調のことがある程度察しがついた。

 ちなみに、この紹介所の主のことを自分とある知人はこう呼んでいる。東新町の帝王、と。
 理由は彼が心からフィリピンバーを愛していること。彼がコーディネートしてくれるお店は、外れが少ないこと。また、本音でいろいろな情報を提供してくれるからだ。
 帝王の彼女は、あるフィリピンバーのスタッフであることも以前に聞いていた。
 自分がこの街で夜遊びすることの中には、彼との会話を楽しむことが大きなウエイトを占めている。

 帝王が2人に今夜の遊び方の希望をヒアリングしてきた。相方の要望を優先して1軒目の店を決めてもらった。いつものように、帝王は事前に店の状態を電話で確認してくれた。
 紹介所を出て帝王の後に自分たちはついていった。もちろん、2人とも遊びに行ったことがない店だ。
 その店は一見さんの場合、最初に接客する女性を直接お客が選ぶことができるシステムだった。前にも同じようなお店があった。最近、東新町では流行っているのだろうか。
 照明が落としてはあるが、何十人もの女性が自分たちに向かって立ってくれるのはちょっとした光景だ。
 相方に敬意を表して先に女性を選んでもらったが、少し驚いた。自分が一目見て心に決めた女性を彼が選んだからだ。
 仕方がないので、自分は残りの女性を全員見てから決めたが、どうしても彼が決めた女性が気になった。

 お互いに指名した女性を伴って店の奥にあるボックス席に座った。他のボックス席は全て空いていた。他の客はまだ居なかった。
 入店してから、相方のテンションは高かった。しかも、かなりくつろいでいるようにも見えた。
 彼が女性スタッフと話している内容が聞こえてきて、あることを知った。彼がお酒を呑むのが3年ぶりであること。そして、その相手として自分を選んでくれたことを。まったく悪い気がしなかった。
 3年ぶりのお酒は、どんな味がするのだろうか。自分はその味をまだ知らない。

 店のボーイが指名を促してきても、彼が初めてだからいろいろな女性と話してみたいと、外連味もなく自然に返答してくれた。
 結局、ワンセットだけで退店した。タックス、サービス料込みで3,000円だけ支払って、帝王のところに戻った。

 帝王は他の男性グループに接客していた。そのグループは20代後半くらいの3人組。帝王のコーディネートが決まったので、彼らを店まで送り届けるために出ていった。
 夜はまだ長い。帝王が戻ってくる間、2人で何を話していたかは、あまり覚えていない。
 たいして意味のないことばかりだった気がする。それでも、2人の間にあった雰囲気が悪くなかったと今でも思い返すことができる。

 帝王が戻ってきたので、今度は自分の要望を伝えた。時間が遅くなってきたせいか、2店ほど勧めてくれた店に帝王が電話をすると、相手先の都合がつかなかった。
 三度目の正直ではないけれど、3店舗目はなんとか入店できるとのことだったので、了承して紹介所を出た。
 道中で最初は女性スタッフが同じテーブルに座らないが、その間の時間はカウントされないことまで調整してくれたことを帝王は話してくれた。

 入店するとボーイが相方にはウイスキーの水割り、自分には焼酎の緑茶割を作ってくれた。
 しばらくすると、スタイルの良い女性が自分たちの机についた。顔立ちから、日本人だとは思えなかったが話した日本語はかなり流暢だった。
 自分がチーママであること、訪日してから20年ほどが過ぎていることを話してくれた。
 それから、ボーイがコースターを使わずに飲み物を提供したことを詫びながら、グラスの下に敷き直してくれた。
 40歳にしては奇麗なチーママ。彼女の訪日してからの20年は長かったのだろうか。それともあっという間だったのだろうか。

 しばらくすると、チーママと入れ替わった2人の女性が自分たちの席に着いた。2人とも、先ほどの店に居たスタッフよりも若い。その分、少し日本語が拙かったが。
 その店でも相方が取り仕切ってくれ、指名を促してくるボーイを上手くかわしてくれた。
 この店に入店してから、1人のある女性が気になっていた。フィリピンバーではなかなか巡り会えない、顔立ち。スタイルはフィリピン人らしく素晴らしいのだが、顔は日本人っぽくて薄いのだ。目は大きくてはっきりとしているのだが。

 その女性が3人目として自分の横についた。正直、嬉しかった。隣でそばによって見ても可愛いらしい。幾分、お酒のせいで理性的でなくなっていたかもしれない。気を許してしまい、彼女とLINEのIDを交換していた。
 気分よく、酔ったままに退店した。先ほどと同じように1人3,000円だけ支払って。
 店を出ると雨が降り出していた。

 帝王のところに行ってお礼だけ言って帰るのが、いつもの自分の流儀。
 小雨の中、案内所に向かう途中で彼に出くわした。お礼を言うと帝王は、自分の使っていたビニル傘を自分たちに譲ってくれた。こういう心遣いが、自分に彼を帝王と言わせるところなのだろう。
 相方と帝王のお陰で楽しい一夜を過ごすことが出来た。

 2日間、自分が可愛いと思った女性から連絡はなかった。こちらからも何も連絡はしなかった。
 時々、彼女のタイムラインに載せられている写真を楽しんではいたが。どの写真も魅力的だった。
 だが、昨日送られてきたメッセージを見て、少し覚めた。彼女の送ってくれた言葉も、他のフィリピンバーで働く女性たちの最初の挨拶と一緒だったから。

 元気ですか、と彼女たちが尋ねてくる理由が少しはわかる。英語でいう、『Are you fine?』からきていることを推測できるからだ。
 だが、せっかくならば女性とは細やかな言葉遊びをしたいと、考えている自分。そんなことを日本語に慣れていない、女性に求めても仕方がないとは思ってはいるのだが、男は何時だって我儘だ。