淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

中学生になったら娘にも読んでもらいたい【鴻上尚史の『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』を読んで】

 鴻上尚史著、『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』を読了した。正確には読了していた。
 読んだ感想を文章に書き残すつもりではいたが、先延ばしにしていた。この本で取り上げられた佐々木友次氏が話したこと、著者である鴻上尚史氏が文章で伝えたかったことに対して誤解を招くようなことがあってはいけないと、考えていたからだ。

 梅雨が明けて、平成最後の夏がはじまった。来年の夏には新しい元号になっているので、昭和という時代がより霞んでしまっているだろう。
 自分は物心をついたときから、祖父母と同居していた。祖父はあまり戦争のことを語らなかったが、祖母はよく戦争中のことを話してくれた。亡くなった父親も。
 戦争中、淡白家は街中の下町に住んでいたのだが、家が空襲で焼かれたために、今実家がある郊外に転居して来たことを2人の話から知った。
 転居してきた時にはまだ屋根がなかったために、寝る時に星が見えたと、父はよく話していた。そんな話をするときの父は、酔っているのが普通だったので、どこまで本当かは怪しいが。

 戦争体験者と一緒に生活し、話を聞かされていた自分でも、やはり昭和の戦争が少しずつ風化してしまっている。
 何回か読み直してから筆を取ることも考えたが、少しでも多くの人に、早くこの本を読んでもらいたい、できれば自分よりも歳下の人たちにと思って、感想を書くことにした。

 この本は戦争もののノンフィクション。時代背景は太平洋戦争のころだ。
 前半は陸軍の特攻隊であった佐々木友次氏が戦争中の体験を著者の鴻上尚史に語ったことを文章化している。
 著者のファンである自分。彼の戯曲や小説などのフィクションやノンフィクションでも雑誌に連載されているライトなエッセイは良く手に取っていたが、戦争のような重いテーマを扱ったものを読むのは初めて。
 それでも、彼の文章力によって佐々木友次氏の戦争体験が鮮やかに表現されている。著者が優れた作家であることを再確認させられた。

 後半は2015年に著者が佐々木友次氏インタビューしたことに1章が割かれている。
 その後の1章には著者から見た特攻隊や、日本の大衆が陥ってしまった思考などについても、日露戦争のころまでさかのぼって書いている。
 日露戦争の記事の書き方によって、新聞の販売部数が大きく影響した事実については、怖さも覚えた。

 もし、夏休みに読書感想文などのために、何か本を読まなくてはいけない中学生や高校生がいたならば、この本を勧めたい。同じ戦争を知らないオッサンとして、情報を共有したいから。

 あと数年で自分の娘も中学生になる。きっと自分が考えているよりも、あっという間だろう。
 思春期の彼女がまだ自分と会話してくれるならば、夏の一冊として彼女にもこの本のことを話したいと考えている。たとえ、鬱陶しがられても。