淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

村上主義者

 最近、あることがマイブーム。村上春樹のノンフィクションを読むことが。
 村上春樹はどちらかというと、遅筆な作家に入ると思うが、作家になってからの月日が長くなったせいで、ノンフィクションだけでも、著作は結構増えてきた。

 エッセイだけでなく、対談集やインタビュー集まで多岐に渡るが、今自分が夢中になっているのは、上記のどのジャンルにも入いらない。
 彼は時折、読者と期間限定でホームページを設け、そのページ上で読者からのメールによる質問を受け付けて、返答することを試みている。
 自分が今、読みかけているのはその中でも一番直近だったものを、本にまとめたものだ。
 タイトルは『村上さんのところ』。文庫本で買って、通勤時や平日のお昼休みに少しずつ読み進めて愉しんでいる。

 村上春樹は好きな作家ではあるが、小説でさえ全ての著作を読んでいるわけではない。ちょっと前までは、エセハルキストと自称していた。
 若いころは自分が村上春樹好きなことをわりと頻繁に口にしていたし、彼の著作を他人に勧めることも多かったが、まわりには受けが悪かった。自分のまわりは読書をする人間が多いのにも関わらず。
 日本の作家では今、一番ノーベル文学書に近い作家だというのに。未だにどうしてか、自分にはわからない。

 そのうち、他人には彼の著作を勧めるどころか自分が彼のファンであることもあまり公言しなくなった。
 ちょうど、ハルキストという言葉が広がり出したのと比例するように。
 まず、自分の妻が彼の作品が好きではなかった。妻の父親はかつて本屋を経営したこともあって、妻自身も本を読むのは嫌いではないほうだったのだが。

 考えてみたら、妻と自分は服装の好みから聞きたい音楽まで、一致することが多くないので、好きな作家や書籍の好みが違っていても仕方がないとは思うのだが。
 その洞察を続けると、そんなに趣味が合わないのにどうして結婚したのかという答えに辿り着きそうなので、あまり突き詰めるのは辞めることにしよう。

村上さんのところ』は結構、読み応えがある。HPが公開されていたときは、リアルタイムで彼の質問への回答を見ていた気がするが、今本で読み返すとどの回答も初めて目にしたきがする。自分の低い記憶力のせいで、楽しめていることを喜んでいいのかは、少しひっかかるところではあるが。

 読者との質問の中で、村上春樹はハルキストという言葉に良い印象を抱いていないことを公言している。それよりも、村上主義者という呼称を普及させたいようだ。冗談で、隠れキリシタンのようにというようなニュアンスのことも付け加えている。
 確かに今自分がまわりの人間関係に置かれている状況はそんな感じだ。好きな作家名を聞かれても、彼の名を出すことは少なくなったが、こっそり彼の著作は読み続けているからだ。
 ハルキストではなく、村上主義者として『村上さんのところ』の残りのページを、まずは愉しんでいきたい。