淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

渡月橋をドライブして仁和寺へ 【秋の二都旅行 その7】

 始発から乗車したバスは、見たことがある風景の中を走った。見たばかりの景色だった。先ほど、乗車したバス停の前も通り過ぎていく。
 そのバス停を通り過ぎてもしばらくは、新興住宅地の中をバスは進んだ。車内も車窓から見える景色にものどかさを感じながら。今、この地が京都であることを忘れてしまいそうになるくらい、どこにでもありそうな風景だった。

 バスは次第に走るスピードが落ちてきた。走行している道が混み合いはじめたからだろう。バスの中もいつのまにか、乗客が増えていた。
 30分ほどは乗車していたのではないか。次のバス停で降りることを友人が教えてくれた。名前さえも知らないバス停で2人は降りて歩くと、5分ほどで見覚えがあるコインパーキングに着いた。

 青い車に乗り込むと、友人はエンジンをかけた後に車の天井を開けた。前日は時折雨がぱらついたのと違って青空が広がっている。家から持ち歩いていた傘も、トランクに入れてもらった。
 コインパーキングを出るために、ゲートに向かう。ゲートに備え付けてある精算機を友人が操作をはじめた。駐車券を挿入して。
 だが、どういうわけか操作が上手くいかなかった。仕方がないので、電話をすることになった。トラブル時の場合の連絡先は目立つ場所に書かれていたが、電話でのやりとりで必用になった精算機の管理番号は、目立ちにくい場所に書かれていた。
 それなりに、広い駐車場だったのに出口は1カ所しかなかったが、後続車がいなかったのが幸いだった。

 自分が目的地としてリクエストしたのは、二条城。今まで一度も訪れたことがなかったからだ。
 友人はまず、嵐山方面に車を走らせた。嵐山は久しぶりだった。小学校の修学旅行以来なので、30年以上は経っている。
 初めは気持ち良く風を感じて走っていた車も、嵐山に近づくにつれて風に追い越されるようになっていき、渡月橋のあたりでは停まることが多くなった。停車していると初秋の日差しに暑さを感じた。
 渋滞のおかげで、渡月橋からの景色が楽しめたし写真も撮ることはできたが。

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渡月橋からの風景、渋滞していたお陰でこの写真が撮れた。
 橋を歩いて渡っている人は、あきらかに外国人とわかる人が目立つ。日本人から見たら、中年のオッサン2人がオープンカーでドライブしていたら微妙に思われるかもしれないが、肯定的な見方をしてくれる国の人たちもあるかもしれない、と今この文章を書きながら振り返っている。世界は広いし、民族によっても価値観やセンスは違っているはずだから。

 嵐山を下ってくると、偶然に仁和寺の前を通った。自分は訪れたことがないことをつぶやいていた。そのつぶやきを運転手は拾ってくれて、仁和寺の駐車場に車を入れてくれた。2人で仁和寺に立ち寄ることにした。

 駐車場から参道に入ると真正面に中門が見えた。石砂利の続く先に浮かんでいるように。
 途中、何度か紅葉の木の下を通ったので、下から真っ青な秋の空をバックに広がっている紅葉の枝を見上げると、先々の枝の葉っぱがほんのりと色が代わりはじめていた。すでに真緑ではなくなっている部分があった。

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仁和寺の中門を望んで
 稀代の随筆家ではないので、仁和寺についてはこれくらいのことしか書くことができないのが、切なくもある。
 このblogをどれくらい書き続ければ、もっと気の利いた面白味のあることを書くことが出来るようになるのだろうか。そんなに高見を目指している訳ではないが、ふと気になった。

 参拝を済ませて車に戻ってくる途中、友人にあることをお願いした。妙心寺にも足を伸ばしたいと。
 仁和寺の駐車場近辺で妙心寺への道案内の掲示を見つけてから、気になっていたのだ。彼は快く了承してくれた。
 我が家の宗派は臨済宗妙心寺派。自分や亡くなった父には似合わないが、禅宗なのだ。

 父が生前のころ、檀家になっているお寺の住職から、あることを誘われたことがある。妙心寺派の総本山である妙心寺にお参りする企画に。
 多少は興味があったが、結局参加することなく終わった。
 弟は父と2人だけの旅行をしたことがあったが、自分はついに2人きりの旅行はできなかった。
 もし、住職の誘いに乗っていたらと今でも考えてしまう。父親との思い出がいくつか、できていたはずだと。男同士2人だけの旅の思い出が。

 仁和寺から妙心寺は歩くと10分ほどの距離だったと思う。仁和寺周辺は人が目立ったが、妙心寺に向かうにつれて、観光客らしき人をあまり見かけなくなった。
 途中、コンビニを普通に見かけたし、コンビニも周辺になじんでいた。
 コンビニに友人が飲み物を買いに行ったので、その間まわりをぼんやりと見ていると、聞き慣れない警報器の音が聞こえてきた。音がする方向を眺めると、踏切が見えてレトロな車両が1両横切っていった。通称、嵐電と呼ばれている京福電気鉄道の電車だった。
randen.keifuku.co.jp
 友人がコンビニから戻って来たので、踏切を渡った。すぐに寺社らしき敷地の縁沿いの道になったのだが、なかなか境内へ入るための入口が見えてこない。
 後ほど法堂へ入った際に教えてもらったが、妙心寺の敷地は甲子園球場の8.5倍もあることを。
 往時はまだそのことを知らなかったが、帰りはそのことを納得しながら歩いた。
www.myoshinji.or.jp
 やっと入口に着いた。境内に入ると敷地内の簡単な絵図があったが、さっぱりわからない。入口の警備員に尋ねても、だ。

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妙心寺山内図
 自分が敷地内をどのように回って、どこでお参りしようか決めかねていると、女性の声が聞こえてきた。
 声の方を見やると、30歳前後の感じの良い女性が警備員に食い下がって、質問を続けていた。
 その会話に聞き耳を立てていたことで、妙心寺には本堂というものがないこと。一般的な寺で本堂と呼ばれるようなものが、ここでは法堂であることを。

 彼女のお陰で、法堂を目指すことにした。敷地内を歩いても、静謐さを感じなかった。禅宗の総本山なので、厳かな雰囲気に触れることができるのかと思ったのだが。宗派は違うが、永平寺のように。
 JUDY AND MARYの楽曲、『散歩道』が似合うような風景の中を歩いた。老夫婦がお参りするよりも、若いカップルが歩いている方がどちらかというと似合うような雰囲気だった。
 自分たちの脇を時折、車が通り過ぎた。あまりに広いために関係者の一部は車での侵入を許可されているようだが、自分としてはなんとなく腑に落ちなかった。

 法堂に着いた。拝観は20分毎に決まっていた。拝観料を支払って、時間を待った。用意されていたベンチに腰掛けながら。
 時間になると、自分と同じ時間に拝観する人数は20名ほどになっていた。
『おかげさま』と書かれたシャツを着た女性スタッフに付き従って、法堂に入った。

 スタッフは最初に妙心寺と法堂の概要を説明してくれた。そして、法堂でのハイライトになる雲龍図の解説も。雲龍図は法堂内の天井一面に描かれていて、一目だけでも見応えがあった。
 彼女の解説では、雲龍図は見る方向が変わると龍が上っているのか下っているのかと、表情が変わることに触れてくれたことを覚えている。
 実際に天井を見上げながら、法堂内を二周すると彼女の言ったことがよくわかった。
 法堂ないでは、国宝の梵鐘も見ることができたが、自分はあまり興味がもてなかった。鐘が傷んでいるということで、実際に突き鳴らすことができないこともあっただろう。

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雲龍図、妙心寺HPより。
 法堂を出ると浴室に向かった。通称、明智風呂と呼ばれているそうだ。明智光秀にちなんだエピソードがあるからだ。
 浴室は蒸し風呂の構造だったことくらいしか、印象に残っていない。浴室を出ると、妙心寺を後にした。

 時間は正午を過ぎていた。しっかりとした朝食を食べたせいか、それほどお腹は空いていないが、休憩がてら昼食を取ることにした。
 仁和寺の駐車場までの道中にこぢんまりとしたカフェのようなお店が目に入ったので入店すると、おから料理の店だった。いかにも京都らしい。2人とも、おからコロッケの定食を注文した。

 店内は自分たちの他に客は居なかった。秋の3連休の中日のお昼時だというのに。
 電話が鳴ったので、店員が電話の相手に何かを説明していた。どうやら、店の場所についての問い合わせのようだった。
 しばらくすると、落ち着いた雰囲気の女性が1人入店してきた。おそらく、先ほどの電話をかけてきたひとだろう。

 おから定食が友人と自分の前に運ばれてきた。ご飯は白米ではなく、五穀米のようなご飯だった。おかずは小ぶりなまん丸なコロッケに野菜を千切りにしたかき揚げも添えてあった。汁物は味噌汁だった。
 小腹が空いていた自分にはちょうどよい、ボリュームだったし、期待以上に美味しかった。
 観光地では、価格のわりに感心できない料理を提供されたことの方が多い気がするが、自分たちが食べた定食は良い意味で印象に残るだろう。
 機会があったら、自分なりにおからのコロッケを作ってみたいと思ったほどだ。

 この店の代金も友人が支払ってくれた。考えたらこの旅行中、自分が友人の分まで支払ったのは、芝居の料金とラーメン代くらい。友人の好意は有り難かったが、少し気が引けはじめてもいた。
 お腹も満たされたこともあって、少し足も軽くなった気がした。
 駐車場で車に乗り込んで、いよいよ二条城に向かった。青いオープンカーで京都市内の中心部を目指して。(つづく)