昨夜は送別会に参加した。むかし、仕事をしたことがある岐阜市の会社の送別会に。
途中、主賓への餞別を用意するために、名古屋駅の高島屋に立ち寄った。三省堂で本を買うためだ。自分が好きな作家の短編集を贈りたかったから。
その短編集は、村上春樹の『カンガルー日和』。収められている作品は短編というよりも、どちらかというとショートショートになるだろう。
外国人が慣れない日本語で小説を読むのには、短編よりもできるだけ短いショートショートの方が向いていると、考えたからだ。
ショートショートの名手なら村上春樹よりも有名な作家はいるが、海外でも著名かは疑問だったからだ。
ハルキストではなく村上主義者の自分にとって、その短編集の中には思い出深い作品がある。表題作の『カンガルー日和』ではなくて、『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』。
自分にちょっとした好意を抱いてくれていた女性と、この作品について話し合ったことが思い出になっている。もう20年ほども前のことだが。
三省堂の店内に設置してある、在庫が確認できる端末で『カンガルー日和』を探すと、文庫本の在庫はなかった。
仕方がないので、村上主義者として一番おすすめの短編集の在庫を確かめた。その短編集とは、『螢・納屋を焼く・その他の短編』。この作品を選んだ理由はふたつある。
ひとつは、表題にもなっている作品、『納屋を焼く』が韓国で映画化されて、来年に公開されることを知っていたこと。
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もうひとつの理由は、村上主義者の自分にとって一番好きな作品が収められているからだ。その作品とは、『めくらやなぎと眠る女』。
今まで何回、いや何十回読み直したかわからないほどだ。この短編に触発されて、自分はある小説を書いたくらいだ。
在庫が存在することがわかったので、在庫情報を印刷した。印刷されたものを見ると、店名が二つ書かれているのに気がついたので戸惑った。
店員が近くを通りがかったので、そのことを聞くと次のことを教えてくれた。
名古屋駅には三省堂が2店舗存在していること。自分が居るのが、新しく出来たゲートタワーモールの店であること。在庫は高島屋の11Fにある、名古屋高島屋店にあることも。
記憶を辿ってみると、三省堂に来たのは久しぶり。少なくとも、このblogを書きはじめてからは来店してないので、おそらく最後に訪れてからは、数年が過ぎているだろう。
初めて来たゲートタワーモール店からの夜景が目についたのでスマホのシャッターを切ってから、名古屋高高島屋店に向かった。 名古屋高島屋店に着くと、文庫本売場に向かった。売場で新潮文庫のコーナーを探したが、すぐにはわからないので、女性店員に在庫情報のプリントを見せた。
すると、店員は在庫情報を店員専用の端末で情報を確認してから、文庫本コーナーに戻ってきた。
そして、新潮文庫のコーナーを教えてくれながら、文庫本を探し始めた。陳列棚を一緒に探すと、自分が先に見つけた。
彼女にお礼を言いながら尋ねた。ゲートタワーモール店と名古屋高島屋店のどちらが広いかを。
ゲートタワーモール店の方が3倍広いことを、彼女は教えてくれた。
名古屋駅からJR東海道線で岐阜駅に向かった。乗車した電車は、18:40発の大垣行きの特別快速。
名古屋駅から岐阜駅は快速であれば20分。数分遅れてホームに滑り込んできた電車は混み合っていたが、運良く4人がけのベンチシートに座ることができた。
すっかり暗くなった中を、快速は走り抜けて19時過ぎに岐阜駅に着いた。
送別会は19:30から、玉宮町にある『大衆酒場 丸大駅前センター』で1次会が始まることになっていた。
もっとも、0次会がその前に催される予定になっていて、そちらにも自分は誘われてはいたのだが、岐阜駅についた時間から、そちらへの参加は諦めて1次会の会場へ歩いて向かった。
店の前で時間を確認すると、開宴時間の10分ほど前。幹事に予約者の名前をLINEで確認すると、幹事の名前で予約してあることが返信されてきた。
入店して店員に予約客であることと予約者の名前を言うと、席に案内された。どうやら、自分が一番乗りのようだった。
席は入口からすぐのところで、通りから見えるような場所だった。岐阜駅で勘違いして受け取った、ある仏教のマイナーな団体の新聞を読みながら主賓たちを待った。
新聞の文面には、創価学会のことについて批判的な記事が目立ったが、目糞鼻糞を笑っているようにしか、自分には思えなかった。
記事にうんざりしはじめたころに、主賓たちは到着した。陰鬱な記事とは反対の雰囲気をまといながら、ほぼ時間通りに。
主賓はベトナム、ホーチミン出身の20代の男性。送別会なので彼は今日、セントレア空港から帰国する。
帰国の理由は、母国に住んでいる彼女と結婚するため。フィアンセとは8年も付き合っているらしい。
それだけでも驚きだったが、その会に遅れて合流した日本人の独身男性も今の彼女と同じく8年、交際しているらしい。
話の流れで彼女の年齢が31歳だったことを教えてくれた。さらに、彼女が結婚したがっていないのかを掘り下げて聞くと、彼曰くそのようなそぶりは今のところはないようだ。
自分をこの会に招いてくれた幹事と、自分が茶々を入れたりして盛り上がった。
楽しい夜は過ぎるのがいつも早い。初対面の人、数ヶ月ぶりに会った人、数年ぶりに会った人とも、10人弱のメンバー同士、楽しく会話できていたはずだ。
だが、主賓とはもう再会することはないかもしれないことを思うと、少しだけ切ない。
自分が訪れた国で唯一、住んでもいいと思える国ベトナムに帰ってしまうから。
22時過ぎで1次会を締めて、2次会をするために目星をつけていたラーメン屋に向かったが、満席で座ることができなかった。
仕方がないので、小さな居酒屋で2次会を行った。ただ、自分は終電が近かったので、一杯だけで店を後にしたが。 23時前には店を出たはずだが、帰宅すると日付が変わって今日になっていた。
気分が良かったので、途中で道草を何度もしたくなったが、昨夜は久しぶりに誘惑に打ち勝った。
昨夜すべてのおかげか、今朝は気持ちの良い気分で1日をスタートできた。
主賓の彼は、無事ベトナムに帰国できただろうか。ひょっとして、フィアンセが空港まで出迎えに来てくれていたりして。