今の現場に着任して3か月。イコール、委託さん扱いされて3か月になる。
現場のプロパー社員たちに、委託さんと呼称されているのだ。『さん』さえつければ、失礼ではないと思い込んでいるかもしれないが、はっきり言って自分にとってその呼ばれ方は気分が悪い。
自分が所属しているチームのリーダーが今日、久しぶりに出勤してきた。先週の一週間、リフレッシュ休暇を取得して北海道に行ってきたようだ。
自分も含めた委託さんたちにも同じようにお土産を配っていた。お土産はトラピスト修道院のバター飴1粒と六花亭のちょっとしたお菓子、小袋ひとつだった。
リーダーが復帰したのと入れ替わるように、お局様的なプロパーの女性社員が今日から1週間以上休むらしい。
朝一番からプロパー社員同士がひそひそ話をしているのが聞こえてきていたが、数時間経ってから詳細がメールで流れてきた。実父が亡くなったために、忌引きを取るようだ。
自分が父親を亡くしたのはおよそ4年前。新興市場ではあったが、一応上場会社に勤務していた。東証一部の上場会社である客先に常駐する形で。
その際、自分がどれだけ休みをとるかでギクシャクしたのを覚えている。
自分の希望は最低でも一週間だった。長男なので喪主を務めることにもなっていたからだ。
葬儀が終わっても、やらなければならないことが多々想定できたし、心身ともに疲れるので少しはゆっくりしたかったからだ。
普段は何かと揚げ足を取る上司もその時ばかりは同情的で、自分が一週間休むことをすんなりと了承してくれた。
だが、思ってもいない人間が口を出してきたのだ。それは営業だ。
担当の営業は自社の社則を持ち出してきたのだ。社則では一親等の忌引きは3日間。それ以上の休みはお客の了承が得られないので認めないと言ってきたのだ。
営業からはお悔やみの言葉も無かったと記憶している。感情的になっている自分に畳みかけるようにして、気分を害してくれたのだ。
あまりにも怒りが沸くと、自分は冷静になることをこの時に知った。現場の責任者の了承を自身で取る条件で、有給休暇を追加で取得することを営業に認めさせたのだ。
父の亡骸が運ばれていた葬祭場から、客先のリーダーに電話した。お互いに言葉が少なく沈黙の多い会話になったが、了承を得ることができた。
電話の場合、意図的にこちらが沈黙することで相手にプレッシャーをかける方法を、それまでの社会経験で身につけていたからだ。
お局様が身内を亡くしたことは寂しいことだろう。1週間、いやそれ以上休むことも当然だと思う。
彼女と一緒に働いている委託さんだけでなく、同じ日本国内で働いているどんな立場の人も、身内が亡くなったときには、同じように休める社会になっているだろうか。
自己の経験から、どうしても懐疑的だ。