淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

『西郷どん』の最終回とHappy Birthday 【師走の長い1日 その6】

 電車を待っていたホームよりは、乗り込んだ車両の乗客はそれなりにいた。それでも、平日の朝の通勤時間に比べればずっと少ない。
 乗車する区間は二駅なので、電車を待っている時間よりも乗車時間の方が短い。無人の改札を抜けて実家に向かった。

 自分が電車に乗り遅れたので遅くなったこともあり、母親と弟は豆乳鍋をつつき始めていた。
 自分も食卓に加わるやいなや、2人と珍しく乾杯をした。家族と滅多に乾杯などしないので、怪訝な顔をしていた2人に理由を説明した。母と弟も知っている古くからの友人が9年越しに税理士試験に合格したことを。
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 友人の嬉しい話から、次第にいつものような他愛もない会話になった。鍋を囲んでいるとすぐに20時を過ぎて、TVは大河ドラマが映っていた。
 今年の大河ドラマ、『西郷どん』は後半になるに従って、実家でよく見ていたように思う。その日の夜は最終回。鈴木亮平演じる、主人公の西郷隆盛の最期が描かれるはずだった。

 放送が始まってすぐに母親は口にした。ハッピーエンドの話が好きだから、『西郷どん』の最終回はあまり好みの展開になりそうもないことを。
 自分もどちらかというと、その点は母親に近い。ただ、自分はそれ以上に歴史好きなので、史実がどのようにフィクションとして描かれるかの興味の方が上回るので、最後まで見守った。

西郷どん』の視聴率は西高東低と言われ続けたが、最終回までその傾向は続いたらしい。鹿児島で人気があるのはわかるのだが、西日本全般で人気がある理由はどうしてだろう? 次の大河ドラマも、地方によって視聴率の差が出来るのだろうか。

 ドラマを見終わってしばらくすると、自分は実家から自宅に戻った。無人駅まで歩いて、逆方向の電車に乗った。
 自宅に戻るとすぐにblogを書きはじめた。その時まででも多くのことを書き残しておきたいと思ったので、連載にすることを決断し、その第一回を書き上げた。
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 時間を確認すると22時30分を過ぎていた。友人が作ってくれた花束を抱えて出かけようとすると、雨が降り出していた。傘をさしながら花束を抱えるのは気を使う。
 花によっては花びらに水がつかない方が良いものも多いからだ。代表的なのはガーベラ。水に濡れたところから、カビが生えやすい。

 花束が濡れないように、傘のさし方にも気を使いながら再び同じ駅まで歩いた。数時間前と同じように、ホームはしんとしていたが、何故か寂しさを感じなかった。
 ホームのベンチに座って電車を待った。横にそっと花束を置いて。

 濡れた電車がホームに滑り込んできた。街中へ向かう電車からの降客は少なかった。
 先ほどの乗車に比べるとさらに乗車客は減っていた。日曜日の23時近く、しかも街中へ向かう電車を利用する人はそれほど多くないのかもしれない。

 自宅から一番近い、ターミナル駅で電車を降りた。ホームからまわりを見ると、自宅周辺と同じように初冬の雨が降りしきっていた。
 無人ではない改札を抜けて、その日最後の目的地に向かった。

 雨に濡れそぼっている街中で傘をさしながら、歩いていく。持ちなれていないプレゼントを抱えて。
 金曜日や土曜日であれば通行人が多い場所も、忘年会シーズンとはいえ日曜日なせいか、閑散としていた。
 目的のお店が入居している雑居ビルの下まで来ても、呼び込みやビルから降りてくるお客もいなかった。

 雨に濡れないところで傘をたたんで、ビルの狭いエントランスでエレベータを待った。エレベータを待っている間も、乗車中も独りだった。
 自分がボタンを押したフロアでエレベータは停まり、扉は開いた。

 目の前のあるガールズバーの扉を引くと自分の想像通り、店は賑わっていた。
 カウンターの真ん中に立っていたその日のヒロインと目が合ったので、お祝いの言葉と一緒に花束を差し出した。
 ヒロインは自分が想像していた以上に喜んでくれた。リクエストしていたとはいえ、自分が花を贈ってくれるかは半信半疑だったようだ。
 まわりの女性スタッフからは、花束の手渡し方を褒められたので、調子に乗った自分は冗談を言った。TAKE2しようか、と。

 カウンターの奥の空いているスツールに座るために、奥に進もうとすると、ボックス席に自分が知っている女性が座っていた。系列店で今年の春先まで働いていた、元ママだ。寿退職して、店のママから双子のママに今夏なっていた。
 彼女が今日呑みに来ることを前もって知っていたし、顔を見られるのを楽しみにもしていた。
 ふざけて彼女の向かいに座ろうとすると、まわりがすぐにツッコむようにたしなめてくれたので、カウンターに座った。

  焼酎の緑茶割りを店のスタッフに用意してもらっている最中に時間を確認すると、23時ごろだった。
 ヒロインの誕生日は厳密には、翌日の月曜日。週初めの月曜日よりもまだ日曜日の方が、お客さんが店に足を運びやすいのではないかと考えて、彼女は誕生日イベントを日曜日にしたのだ。
 その誕生日まであと1時間を切っている。

 終電の時間が近づいているためか、帰宅するお客も出てきたが、入れ替わるように入店してくるお客もいた。
 気がつくと、カウンターでグラスを傾けている何人かは顔を知っているだけでなく、何度か楽しく会話もした客もいた。

 日付が変わる直前でワンセットの時間がきたことをボーイに告げられたので、延長することを伝えた。なんとなく日付が変わるまでは、このままこの場所に居たかったからだ。
 24時が近づくと、ヒロインと仲の良いスタッフが皆でカウントダウンすることを提案した。お酒でいい気分になっている人ばかりなせいか、誰も反対しなかった。
 彼女のかけ声に併せて、お客と店のスタッフ全員のカウントダウンが始まった。そして、日付が変わった瞬間に皆がお祝いの言葉を口にしながら、拍手していた。

 カウントダウンを呼びかけたスタッフがヒロインに、挨拶を促した。
 主役はただただ、シンプルな短い言葉を口にしたが、誰が見ても嬉しそうに見えたし、その言葉を聞いた誰もが幸せな気分を分けてもらっていた気がする。もちろん、自分もその内の1人だ。

 こうして、師走の長い1日が終わった。この後の話や他のこぼれ話もあるのだが、機会があれば筆を取るかもしれないが、気まぐれであまのじゃくなマスヲだから、どうなることやら。

 負の感情を抱えている人と接していると、それが自分にも影響している気がするが、その逆なことにも気がついた1日になった。2018年の年の瀬の夜に。(了)