淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

完済

 大袈裟かもしれないが、今日である人生の区切りがついた。20年近く支払い続けてきた住宅ローンの最後の支払日が今日だったから。
 引き落とし先の口座がある金融機関から、今までと同じ文面のメールが届いていることを今朝、確認した。『引落:1件』、と。
 最後の引き落としは今までとは違った文章になるのかと思っていたが、金融機関からのメールは最後まで事務的だった。

 今住んでいる自宅は、今までの人生で最高額の買い物になるだろう。おそらくこれからの人生でも。
 20代の後半に自分の希望ではなく、家庭の事情によって注文住宅を建てることになった自分。その当時、今の自分をまったく想像出来ていなかった。
 仕事も体力仕事だったし、プライベートでは今以上に女っ気がなかったので、結婚なんて考えられなかった。ましてや自分が親になっていることも。
 収入についても当てが外れた。仕事の内容は違うものの、20年前と今の年間所得額はほとんど変わっていない。

 ローンを払い続けている間、ローンを借りた時よりも収入が少ない時期が結構あった。
 最初にローンを借りた住宅金融公庫の職員から、調子の良いことを言われたのが懐かしい。だんだんと収入は増えるはずだというニュアンスを。
 だが、実際は違った。日本の経済は失われた20年に突入。30代になっても20代のころに思い描いていた収入に、まったく手が届かなかった。
 さらにリーマンショックが自分の経済状況を酷いものにした。

 当時、リクルートエージェントを介してある会社に転職したばかりだったが、試用期間だったために納得できない不本意な理由で、試用期間終了後に自分はお払い箱にされた。
 しばらくはその状況を中々受け入れることができなかったし、お払い箱にした会社を恨むばかりかリクルートエージェントにも逆恨みしていた。

 その後しばらくは契約社員などで何とかしのぐ日々が続いた。
 そんな時代のあるとき、自分が嫌っている同級生に駅でばったり出くわした。その時に、一言言われたのだ。芸があって良かったな、と。彼らしい嫌みを込めた言い方だったが、何故か自分の中ではすとんと落ちた。
 嫌いな人間の方が案外、自分の良い映し鏡になってくれることに気がついた瞬間だった。だからといって、自分から彼に対して積極的に近づいていく気持ちにはなれないし、今でもそのことは変わらない。
 同業者である彼は、今ではある上場企業の部長を務めているが、少しは人を見る力があるのかもしれない。

 その後、様々な巡り合わせから有期雇用者から無期雇用者に変わることが出来たし、いくつかの法人、会社を渡り歩いた。
 ある医療法人では退職後に民事裁判をしたが、今では貴重な経験が出来たと思っている。

 ローンを完済したら、何か叫びたくなるほどの気持ちの高ぶりを感じるかもしれないと思っていたが、今のところは不思議なほど落ち着いている。
 ただ、これでいつでも会社に辞表を出すことが出来る。会社や職場であまりにも不本意なこと、自分の大切な何かを踏み潰されそうになった時に。