淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

早退すれば?

 今日も寒かった。特に朝は。駅へ自転車のペダルを漕ぎながら裏道を進む中、裏路地に面している駐車場を横切った時に、ある光景が目に入った。駐車してあった車のフロントガラスに霜がびっしりと氷着していた。
 霜がガラス上で凍り付くほどの寒い朝だったが、自分が飛び乗った通勤電車の車内はそうでもなかった。

 乗車した駅では、おそらく自分が最後に乗った乗客だろう。おかげで、扉の一番入口の脇に乗った。車内に背中を見せて。
 しばらくすると、耳元で甘い会話が聞こえてきた。声の方をさりげなく見やると、若いカップルがいちゃついていた。
 男はスーツを着ていたので、おそらくサラリーマンだろう。身長は170㎝くらい。薄茶色のコートを着ていた女性は150㎝前後に見えた。

 2人にはある共通点があった。容姿が残念な感じだったのだ。それでも、男はギリギリ及第点。若い頃の自分よりは、若干高得点にはなりそうなものの。
 女性はそれほど太っている訳でもないのに、パッとしなかった。
 夜遊びに行くような店で、自分の相手として彼女に接客されたら、間違いなくテンションが下がるだろう。漂わせていたフレグランスも、鼻についた。

 2人のストロベリートークは続いた。彼女が甘えた調子で何かを口にし、男があいづちを打つような会話が。
 頭が痛い、と口にしながら彼女の頭が彼の胸にもたれた。早退すれば、と彼は答えた。
 恋は病気。2人は明らかに疾患者なので、自分は今でも次のように言いたかった。病欠すれば、と。

 途中で降車客が多いターミナル駅で2人は降りた。彼らは本当に好き合っているのだろうか。彼女はともかく、彼の方は。
 いつのころからか、男女の間は好き同士でなくても一緒にいれば、それなりに楽しめることを知ってしまった自分。そのことを思い知ったときに、自分の青春は確実に終わったと悟った。
 彼らも自分と同じように思うときが来るのだろうか。ふりかえって、彼もしくは彼女のことが本当は好きではなかったかもしれないと、考えてしまうような日が。

 電車が終着駅に着いた。自分は車内に残ろうとした。空いたシート座席に座ってネクタイを結び直すために。
 すると、降りる人並みの中に記憶に残っている女性客を見かけた。30歳前後で眼鏡をかけた、ふくよかな女性だ。
 秋の終わりくらいまでは、ある男性といつも一緒だったのを鮮明に覚えていた。彼女と似た黒縁の眼鏡をかけ、ぽっちゃりとした同じくらいの年齢に見えた男性と。一時は毎朝、この駅のホームでハグしていたことも。お互いに出勤先が別だったのだろうか。
 だが、今朝見た彼女からはそんな様子が全く想像できなかった。ひょっとしたら、彼女の病気が治ったのかもしれない。