久し振りの会社の面接を受けた昨日、結果的にむしゃくしゃしたので1人で呑みに行った。こういう時には、しがらみのない人間と他愛もない話をするのに限る。
といっても、自分なりに要件はいくつかあった。
そのうちのひとつは、こないだの日曜日に撮った写真の感想を何人かに聞きたかったからだ。
先月から、今まで行ったことがなかったガールズバーに時々呑みに行きだした。
新しく知り合った呑み仲間と居酒屋でグラスを傾けているときに、自分が口にしたキーワードから二件目にその店まで連れていってくれたことがきっかけだ。
その店で働いている女性スタッフの1人が、プロの作家であること。新海誠監督、特に『言の葉の庭』と『秒速5センチメートル』がお気に入りであることから、話が盛り上がるのではと、考えてくれたのだ。
初めて来店したときは、結構酔っていたので何を話していたのかも曖昧だった。ただ、彼女から名刺を二枚もらったことは覚えていた。一枚はお店での名刺。もう一枚は作家としての名刺だ。
早速、彼女の名刺にプリントしてあるインターネットのサイトへアクセスし、無料で公開されている彼女の作品をいくつか読んだら、いい意味で裏切られた。見た目の第一印象と全く違ったからだ。
文章、特に言葉使いが非常に柔らかい。ベタっとしている訳でもなく、かといって乾きすぎているのでもない。いい意味で女性らしいのだ。
プロとアマチュアを比べるのは失礼な話だが、決して自分には書けない文章と作品だった。
それからは、彼女の感性に時々触れるのが楽しみだし、自分への刺激にもなっている。
そんな彼女に撮影会で撮った写真の感想を聞きたかった。真剣に見てくれたが恥ずかしい話、自分で気がついていなかった小さなピンボケなども指摘してくれた。
彼女は好きなフォトグラファーの写真集を持っているほどの、写真好きだったのだ。ただ、自身で撮ることはないようだが。
自分はカウンターの角に座ったが、少し離れて3人組の男性客が陣取っていた。皆、いい感じでお酒に呑まれていたので、彼らに自分の写真を差し出した。気に入った写真があったら教えて欲しいとお願いして。
20枚入りのアルバム3冊で60枚を。1人一冊になるところもちょうど良かった。
すぐに食い入るように見てくれた。彼女がいいと、それぞれが口にしながら。プロのモデルだからと、ツッコミを入れたかったが。
皆、自分が撮ったことを驚いていた。相手が酔っていることもあっただろう。
個別にどの写真がよかったかも教えてくれた。
彼らに自分の仕事を聞かれたので、正直に無職だと答えた。いつまで働いていたのかと、何をしていたのかも聞かれたので、3月までシステムエンジニアだったと答えると、彼らは響めいた。同じ業種だったからだ。
先に席を立った彼ら3人。その中の1人が帰り際に、次のようなことを口にした。熱くなったり、夢中になったりすることがあって、羨ましいと。
自分は何も言わなかったが、お互いに先のことは本当にわからない。
明日、自分が写真への興味を無くすかもしれないし、彼が明日、絵を描くことに取り憑かれるかもしれない。