一眼レフカメラで写真を撮りだしてまだ数ヶ月。その間に様々な被写体を写真に収めてきた。
雪山、桜、蛍からセーラー服を着たモデルさんのポートレートまで。
まだまだ自分が挑戦したい被写体はいくつかあるが、そのうちの一つに昨夜は挑戦した。その被写体とは星空だ。
毎年、お盆のこの時期になると天文ファンの関心を奪う、ペルセウス座流星群の活動が盛んになる。昨夜の狙いはズバリ、流れ星を写真に収めることだった。
22時過ぎに自宅を出て車で友人宅に向かい、そのまま撮影目的地に向かった。目的地は愛知と長野の県境にある面ノ木高原。
夜遅い時間に車を走らせれば、名古屋市内からだと2時間ほどの距離だ。
深夜の公道をオッサン2人が乗った車は進んで行く。猿投グリーンロードを走り抜けて、三河に入ると通り過ぎる車も少なくなっていた。
自分がマイペースで走っていると時折、後ろの車に追い抜かれもしたし、自分から後続車に道を譲ったりもした。
追い抜いていく車を見ながら、若い頃の自分を思い出したりもした。助手席に座っていた友人は、何を思っていたのだろう?
目的地の駐車場に着くと、それなりに人が居た。びっくりしたのは自分が車を停めようとしたすぐ脇で、カップルと思える2人がカメラでの撮影を試みていたことだ。
一応、こちらが気を使って無駄な光が入らなかったかを尋ねた。
カメラ、三脚やレンズなどいくつかの機材を運ぶのが面倒なのはわかるが、そんな危ない場所での撮影は辞めて欲しかったが、2人の世界に入り浸っていることは明らかだったので、野暮なことを言うのは控えたが。
彼らだけでなく、まわりからはカップルと思えるような2人組が何組か居た。
考えたら自分も昔、ある女性とここに星を見に来たことを思い出した。その女性とは、ここ数年別居を続けていて、会ってもすっかり言葉を交わさなくなった妻だ。
友人と2人、駐車場から離れた芝生の上まで歩いて撮影を始めた。三脚を立ててカメラを固定し、今までの暗い場所での撮影で得たノウハウなどを活かしながら。
だが、流れ星どころか星空さえ上手く撮ることができなかった。いろいろと試しているうちに、あることが原因ではないかという仮説に辿り着いた。その仮説とは月の存在だ。
満月ではなかったが、なかなかの明るさを放つ月齢だったからだ。
自分は諦めかけて、友人にお節介を焼きながら星空を眺めていた。時折、星が流れるのが見えた。
気を取り直して再撮影に挑むと、かろうじていくつかの星を捉えることができた。月が沈んで暗くなったからだろう。
だが、流れ星をカメラで捉えることはできなかった。いくつかの流星を見ることはできたが。 帰り道、運転していると、ふとあることに気がついた。流れ星に何も願いをかけなかったことに。というか、今の自分が流れ星にかけたい願いも無いことにも。
もちろん、自由になるお金と時間はいくらでも欲しい。でも、それらは誰かにねだったり、願って得たりするものではない気がした。
帰り道、そんなことを考えながらハンドルを握っていると、今の自分がそれなりに幸せに思えてきた。