今週の月曜日から毎日祈るような気持ちで、土曜日のチャオ御岳スキーリゾートの天気予報を見ていた。
今週もゴンドラの運行時間は6:30~15:00まで。そのために3:30過ぎには家を出た。
先週と違い、道中はゲレンデに向かいそうな車を高速から何台か見かけたので、今日は最終営業日の前日なので、先週よりは混んでいるかもしれないと思いながら車を走らせたが、いつもよりはゆったりと走らせていたせいか何台かの車に煽られもした。
向かっているゲレンデの営業日が終わることにセンチメンタルになっていたのかもしれない。
さすがに道中に桜の花を見ることはできずに山肌に山吹や道路のふちなどに芝桜が咲いていた。
また、先週とちがい道中に霧などはかかっていない。
開田高原あたりから見えてくる御岳を見ると残雪は残っているが、先週よりは黒っぽく見える。ゲレンデ近くになっても道路脇に残雪はなかった。
ゲレンデの駐車場に6:15に着いた。駐車場の車はまばらだった。
マスヲが停めた隣の車は岡山ナンバーだった。
おそらく、定年を過ぎた年齢だろう。挨拶をして話しかけたら、おだやかな話し方で本当に昨日から時間をかけて岡山からこのゲレンデまできたそうだ。
マスヲもそういう歳を取りたいと思わせるような方だった。
駐車場も空いているなら、ベースセンターも空いていた。
先週はリフト券を買うのに多少の待ちがあったが、今日はすんなり購入できた。
コース案内図を見ると今週末に滑走できるコースはイーストコースのみだった。
センターコースは無理だと思うと残念だったが、先週の雪の状態をみるとある程度想像はついていた。
センターから表にでると目の前にはもう雪はない。
ゴンドラ乗り場までの積雪のあるところまで、ブルーシートが敷いてあり、その上を歩いて積雪のあるところまで辿り着き、やっと雪の上を歩く感触を味わうことが出来た。
なんとか6:45ころに最初のゴンドラに乗ることができた。
ゴンドラから眺めるとまわりの針葉樹の緑は先週より、しっかりと色を強めている。ゲレンデも急速に初夏へと向かっている。
ここで春スキーをはじめたころは聞こえてきた鳥の泣き声はウグイスだけだったが、今週はかっこうまできこえた。
さすがに今週末が最後の営業日だということが納得できるように、イーストコース以外のコースは黒い山肌をあちこちに見せていた。
1本目を滑って見る。コース幅は正直に言って想像よりも狭かったが、それ以上に今週も雪質は想像以上だった。
滑っていて、この爽快感が今週限りだと思うと切なくなってきた。
2本目のゴンドラで偶然、駐車場で隣り合わせた岡山の紳士と一緒になった。
1本滑ったが先週の志賀高原の一ノ瀬や寺子屋よりも雪質は比べ物にならないくらい、いいらしい。
来て良かったと言われると、不思議な話だがこちらまで気分が良くなってきた。
朝のうちはほとんどスキーヤーしかいなかったが、時間がたつにつれボーダーが増えてきた。
ゴンドラに乗り合わせた若い男性ふたりのボーダーと話をしていたら、本当は昨夜友人と3人で飲むはずだったのだが、あとひとりの友人が約束を反故にしたらしい。
その時、彼らは頭に来ていたらしいがスマフォでここのゲレンデが滑走可能なことを知り、お酒を飲むのを辞めてそのままここに直行したらしい。
友人に約束を反故にされたことを怒っている様子は、全然見えない。代わりに、俺たち来週から何をすればいいんだろう、と呟かれた。
マスヲはそんなにボードが好きなら来週末から白鳥ウイングヒルズのサマーゲレンデの営業が始まるから、そちらを進めた。
ふたりはウイングヒルズのサマーゲレンデの経験がないらしく、いろいろ聞かれたがとりあえずグラトリができることを話したら乗り気になっていた。
10:00を過ぎたら空腹を感じたので表の屋台で焼きそばとノンアルコールビールを楽しむことにした。
今日は風もなく、空も真っ青のために寒くなく暑いくらいだった。
焼きそばが焼けるまでに10分ほどかかるとのことだったので、空き缶を片手にくっきりと見える御岳を見ながら、焼きそばが焼けるのを待った。
焼きそばを食べた後の2本目くらいに岡山の紳士に再開した。僕も彼を探すというよりは単調な一本のコースなので、どこかで顔を合わせるだろうと思っていたが、向こうもマスヲを探していたらしい。
何時まで滑走する予定なのかを聞かれたので、12:00までのつもりだと話すと、それまでお互いに一緒に滑ることにした。
一緒に3本くらい滑ったと思うがこの重たい雪の上を軽快に滑っていく。失礼を承知で年齢を尋ねると62歳だと教えて頂いた。
ゴンドラに乗るたびにいろいろと話が盛り上がったので、滑走後レストランでコーヒーを飲むことになった。
朝は車中泊をして明日まで滞在し、滑走する予定だと伺っていたが想像していた以上に雪質に満足できたために今日ゆっくりと帰宅することにしたそうだ。
その話しの中で印象的だったのはアウトドアスポーツが好き過ぎて取りつかれている人間をちょっと際どい言葉で表現したことだ。
一時期発行されることが無くなった、釣り漫画のタイトルに似たような言葉で表現していたが、まったく嫌な印象も受けずにそれどころかこちらも同感だった。
また、アウトドアスポーツを愛好する人間は仕事ができる人ばかりだ、おっしゃっていたがマスヲは自分のことはやんわりと否定すると同時に、最近の自分の仕事ぶりを考えると少し恥ずかしくなった。
最後に彼へのメールの宛先を聞いたので、後日こちらから連絡をすることをして別れた。
マスヲがこの記事を書いている最中も事故に遭っていないことを祈っている。
今年は濁河温泉のある旅館にも宿泊したし、先日は旅館御岳の日帰り入浴もしたが、市営の露天風呂も気に入っていたので、立ち寄ることにした。
確か、昨年のシーズン最後のスキーも立ち寄った気がする。
濁河温泉から国道41号線の飛騨小坂まで抜ける山道の途中で脇の木陰で仮眠をしようとした。温度計を見ると20度を軽く越している。車内も締め切ったままだと少し汗ばむほどだった。
窓を少し開けて微睡しながら考えた。昨年よりも雪が多かったせいもあるが、今シーズンのスキーは例年になく得ることが多かった年だったと。
でも、どんなに素晴らしい宴にも終わりはある。