淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

デブばあさん

 45歳の2日目を迎えた。40代で1番長く感じた誕生日から2日経ったが、思ったよりも喪失感はなく少しだけ寂しさを感じただけだ。
 朝早く目が覚めてしまうのもいつものことだ。全自動洗濯機に洗濯ものを放り込んでスイッチを入れてから、またベッドの中でしばらくまどろんでいた。
 ベッドから出て庭に出ると食虫植物だけはまだ庭先になじんでいないように見えた。
 先日、20年来の友人である花屋の主人に花束を買いに行ったときに、病んでいるマスヲ君に誕生日プレゼントと冗談気味に言われてもらったものだ。

 洗濯物を干して自分で作った朝食を取った後に、通っている接骨院に通院し、その足で副業先のお店に向かった。
 今日は正業だけでなく副業も休みだったので、店のシフトに入っているわけではないのだが、ある理由があったからだ。

 マスヲがアネゴと呼んでいたパートが辞めたために、マスヲの副業先のお店では今は完全な人手不足だ。
 そんな中で来週の日曜日にマスヲが休みをもらったのだが、その穴を埋めてくれたパートの方に前もってお礼をしておいた方がいいと思ったからだ。

 その方をわかり易く説明するために、文中ではデブばあさんと呼ぶことにしておこう。今の時代ではおばあさん扱いするのは少し可愛そうな年齢ではあるが、お客さんからは実際に時々おばあさん扱いされているからだ。
 また彼女は普段平日しか入らないことを自分のルールとしているためにマスヲとは滅多にあわないのだが、会うたびにびっくりするほどふくよかになっているのだ。
 店の従業員は全員、営業時間中はビニールの前掛けをするのだが、彼女だけはその前掛けの紐がついに届かなくなり、前で結ぶ紐を後ろで結んでいることを他のパートの女性から最近聞いた。

 彼女に会って手土産の甘いお菓子を手渡すと喜びながらも、真っ先にアネゴが辞めたことと、そのことにかぶせるように彼女の悪口を並べたてた。
 彼女がその話をしている表情は笑っているのだが、その笑い方には品が無く、彼女の性格の悪さを強調しているように見えた。
 デブばあさんとアネゴは普段から折り合いが悪く、日ごろからどちらも互いのことを悪く言っているのを店の皆が聞かされている。
 デブばあさんはわざわざ他のパートの人の通り道でアネゴの悪口を聞いてもらうために待ち伏せしていたという。本当に呆れるばかりだ。
 昨年、2人の間で働いていたパートの方が夫の転勤のために辞めたのだが彼女に言わせると、どっちもどっちですよ、と去り際にアネゴとデブばあさんのことを何人かに言っていたそうだ。

 喧嘩両成敗的な観点もあるので、ふたりとも悪いとは思うのだが、マスヲは圧倒的にデブばあさんの方が嫌いだ。
 アネゴのほうが子供っぽいワガママなところは多分にあったのだが、逆に言えば人間味は彼女の方があった気がする。

 ある時、副業先の全店の従業員が参加できる慰労のための食事会が開かれたのでマスヲは参加した。
 マスヲの店から参加したのは社員以外ではマスヲとデブばあさんだけだった。
 慰労会の会中も、総店長と呼ばれる全店の現場を取り仕切る責任者に不満というか告げ口と言われて仕方がないようなことばかりを話していた。

 マスヲが一番気になったのは帰宅する途中でのことだ。会社が参加者全員のタクシー代を負担してくれたため、タクシーで帰ることになった。
 先に自宅が遠方の社員が降り、それからはデブばあさんと運転手の3人になった。
 デブばあさんはそのころから体重のせいか足が痛いようで、誰が見ても動きが悪くなってきていたので、シフト数を減らされつつあったが、それも彼女の不満のひとつのようだった。
 マスヲはその慰労会が昼間に開催されたために、かなり酔っぱらっていたのでお酒の勢いで聞いてみた、どうしてそんなにお金が必要なんですか、と。
 日ごろから退職した旦那がそれなりの会社に勤めていたことや出戻った娘のことを考えて最近自宅を新しく立て直したことを自慢していたので、お金にきゅうきゅうしている感じはしなかったからだ。
「生活レベルは落としたくないじゃない」彼女は言った。
 そして、むかし仲の良かった友人が毎朝喫茶店で行っていたママ友会にお金の面で厳しくなったことを理由に参加しなくなり、疎遠になったことを例にマスヲに説明したのだ。
 酔っていたせいもあってかマスヲは無償に腹が立ってきた。本当に仲の良い友人であれば、友人と会うための代案はいくらでもあったはずだ。たまには誰かの自宅で集まったりするくらいの思いやりもなかったのかと。

 父親が亡くなる前後には妻のせいもあってお金の大切さを本当に思い知らされたが、逆にお金ではどうにもならないことのほうに心が傾いてきているこのごろだ。