土曜日は家に閉じこもって書きかけの小説を仕上げるつもりだった。だが、目論見が見事に狂ってしまった。
先週まで通勤時や昼休みに西加奈子著、『サラバ!』を読んでいたのだが、金曜日の帰宅時の電車の中で中巻の残り数ページとなっていた。月曜日の朝に数百ページもある文庫本2冊をバッグにいれるのが嫌だったので中巻だけは読み切るつもりで読みだした。
朝食後から読み出したら、読むことを途中でやめられなくなっていた。気が着いたら下巻を読み切っていた。時計を見ると遅めの昼食を摂るくらいの時間。読み疲れたのもあったが、読後感が重すぎてしばらく呆然として何もできなかった。
それでもお腹は空いていたので簡単に昼食を作って食べてもまだ何も手につかない。心が何か背負っているようで重さを感じて仕方がなかった。しょうがないので夕方まで電気カーペットの上でごろ寝していた。
この作品は文庫本ではおよそ1000ページ。歴史小説や時代小説であればある程度長いものを読むのも苦にならないことが多いのだが、この作品は後半になればなるほど読み続けることが苦にならないどころが読むのを辞められなかった。
昨年、池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』を読み出したらほぼ徹夜で読み切ってしまったことを思い出した。一気に数百ページを読み切らせてしまう作品に巡りあったのは久しぶりだ。
以前、テレビで著者の西加奈子を見たことがあったがあまりいい印象を持たなかった。だが、自分の場合はテレビで見た印象が悪い作家ほど、書いた作品に夢中になる傾向が強い。
だから、『サラバ!』はずっと気になっていた作品だった。『アメトーーク!』の昨年の読書芸人でも絶賛されていたし、文庫本の帯をその回に出演していたオードリーの若林正恭と又吉直樹が書いている。
又吉の紹介コピーにも惹かれたが、それ以上に若林のコピーに自分は惹かれた。そのコピーは番組内でも彼が発言していた言葉だった。「30代のクズを救えるのは、日本で西さんだけ。」、と。
読み終わって自分が思ったのは主人公のことをクズだとはとても言えない。少なくとも自分から見ればだが。どこにでもいる少し弱くてズルい人だとしか思えない。
若林正恭の身近にいる人はまともな人が多いのだろう。オードリーとしてコンビを組んでいる春日俊彰なんて最高な人格者かもしれない。