今日は約束通り、昨日の続きを綴りたい。撮影の副業での話を。
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声をかけて、せっかく並んでもらったお客にいかに逃げられないかを自分は考えていた。
並んでもらえる客層が週末ということもあってか、圧倒的に家族連れが多い。小学生以下の子供も目につくが、彼らはすぐに並ぶのに飽きて走り回ったり、親にぐずったりすることが多い。
待っている子供が飽きないようにする対策からアプローチした。
辿り着いた答えは子供たちに積極的に話しかけ、クイズを出すことにしたのだ。お客が興味を持っているであろう、名古屋城のシンボル、金鯱にちなんだ問題を。
待ち時間の長短にあわせてある程度、問題の数や内容もコーディネートする。
問題を出題したあとは、子供に考えさせる時間を与えている。
自分で言うのもなんだが、この方法はかなり効果がある。子供も大人しくなるし、まわりにいる両親などの大人までが一緒に考えてくれるので、全員が退屈しないのだ。
だが、自分で考えだしたこの方法を真っ向から否定する人物がいた。そう、うちのボスだ。
お客が退屈しないようにコミュニケーションを図っていたときだった。その様子を見ていたボスが無駄口を叩くなと言ってきた。
撮影の仕事はボスのためでもなく、対価のためでもない。自分とお客のためだけに行っているのに。
一応ボスなので、その場は引き下がった。お客と会話をしているところを見るだけで、一昨日の一日に何度も同じような注意を受けたので、そのうちに自分も怒りが溜まって最終的にはカチンときていた。
それからは客引きだけをしていたが、それだけで済まないのがこの仕事の面白いところでもあるし、大変なところでもある。
施設内のことを観光客から多くを尋ねられるのだ。食事をする場所や土産物屋の場所などなど。
最近、多くなってきたのは喫煙場所についてだ。撮影スポットの近くにあった喫煙場所が無くなったことも影響しているのかもしれない。
お客と話しているところを見られるだけで怒られるようになったので、お客に何を聞かれても素っ気ない態度をしていたら、ついにお客からクレームがついた。
ボスはそのことを自分に言ってきたが、自分は理論立てて反論した。ボスは自分の屁理屈にたまりかねて次のように吐き捨てた。頭がおかしいと違う、と。
この発言はもう誰が聞いても、ハラスメントだろう。仕事中にこんな嫌な思いを味わったのは久しぶりだった。
ボスはもちろん雇用者だが、従業員から敬意を少しも集められていない。それが証拠にカメラマンたちにすぐに辞められてしまう原因を直視できていないのだから、仕方がないのかもしれないが、ハラスメントを受けてまで休日に働く意味があるのかを、それからずっと考えている。