のび太君顔負けの生活がすっかり板についてきた。
起床時間は自由、お腹が空いたらベッドから起き、眠くなったらすぐ横になる。
遅刻しながらでも小学校に通い、ジャイアンやしずかちゃんと遊んでいるだけ、今の自分よりはのび太君の方が勤勉だろう。
仕事をしていないことによるストレス軽減と服薬の効果もあってか、よく眠れるようになってきた。夜中や明け方に目を覚ますことも減ってきたし、日中も難なく昼寝ができる。
昨夜は蒸し暑かったこともあってか、ベッドに入ってもなかなか眠りにつけなかったことを、少し懐かしく感じたほどだ。
一ヶ月ほどで、すっかり生活は変わった。
極端な内面があることを自認してはいるが、そのことについて初めて指摘されたのは小学生のころ。通っていた習字塾の先生に言われたからだ。
毎週土曜日の午後、小学校が終わった後にさぼらずに通っていた人生で初めての習い事は、思わぬ理由で終わった。
道路の拡張工事のため、先生の自宅兼教室が立ち退くことになったからだ。
自分なりには真面目に習字に取り組んでいたと思っているが、自分の直筆を見た人間はほぼ誰も信じてくれない。
すすき梅雨なのか、天気が悪かった日が多かった一週間。
そんな理由もあってか、ほとんど家から出なかった。雨上がりに少し庭の草抜きをし、歯科医と耳鼻科への通院、スーパーとドラッグストアで買い物をしたくらいだ。散歩さえしなかったし、カメラもほとんど触らなかった。
日中はほぼ1Fのリビングか和室でゴロゴロしていたが、体重はほとんど変わっていない。
お酒を呑まなかったことが影響しているのだろうか。甘いものは結構、食べた気はするが。
ちょっと前までと違って、自分の中のスイッチが切り替わっていることになんとなく気がついていたが、それだけでなくまわりに対する感度を下げていることにも、先ほど気がついた。
和室で寝転びながら、簾越しに差し込む柔らかい光の中で庭を眺め、秋の虫の声を聞いていたら。
自分だけでなく、誰もがそんな時が人生には必要なのではないだろうか。
普通に生きているだけでも、あまりにも多くの情報に触れてしまうので疲れてしまう。
たまには、一人きりになって目を閉じて耳を塞ぐことも必要なのではないだろうか。