淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

やよいの風

 二度目の緊急事態宣言が解除されて初めての土曜日。
 昨日、降っていた雨は上がって晴れていたが、アスファルトはまだ濡れていた朝。
 そんな路面をローリー車で北に向かって走っていた。
 山の端に霞がかかっていたのが目についた。視線を少しずらすと、次のようなコピーが書かれていた看板が目に飛び込んできた。車で行く南国リゾート、と。

 自分は遊びに行くためではなく、仕事に向かっていく途中だった。
 土曜日の今日は副業で手伝っている灯油の売人になる日だったから。
 その看板を目にしてから1時間も経たないうちに、しっかりと汗をかいていた。100ℓ近くの灯油を買ってくれた喫茶店の店主からお金を受け取っているときに。
 喫茶店内では石油ストーブの火が点いていたので、思わずに呟いてしまった言葉にお客からひんしゅくを買ったかもしれない。暑い、と何度も口にしてしまったから。

 天気予報では三月とは思えないほどの気温になると伝えられていたが、午前中は体を使って仕事をしていると暑かった。
 まだ雪がチラついてもおかしくない時季なのに、目についた自販機で炭酸飲料を衝動買いしてしまった。
 生地が厚めのネルシャツを選んで着たのは失敗だったのだろう。

 最初のエリアでの販売を終えて、次のエリアまでの移動中に車の窓を開けると風が入ってきた。優しさとやるせなさを含んだ風を。
 次の巡回エリアでは車から降りている時もしっかりと感じるほどに風は強くなっていた。
 それでも、その風のことを誰かに上手く伝えられる気がしなかった。

 そもそも風を表現するのは難しいのではないか。絵を上手く描ける画家、歌唱力がある歌手でも。
 詩かメロディーならば、少しくらいは他の人に伝えられるのかもしれないが、自分にはそれらで何かを表現するような才能は少しもない。

 数週間前から販売価格が上がると告げられていたが、結局はそのまま。18ℓで1,590円。
 今日一日だけでそのことを何度もお客からは弄られたが、悪い気はしなかった。

 担当エリアでの販売が全て終わると今日は珍しいルートで帰った。売り歩いて来た道をなぞって帰ったからだ。
 理由は気分を変えたかったことと未収になってしまったお金を二人のお客から回収するためだった。

 一人はポリタンク一個分の金額、もう一人は120円。
 たかがそれくらいの金額と思う人もいるだろうし、昔の自分だったら今の自分を小さいと揶揄するだろう。
 人は風を受けて変わっていくし、変わるべきだとも思うこのごろの自分。
 例え、それがどんな風であっても。

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今日の写真のモデルは𝐰 𝐚 𝐤 𝐚さん。