村上春樹の短編小説、『納屋を焼く』が映画化されることを知った。韓国人の映画監督、イ・チャンドン監督によって。
作品が完成し、最寄りの映画館で上映されるのであれば出かけるだろう。一体どんな作品になるのか今から楽しみだ。
自分は軽度なハルキスト。この短編小説が収められた『螢・納屋を焼く・その他の短編』も何回も読んでいる。実は他に好きな短編も収められているからだ。
その作品は『めくらやなぎと眠る女』。今までで一番繰り返し読んだ小説だろう。短編なのに何回読んでも飽きることはないし、読後感も素晴らしい。
この小説は後にリライトされ、短縮された別のバージョンが存在する。『めくらやなぎと、眠る女』として別の短編集『レキシントンの幽霊』に収められているが、何故か自分はこちらの作品には惹かれない。理由はわからないが。
自分は生意気にもこの作品をさりげなくモチーフにした小説をむかし書いたことがある。
それほど気にいっている作品なのだが、どうしてもその魅力を他人に上手く伝えることが出来ない。何をどのように説明していいのかわからない。短い作品なので読んでください、としか言いようがないのがもどかしい。
彼の長編小説で好きなのは『ノルウェイの森』。この作品もおそらくこの先、何回も読むだろう。
『ノルウェイの森』もベトナム出身のトラン・アン・ユン監督によって映画化されている。主演は松山ケンイチ、彼女役で水原希子も出演している。その当時彼女がこれほどメジャーな存在になるとは思わなかったが。
好きな作品だったので、どのように映像化されるか興味と同時に不安を抱きながら映画館まで足を運んだことを覚えている。
鑑賞後の感想は可もなく不可もなく。原作のイメージを損なわずに映像化されたことには驚いたが、映画作品としての完成度は微妙だと自分は思う。対価を払って再度の鑑賞はしないだろう。
彼は小説の他に翻訳やエッセイなどもいくつか著している。自分は彼のエッセイ、中でも紀行文で気に入っている。
古いものだと『遠い太鼓』、自分がラオスに行ったこともあるせいか、直近の紀行文『ラオスにいったい何があるというんですか?』も気にいっている。
自分の好きな作家よりも先にラオスに訪れたことが、ただなんとなく嬉しい。
自分が村上春樹の作品を読みはじめたのは20代。当時中年だった彼は今では69歳。会社員であれば定年退職して年金を受け取りながら余生をのんびり過ごしてもおかしくない年齢だ。
まだまだ彼の新作を望みたいが、自分が彼の年齢になったらと考えるとも思ってしまう。ハルキストの1人だとしても。