淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

斎藤さんだぞ!

 今夜、娘と蛍狩りに美濃加茂市のある場所まで出かけた。
 先週のうちに今まで蛍を鑑賞しに行った場所の候補から2か所に絞り、その蛍の情報を提供しているところに電話をあらかじめしていた。
 マスヲの読み通りだった。やはり、今年の晩春から今日まで気温が低い日が多かったのと、梅雨入り後も雨が少ないので蛍の出現が遅れているそうだ。
 どちらも先週まではあまり蛍の数が例年以上に見られていないため、今週末がピークではないかと話してくれた。

 昨夜は第4金曜日のため、マスヲは地域の夜回り当番だ。夜回り後に妻の実家に向かった。到着したのが21時ごろだったが、まだ妻の車はなかった。
 向こうの両親に聞いてみると、今日も仕事で遅くなると前もって聞いていたそうだ。
 マスヲの妻は保育士だ。最近何かと話題を提供している職種だが、一緒に生活しているころから仕事ぶりを見ていて、とてもじゃないけれど好きではないと続けられない仕事だと常に思っていた。
 妻は管理職でもあることから、給料はそれほど安くはない。年収の額面ではマスヲより1本多いくらいだ。
 だが、毎週のように土曜日が出勤であることと持ち帰りの仕事多さや全体的な拘束時間、また仕事中のリスクのことを考えると、やはり給与は相対的に安いと考えている。

 まず、娘に会って最初に運動会で徒競走を見たことを話すと嬉しそうに、そして自分の順位を恥ずかしそうに話してくれた。マスヲももちろん見ていたので知っていたが、人に威張れるような順位ではなかったからだ。
 そのあとに、蛍狩りの誘いをすると行きたいそぶりをみしてくれたが、妻が許可をしてくれるのかを気にしていた。
 娘にも妻に直接話してくれるように話したが、マスヲもタイミングを見計らってメールすることにした。

 明朝、妻に娘と蛍狩りに出かけたいことをメールした。普段の彼女の態度から正直期待していなかったが、今回はいくつかの条件つきながら許可してくれた。
 また、彼女は同行しないことも付け加えてあった。
 17時に迎えに行くことを約束していたので、5分前に迎えに着くと娘がジュニアシートとお菓子を持ってすぐに出てきてくれた。
 妻になるべく21時、遅くても22時までには帰ってくることを約束して出発した。
 娘は妻に車から長い間手を振っていたし、妻も僕らの車が通りを折れるまで見送っていた。

 約束の条件の中で、蛍狩りをする前に夕食を済ませることというのがあった。
 妻の実家からマスヲの家までは昼間の道路が混雑している時間でも30分強で着くのだが、妻の実家から幹線道路を走っていると想像以上の渋滞に襲われた。
 車をのろのろと走らせていると、なんでもないような信号交差点で交通事故が起きており、それが原因だった。
 しかも、その交差点から事故処理のために直進が一時的に禁止されていて、迂回することを強要された。
 そんな中、以前会ったときには使っていなかった言葉を娘からその日にふたつ聞いた。
 ひとつめは「斎藤さんだぞ!」でもうひとつは「最悪」だ。
 娘は渋滞に差し掛かる前はずっと「斎藤さんだぞ!」を嬉しそうに連発していたのだが、渋滞に巻き込まれてからは「最悪」を連発していた。
 そして、娘が言い間違えたのか「最悪」を「斎藤さんだぞ!」に言い間違えたのだ。しばらく間があったあとに2人で笑いあった。

 結局渋滞と回り道のせいで、1時間近くロスすることになってしまった。
 しょうがないので、娘とコンビニでおにぎりやサンドイッチを買い状況をみながら、早く着いたら現地の駐車場で時間がさらに係りそうなら車中で食事をすることにした。
 結局その後の道路状況も全体的にスムーズに流れなかったので二人とも車中でおにぎりとサンドイッチをかじることになってしまった。

 蛍狩りができるポイント近くに用意されている駐車場にはなんとか目的時間の19時30分の少し前についた。
 車が意外と多く、まだたくさんの蛍鑑賞が楽しめることを予感させた。薄曇りではあったがまだその時間は暮れきっていなくて、薄明るかった。
 2人で駐車場から蛍の出現するポイントへ歩いて向かった。出現ポイントはちょっとしが川沿いなのだが、それまでに古い民家の間の小径を抜けていく。
 娘はその古い民家に興味を持って見ていたし、人が住んでいるのかな、とマスヲに聞いてきたりした。
 小径を抜けて川沿いの土手にでた。蛍は全然見当たらないが、蛙の無数の鳴き声がこだましているなか、駐車場の止めてあった車に比例するほどの人が訪れていた。
 まだ、ほんのりと薄明るいせいで土手と川の際に紫陽花が植えてあるのがわかる。
普通の紫陽花と額紫陽花が交互に植えてある。娘は額紫陽花を初めて見たようで、マスヲがこれも紫陽花のひとつだということを教えてあげた。

 時計を見ると19時43分。少しずつ暗くはなっているが、注意深い大人が時折点滅する蛍をなんとか見つける程度だ。
 蛍が見えないので娘は退屈しているのか、以前彼女が本で読んだ知識をマスヲに教えてくれた。蛍が光るのはオスであることと日本にいる蛍で発光するのは10種類だということなどを、だ。
 マスヲの知っていることもあったが、興味のあるふりをして彼女の話に頷いてあげた。

 そんな話をしていてもなかなか蛍の光は見られない。時々、マスヲに肩車を頼んできたりしたので何度かしてあげたが、それでもなかなか彼女は見つけられないようだった。
 まわりの大人たちも退屈しているようで、マスヲも何人かの鑑賞者と話をさせてもらった。
 まず、今年は少ないという愚痴っぽい話と、不思議であるが去年は来ていないがその前の年はという枕言葉がついていた。
 この場所は年上の友人から教えてもらった場所だが、それからはわりと毎年訪れているが、マスヲも去年は何故だか訪れていなかった。不思議な縁を感じた。

「最悪」と娘はついに愚痴りだした。
「斎藤さんだぞ!」じゃないのと、マスヲはすぐに続けた。
「最悪」と今度は少し笑いながら娘は繰り返した。
 そんな会話を繰り返しながら、川沿いの土手を奥の方へと歩いていく。
 そして、だんだんと夕闇が深くなっていき横に生えているはずの紫陽花も見えにくくなってきた。
 すると、例年ほどではないがなんとか鑑賞に堪えうるほどの蛍が見えだした。
 少しずつ娘のテンションも上がってきて、マスヲが見つけた場所を指さすと彼女もそのあたりを必至で探しはじめた。

 20時を過ぎるほどになると、土手のところどころに人だかりが出来はじめ、そのあたりで水面から上部にある木々のあたりを眺めると誰でも蛍の発光を楽しめるほどになってきた。
 マスヲがスマフォで蛍を撮影しようとするが、なかなかうまく撮れない。娘も撮影に興味を持ったようで、撮影したいというので取り方を教えてあげたが、やはり上手く取れないようだった。
 そこで、また肩車をせがまれたので肩車をしてあげた。すると何枚かは彼女自身で納得できたものがあったらしい。
 今度は蛍をバックに自分を撮影して欲しいと言い出したが、スマフォとマスヲの技術では無理だということを告げると少し残念そうだった。
 そのかわりにあとで明るいところで、写真を撮ってあげることを約束した。

 20時20分ころに帰ることを娘に言うと今夜はすんなりと受け入れてくれた。
「21時までに帰る約束だったもんね」、と彼女は言った。
「遅くても22時までって言ってあるから大丈夫」と娘に説明した。

 往時は下道できたが、帰りは妻との約束もあったので高速道路を使うルートを選択した。
 美濃加茂インターからしばらくは東海環状自動車道を走ったので、前も後ろもがら空きだった。娘は気分が良かったのか、貸切みたいだねと話していた。
 最初のパーキングエリアでお手洗いに行くことにした。
 妻から娘のトイレのときに長い間ひとりにさせないように、言われていたが娘自身でオストメイト対応多目的トイレをマスヲと一緒に利用することを希望したので、その通りにした。
 彼女はもう小学校2年生なので父親だと言っても毎日あっているわけでもないので、恥ずかしいはずだと考えた。彼女が用を足す間、メールのチェックなどをしていてずっと後ろを向いていた。そして、マスヲが用を足す間は手を洗いながら彼女に待ってもらった。

 トイレを出たところに小さな花壇があった。娘の写真を撮ってあげることを思いだしたので、彼女の写真を取ろうとすると、2人で自撮りをすることになった。
 考えたら、娘が生まれてからツーショットの写真の記憶が無い。マスヲも嬉しくなって何枚かの2人の写真をとった。

 それからしばらくすると東海環状自動車道から中央道に合流すると貸切状態が終わった。
「最悪」と娘は言ったが今度はワザと言っているように聞こえた。
「斎藤さんだぞ!」とだけマスヲも続けた。
 しばらくすると、娘はスイミングスクールの後だったこともあってか、眠りはじめたのを気配で感じた。
 マスヲは音量を抑えたBGMを聞きながら車を走らせて名古屋インターを抜けた。インターを抜けると妻の実家はもうすぐだ。マスヲは少しだけさびしくなったが心の中でこうつぶやいた。「斎藤さんだぞ!」と。
 妻の実家には予定通りの時間に着き、眠り続けている娘を抱きかかえながら、妻に手渡した。
 来月は妻の許可が下りれば、娘が海に行きたがっているので出かけたいと思っているが、許可が降りなくてもこれからはせめて月に1度は娘と出かけたいと思っている。