鴻上尚史が作・演出する舞台、「ベター・ハーフ」の名古屋千秋楽公演を昨日、鑑賞してきた。
チケットを手配することに夢中になっていたために、手に入れたチケットが千秋楽公演だということに当日まで気がついていなかったが、気がつくとよりテンションが上がっていた。
ウインクあいちに到着すると今までの観劇した中では、開演前のロビーに一番の熱気を感じた。入り口で鴻上作品では名物になっている『ごあいさつ』を受け取り座席で読み始めると冒頭の2行を見ただけで鴻上さんの意気込みも伝わってきた。
ロビーや座席から他の観客を見ていると今まででの鑑賞舞台の中では年齢層や性別などもより様々だったと思う。
初演のときは風間俊介さん目当てのような観客がわかり易かったが今回はそんなこともなかった。
名古屋公演が設けられたのは松井玲奈さんの経歴による事情があるのかもしれないが、彼女のファンと思われるような人たちも事前に考えていたよりは少なかった。マスヲの1個座席を飛ばした左側2席に座った2人の20代に見えた男性が象徴的だったが、観劇慣れしていないような雰囲気だった。
マスヲの右隣と左隣りはそれぞれマスヲより少し年上の男女で、右側の男性は女性連れだったが開演前も閉演後もほとんど会話がなかったのでおそらく夫婦だろう。
開演前に聞き飽きた携帯電話の電源を切ることを促すアナウンスが流れたのにも関わらず、開演中にLINEのメッセージ受信の通知音が微かに聞こえたのが残念だった。
ちなみに今まで大阪や東京で観劇したときはそのようなことは一度もなかったことも併せて追記しておく。
幕が開いたころには硬さを感じているように見えた観客も、最後は全員のスタンディングオベーションとなり、キャストそれぞれから挨拶まで聞くことが出来て素晴らしい形で幕が閉じたと思っている。
再演を鑑賞するか悩んでいたのが馬鹿馬鹿しいくらい、素敵な時間を楽しむことができた。
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ちなみに舞台の千秋楽公演はマスヲ自身では2回目。1回目は同じく鴻上尚史が作・演出する舞台、「イントレランスの祭」だった。
以前の大阪公演とマスヲの違いは、初演も見ていること*1、事前に長距離の移動をしなかったために疲れていなかったこと、箱が違うこと、初演の大阪では座席がほぼセンターだったが今回の公演ではステージから見たら右側4列目だったことだ。
座席の位置の違いによる影響は今朝になって気が着いたが、文字通り違う角度から見ることができたことのメリットの方が高かった気がしている。
箱の違いは開演した出だしに片桐さんが演じる沖村の声の通りが若干悪かった気がしたが次第に補正されたと感じた。
長距離移動しないことで体調が良かったために初演の時と集中力に差があった。
そのせいか、初演を見たはずなのに部分的な場面はともかくラストシーンを全く覚えていなかったことに気がついた時には我ながら愕然としたが、そんなことからも舞台も映画のように同じ演目を複数回見る価値があることを痛感した。
キャストに関しては、唯一、遥香役が真野恵里菜さんから松井玲奈さんに代わった。そのことで気になったのは彼女の地元なのでひょっとしたらマスヲが見た公演には両親や身内、昔からの友人が観劇していたためなのかもしれないが、遥香が性的で卑猥なセリフを連呼するシーンで、彼女が照れながら言っているように聞こえた。それが演出なのかもしれないが、真野さんのときはあまりそのように感じなかった。
良かった点は風間さんや片桐さんとの二人きりの掛け合いのシーンが彼女に代わった影響でより掘り下げられた気がしたし、全員でキャンプに行く場面がダンスによって表現されているのだが、ダンス中の表現で遥香の感情が風間さん演じる諏訪に向かっていることが真野さんの時よりも伝わってきた。
再演のメンバーそれぞれが初演のときよりもそれぞれの配役でのメッセージ性は強まっていたが、中村中さんのピアノ、歌、演技はもちろんのこと彼女自身の存在感が初演よりもより艶っぽく魅力にあふれていたのが印象深かった。
最近は映画を見てもパンフレットを買わないことの方が多いが、今回の観劇後には初演では買わなかったパンフレットと中村中さんが歌う劇中歌のCDを買った。
観劇後にパンフレットを見ていたら、キャスト座談会の中で唯一再演メンバーでない松井玲奈さんがプレッシャーを訴えていた。すると中村さんが次のように言ったようだ。
”留年してる”つもりでもう一回やろうと思ってる。
ちなみに観客であるマスヲも初演を見ていたのにも関わらず、ラストシーンを覚えていないほどだったので観客も最低1人は留年していたことになる。
鴻上さん、キャストやスタッフの方々、素晴らしいステージをありがとうございました。観客としてもまた留年しても構わないので、名古屋での再演をお願いいたします。
*1:演出は初演と変えないと演出家は公言していた