淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

最高裁判所からのラブレターを貰って思い出したこと

 先日、酔って自宅に帰ると畏まった見慣れない封筒が自分宛に届いていた。差出人は最高裁判所。しかも、封筒の先頭に次のように書いてある。『大切なお知らせです。必ず、ご開封ください。』、と。
 自分には嫌な心当たりがあったので、もしかしてと思いながら急いで開封したが、自分の推測が外れたことがわかるとほっとした。

 自分が勘違いした心当たりというのは昔勤めていたことがある法人とのトラブルのことだ。その法人は愛知県内にある医療法人で、400床以上ある総合病院の経営を中心に老人保健施設や有料老人ホームなど幅広い事業を展開している。だが、総合病院をはじめ、いずれの施設も評判は頗る悪い。
 自分の友人が介護職をしているが、彼はある上司に言われたらしい。今の職場が気に入らなくて辞めても仕方がないが、次の職場にある法人だけは選択しないようにと言われたのが、自分がかつて勤めていた医療法人だったと友人から聞いている。

 自分がその法人と争った内容は給料の一部未払いだ。退職に至る経緯も不本意だったが、傲慢で筋が通らないことばかりしている理事会に対してせめて一矢報いたかったこともある。
 退職後に支払督促を法人に送付したので素直に応じると思ったのだが、法人側は予想外の行動に出た。こちらの支払督促に異議を申し立てたのだ。支払督促に異議を申し立てられると民事裁判になることは事前に裁判所や友人の行政書士から聞いていた。

 ちなみに、こちらが支払督促で請求した金額は19万円。病院の規模だけで400床以上もあり、法人の従業員も700人を数えるような組織がたったそれだけの金額をすんなり支払うことに応じなかったのだ。

 法廷は平日しか開廷されないため、こちらは次の職場で有給休暇を使用しなければならなかった。馬鹿な組織を相手に当たり前のことを要求するためだけのことに貴重な休みを使うのはもったいなかったが仕方がない。
 法人側は誰が出廷してくるか興味があった。院長兼理事長が簡易裁判所で裁かれる民事訴訟に出て来るとは思わなかったが、せめて理事の1人でも出てくるかと考えていたが、人事課長が出廷してきた。彼とは顔見知りだったのに、挨拶したが無視されたことが寂しかった。かつては理事会の異常な振る舞いに対して一緒に嘆いていたこともあったのに。

 開廷するとこちらの請求する内容が当たり前のこと過ぎたので初めは、裁判官に理解してもらえなかった。その内容というのは採用の時に受け取った書類に明記されていた給料の金額と毎月受け取っていた給料明細の差額が毎月1万円あったことだ。こちらの言い分を裁判官が理解した時には言葉を失っていた。

 裁判官はこちらに同情的になっているように感じたが、それでも和解することを提案してきた。その提案の説明を聞いていると民事裁判の場合は調停にした方が裁判官の評価になるのではないかと勘繰ったほどだ。
 何か譲れる部分はないかと尋ねられたので、未払い金額の19万以外は放棄することをこちらは了承した。他に19万に対する利子や支払督促や裁判にかかった諸費用は放棄することを了承したのだ。

 こちらの条件に法人側も歩み寄ったので、これで全てが終わるはずだったが、そうならなかった。さすがに尾張北部で悪評ばかりが聞こえてくる法人のことだけはある。
 調停で取り決めた期限内までに法人は19万円を支払わなかったのだ。

 呆れながらも次の手段を調べると今度は地方裁判所にて話を聞きに行かなければならなかった。地方裁判所のある窓口でこちらが取れる対応策を教えてもらった。それは簡単にいうと相手の何らかの資産を差し押さえることができるということだった。
 大きな組織がたった19万円の支払期日を守らないことに自分は完全に腹を立てていた。初めは院長兼理事長のドラ息子が真っ赤なフェラーリに乗っていたのでそのタイヤを差し押さえることも考えたが、もっと法人のイメージを損ない世間的にも信用を無くす方法を思いついた。それは相手のメインバンクの口座を凍結することだ。
 地方裁判所に問い合わせると銀行名と支店名までわかれば可能だという。その法人がケチだったために従業員の給料の支払先口座を銀行どころか支店までを指定させていたことが仇になったのだ。

 こちらが相手の口座を差し押さえたことはさすがに法人に応えたようだ。差し押さえた当日、自分は地方に出張していたが朝から法人側から何度も電話があった。
 電話の着信回数が増えていく。しかも、その、着信間隔がどんどん短くなっていた。相手が焦っているのが丸わかりだった。自分は出張先での仕事が忙しかったこともあり、なかなか返信しなかったが夕方遅くにやっとこちらから折り返した。最後の着信に弁護士からの留守録を聞いたからだ。この録音を聞いたときがこちらの溜飲が下がった瞬間だった。
 折り返し先は弁護士ではなくて最初に何度も電話をしてきた男性の税理士にした。怒りを隠して彼も被害者であるかのように同情する素振りをしながら話を勧めた。何故、このようなことが起きてしまったかの理由をさり気なく聞いてみると次のような弁明を彼はしたのだ。
 経理の机に裁判所からの書類が埋もれていたと。その言葉を聞いても信じなかったが税理士を詰る気にもなれなかった。ただ呆れただけだ。
 もう、それも今から5年以上も前の話だ。