今日は昨日の記事からの続き。
hatehatehahaha.hatenablog.com
国道156号線沿いにある、郡上市の道の駅に車を停めた。駐車場内はトラックと自家用車が数台ずつ。
駐車の場所は選びたい放題だったので、寝ぼけてもお手洗いに迷わずに行けてなおかつ、車に戻りやすい場所を選んだ。
車のエンジンを切ると晩酌をはじめた。発泡酒と缶チューハイで。
駐車場内に灯りはほとんどなく、TOILETの建物の明るさが際立っていた。
あとの灯りは表通りを過ぎていく、車のヘッドライトだけ。時折、通りからこちらへ車が入ってくると、明るさが増した。
以前の車に比べると、排気量が小さいことも影響しているのだろうか。インパネまわりが狭いので、食事をするのには狭かった。
次回の車中泊からはリアシートを倒すと広くなるカーゴスペースで食事をすることを決めた。
撮影会で知り合ったあるカメラマンが自分と同じ車を所有していて、車中泊をするのに小さなベッドテーブルを使用していることを教えてもらっていたことを思い出した。彼にならって、小さなテーブルを買い求めることを決めた。
食事をするのに暗かったので、ナイトポートレートを撮影するために購入したLEDライトを用意してくることも。
良くも悪くも夕食が済んでしまうと、することがなくなってしまうのが車中泊。
スキー板二組とスノーボードをずらしてベッドメークをはじめた。エアマット上に寝袋を敷けば完了だ。
その寝袋に包まったのは、20時前。
昨冬も何度かお世話になった寒冷地仕様の寝袋のために、寝ている間に暑さを感じるかもしれないと思っていたが、杞憂だった。寝汗もかかずに朝までよく眠ることができた。
目が覚めてお手洗いを済ますと、予定していたゲレンデに向かった。菓子パンと缶コーヒーをかじりながら。
昨日、向かったゲレンデはウイングヒルズ白鳥リゾート。
現状況では、鷲ヶ岳スキー場よりもリフトの稼働本数、滑走距離ともに劣っている。スノーマシンが古いこと、斜面が南に面していることもあって、雪質も前日に滑ったゲレンデと比べるとイマイチだ。
それでもウイングヒルズを選択したのには理由があった。経営にアルペンが関わっていることもあってか、スノーボードスクールの評判がよかったからだ。
スノーボードのスクールに入校したのは、初めてボードを履いたその日のみ。そろそろまた、プロのコーチから教えを請う時期だと考えたからだ。
だが、ゲレンデに到着してスクールの受付をすると、思いもよらぬことを言われてしまう。中級者以上のコーチングはコーチが不在のためにできないと。
予約の有無を聞かれたので、向こうとしては予約して欲しかったのだろう。
だが、こちらはいつ会社から呼び出しがあるかもしれない身。それほどの急用なんて、あるとは思えなかったが。
結局、スキーとスノーボードをただ滑るだけになってしまった。
鷲ヶ岳スキー場に滞在していた前日、会社からの連絡はなかったので、ウイングヒルズ滞在時にはすっかり油断していた。スマホの着信音も切っていた。 スキーからスノーボードに履きかえて何本か滑った後にスマホを見ると、11時過ぎに自社の営業から着信とショートメールを受信していた。『急ぎでれんらくもらえないでしょうか?』、と。
仕方がないのでゲレンデから駐車場の車まで戻ってから11時半前に折り返すと、営業はまず社交辞令を口にした。折り返しありがとうございます、と。
丁寧な言葉から逆になんとなく嫌な情報がもたらされるのではないかと予感したし、実際にその予感は当たった。
営業は次のように続けたのだ。会社の規定で1か月自宅待機になると、その月の給料が減ってしまうと。過去3か月の6割になるらしい。
そうならないためにも、すぐ現場に入れそうな現場があるので検討して欲しい、と。
現場に必要なスキルと自分のスキルのミスマッチや、現場が遠方であることもあって、まずは断った。期間が長期間であると聞いていたこともあって。
電話を切ると運転席のシートにもたれかかって、目をつむって考えた。自分も自社の対応をそれなりに想定していたし、最悪のシナリオよりは若干はマシだった。自分にとっての会社の最悪手は給料の半額支給だったから。
それにしてもこのタイミングで給料支払い条件をちらつかせて、自分にとって不本意な現場で働かせることを促してくるとは。
ある程度、感情を落ち着かせることができたころ、営業からまた電話があった。
営業曰く、現場への従事期間は来年の3月までなので、前向きに考えて欲しいと口にした。
自分も冷静に、詳細な現場情報を聞いてから判断したいと、答えた。
営業は面談の調整をしてから再度、連絡すると言って電話は切れた。彼の声は明るくなったが、自分の気持ちは晴れないままだった。
気分を切り替えたかったので、すぐにゲレンデに戻った。
たまたまリフトに同乗しようとした男性のスノーボーダーは、疲れていたのがリフト乗車時のスケーティングで見て取れた。自分より、一回り以上は年長であることも。
クワッドリフトがワイヤーに乗って加速してすぐ、歳上のボーダーに話しかけていた。会社から急ぎでの連絡があったことを。
彼は自分の表情から何かを悟ってくれていたのだろう、きっと。自分の話が切れると、次のようなことを言ってくれた。
現役時代は会社からはしょっちゅう急かされたと。今振り返ると、そのほとんどはどうでもいいことばかりだったこと。本当に急ぎの用なんてどれくらいあるのだろうか、とも。
彼の言動に自分は癒された。見ず知らずなのに、たまたま同じ日に奥美濃のゲレンデで、ただ出会っただけの彼に。
いつの日か自分も彼のように、見ず知らずの人の愚痴を聞くだけでなく、優しい言葉をかけることができる人間になれるのだろうか。
久しぶりに大人らしい大人に出会った気がしている。