淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。広く浅く、そして薄い視点で気楽に書いてマース。

10年間続けていることを手放すと告げた日

 先週週末の土日は友人と泊まりがけで雪遊びをしていたので副業先であるラーメン屋を休んだが、今週の日曜日は2週間ぶりに出勤した。
 その間に自分の中での考えや価値観が変わり、いくつもの決意を固めていた。そのうちのひとつは副業先のラーメン屋を退職することだ。

 そのラーメン屋で働くことになったきっかけは、リーマンショックだった。自分の境遇は見事に時代の流れに流されてしまった。時代を見抜く力だけでなく、いろいろな意味で自分の力が足りなかったからだろう。
 30代のど真ん中の年の瀬のある日に、ラーメン屋で働くことを決意したのだ。

 リーマンショックの濁流が穏やかになるにつれて、自分の境遇も少しずつ好転しだした。本業であるシステムエンジニアで定期的に仕事が出来るようになった。派遣社員から正規雇用へ身分が代わり、一時は久しぶりに上場企業の社員にさえなることができたのだから。

 ラーメン屋で働き始めたころは、仕事と収入がないことが妻に対してばつが悪くて、お店に頼まれれば週末、平日、昼と夜問わず働いていたことが今となっては懐かしい。
 働き始めたころの時給は確か900円。自分が働いている間に、平均時給が150円上昇したのと、能力給が10円加算された今の時給は1,060円だ。
 10年で平均時給の150円と能力給10円の上昇をどう思うかは、人それぞれかもしれないが自分としてはどちらもいい加減に決まった気がしてならない。

 平均時給はある時にパートアルバイト全員が一斉に150円一気に上がった。何故、一気に150円だったのかは不可解だった。時給が上がったことは、ほとんどの人にとってデメリットは少ないが、物事を理屈で考えてしまいがちな自分にとっては、今となっても引っかかったままだ。
 自分の能力給の10円の評価も謎のままだ。何年前に上がったかも、覚えていない。
 もっというならば、フリーターをしていた20代のころから能力給というものに対して不信感を持っていたからかもしれない。

 人が人を正当に判断なんかできるわけがないと、若い頃から確信を持っていたからだ。その考えは今までずっとぶれていない。
 有期雇用でも無期雇用の立場の時であっても。勤務先が会社法人であっても、他の形態の法人であっても。
 その考えから実力主義を信奉する人々や、その考えを取り入れている組織に対して、どうしても好意的に見ることを自分はできない。

 ラーメン屋で働いている10年の間に変わった外的なことは、いくつかある。ラーメンの代金が550円から600円に値上がりしたこと。
 当時社長だった創業者の息子が、父親から見限られて社長の座から追われたこと。その後は、嫁に嫁いだ長女が専務という肩書きで会社の陣頭指揮を執っている。
 2人いる社員のうちの1人が出世し、店の責任者になったことだ。店の従業員の中で出世した本人以外全ての人が、もう1人の社員の方が仕事も、人望もあることが共通認識となっているのに。

 一番変わったのは、客層かもしれない。カウンターしか無いラーメン屋で、当時は禁煙時間すらない状態だったこともあり、入店客のほとんどは男性だった。若い女性や家族連れの入店は、かなり少なかった。
 だが、時代の流れが一番大きかったとは思うが、ラーメン屋を経営している会社自体の方針も、少しずつ変わったことも少なからず影響しているだろう。

 ひとつはカウンターにティッシュペーパーが置かれるようになったこと。希に今でも、人気店と皆に認知されているようなお店でも、ティッシュペーパーが置かれていない店があるのが、不思議なくらいだ。
 ディッシュが置けないほど、原価率が高いと思えるようなメニューの値段が設定されているように思えないのに。

 もうひとつは、店内の禁煙だ。ある時に11時の開店から15時までが禁煙となった。その後しばらくすると、終日禁煙が決定した。
 煙草を吸わない自分にとっては、働きやすくなって良かったが、煙草を吸わないお客にとってもこの方針転換は大きかっただろう。カウンターで隣の客の煙草の煙は、場合によっては喫煙者でも気になっていたのではないか。

 そのふたつの影響からか、自分が主に働いていた週末や祝日の日中の客層は、家族連れや若い女性のグループやカップルが増えた。若い女性の1人での来店も特段珍しくないほどだ。
 時代のせいか、家族連れの財布の紐が堅くなりがちなのは理解できる。それでも、できるものなら楽はしたいのは人の性。
 夫婦と小学生低学年までの子供2人の4人までなら、大盛ラーメン二杯、1,400円で家族全員のお腹が満たすことが出来るのは、子育て世代にとっては魅力的なのだろう。
 だが、自分は娘に働いているお店のラーメンを食べさせたことはない。

 仕込み中に、自分が好意的に思っている出世していない社員に対して、自分の思いを告げた。今月末は、ラーメン屋を経営している会社の代表者と雇用条件を取り交わすタイミングなことも、自分は鑑みてのことだ。
 社員は気持ちよく了承してくれた。今までに何度か辞めることを匂わせたことがあったが、その度に留意されて自分も思いきれなかったことが、今となっては少し懐かしい。

 10年続けてきたことを何故手放すことにしたのか。まだ今は、はっきりと上手く説明できない。新しい何かを掴みたいと考えていると、しか。