初めて訪れたアウトレットは予想通り全く興味を持てなかった。妻とまだ会話があったころ、彼女が自分と一緒に行きたがらない訳がすぐに理解できた。
女子高生が2人、制服姿のままでタピオカを飲みながら歩いていた姿に惹かれたくらいだ。
アウトレットモールの敷地をすぐに出て、海沿いを明石海峡大橋に向かって歩いた。
所々で釣り人が釣り糸を垂れていた。アウトレットモールよりも、彼らが何を釣ったか、何を釣ろうとしているかの方が気になった。
はっきりと見えていた明石海峡大橋を目指して歩いたが、橋の袂までなかなか辿り着かなかった。いつの間にかうっすらと汗をかいていた。 のんびりと歩いていたせいもあって、30分近くは目的地までかかっただろう。目的地とは明石海峡大橋の車道通行部の下部に設けられている、舞子海上プロムナードへの入口だ。
入口で250円支払って入場した。エレベータで上がってすぐに、カフェが目についたので休憩することにした。
革靴にスーツ姿で、初夏の陽射しを浴びながら結構な距離を歩いたので、座りたかったからだ。
ソフトクリームを注文して食べはじめると、隣のテーブルの会話が気になりだした。隣のテーブルには20代のカップルが座っていたからだ。
オーシャンビューのカフェには自分がソフトクリームを食べているよりも、彼らがお茶を飲んでいる方が似合っているのは明らかだ。自分はここで、何をやっているのだろう?
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「海上47mの丸木橋」も味わったが、特別な感慨を抱くことはなかった。プロムナードを一回りすると、躊躇することなく、JR舞子駅に向かった。神戸を後にして、大阪に向かうためだ。久し振りに難波に立ち寄ることを決めていた。
改札で大阪駅まで早く行くための方法を聞くと、先に来る普通電車で神戸駅まで乗り、神戸駅で後に来る快速電車に乗り換える方法を勧めてくれたので、その言葉に従った。
大阪駅に着いた。大阪駅からは地下鉄御堂筋線で難波まで向かうつもりでいたが、そのルートで行くことが正しいかをJRのホームで確認しようとして、スマホを取り出すとメールが一件届いていた。送信相手は、看護部長だった。
自分が帰った後に、彼女自身が自分の給料について事務長に掛けあってくれたことが、書かれていた。そのおかげで、なんとか10万以上は上積みされることも。
釈然としない気持ちも抱いたが、そこまで看護部長にさせてしまったことも気になった。
大阪で一番混雑する御堂筋線に、夕方のラッシュ時に乗車することになったが、考えていたよりはマシだった。かろうじて、18時前だったからだろうか。
本町駅に近づくと多少の感慨深さを感じた。かつて、勤務していた上場会社の本社が近くにあったからだ。何度か本社にも訪れたことがあった。
その会社に所属していた時に父が亡くなったが、もう既に5年ほど前の話だ。
本町駅は、乗車した梅田駅から降車予定のなんば駅のちょうど真ん中。心斎橋駅の次が、なんば駅になる。
新大阪駅から新幹線に乗らずに難波まで向かったのは、あるものを買うつもりだったからだったが……。(つづく)