淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。夜遊び、芸能ネタ、日常的なことから社会的なことまでを、広く浅く、そして薄い視点で書くので気楽に読んでください。

美女ではない課長に関わることよりも

 現場の右隣には女性エンジニアが座っている。彼女の年令は自分と同じか少し下ではないだろうか。身長もやや下だが、約180㎝の自分と比較してなので、女性としては上背がある方だろう。正確な体重は知らないが、体脂肪率の差はぶっちぎられているだろう、きっと。

 ちなみに彼女の容姿は自分のタイプではない。自分の左隣に座っている男性エンジニアは彼女のことが内外面とも好きではないようだ。
 彼女が自分越しに彼に突っかかっているのを、度々見せつけられているから、それも納得できる。
 彼と最近はランチを一緒に食べることが多いので、どうしても彼女の話になることが多い。下請けのエンジニアからしたら、元請け社員のことを愚痴るのは、ありふれたことだし、当然のことだろう。

 昨日のお昼休み、彼と食事先に向かうために道路を歩きながら会話していた時のことだ。彼女の自社での役職のことを彼は教えてくれた。どうやら、課長らしい。
 彼はどこでそんな情報を仕入れたのだろう? この業界で数十年も働いていれば、そのようなことに関心を払うのはある意味では、当たり前なのだろうか。自分はまわりに対して、関心を払わなさすぎるのだろうか。

 それでも、彼女が課長なのにはすぐに納得できた。ユーザー企業からの二次受けすることが多い規模のベンダー企業では、彼女のような立ち振る舞いをしないと出世できないと考えているからだ。
 説明していないことばかりか、口にしたこともないようなことでも、部下や下請け会社のエンジニアに対して、さも伝達済みであったように振る舞う彼女。
 空気を読み、自分の立場を忖度するような日本人らしい組織人であれば、そんな彼女の態度にも甘んじて従うだろう。
 そのようにして、彼女は責任を他人に押しつけて、成果を他人から奪いながら、会社員として生き抜いてきたのではないだろうか。
 そんな彼女の虚栄心に昨日初めて、自分は被害を受けた。

 彼女からある資料を渡されて読みほどいて欲しいと言われたことが始まりだった。
 その資料とは、自チームで新しくリプレースすることが決まっている現行システムの一機能を調査したものだった。
 資料はExcel形式で、何枚ものシートで構成されていた。その中で印刷範囲が適正に設定されているシートは一枚もなかった。この資料の作成者が他人に読んでもらうことまで配慮して作っていないことは、そのことからも明らかだった。

 依頼されてすぐに、課長から言われた。わからないことがあったら聞いて下さいね、と。彼女の常日頃の言動から、その言葉を真に受けることは無かったが。
 その資料に目を通し始めると、すぐに気が重くなった。何がなんだか、さっぱりわからなかったからだ。彼女も軽く目を通してはいるが、似たような印象を持ったので自分に仕事を振ったのではないかと、思えた。

 それでも、投げやりにならずに自分なりに方針を立てた。シートの中で重要そうなものは全て印刷してから、目を通すことにしたのだ。わからない箇所だらけだったが、繰り返して目を通して、関連性がありそうなところを赤ペンで書き込んでそれぞれをマッピングし、不明確なところに書き込みと付箋を貼りながら、整理して読み続けた。

 数時間後、この資料の作成者が何を持って何を調査したのかがある程度、はっきりした。とういうか、自分なりに他人に説明できるまで読みほどいたので、かなりのレベルまで理解したという自負もあった。
 余裕が出てきたので少しゆったりとした気分でコーヒーを飲んでいると、課長は自分に言ってきた。わかったことを説明して欲しいと。自分が二つ返事で了承したら、彼女の表情が少し変わった気がした。今、振り返ると自分が感じたその気配は間違っていなかったと、思う。

 自分が課長に説明する直前になって、いきなり次のようなことを言い始めた。せっかくだから、他の自チームメンバーにも聞いてもらう、と。
 彼女の意図は自分を少し凹ませて、自分に対しての優位性を他のメンバーに見せつけたかったのだろう。
 ただ、それでも自分は不思議なくらい慌てなかった。必要な資料を必要な分を印刷して準備できた。

 メンバーに説明を始めた。即興にしてはストーリーの組立て方も良かったし、説明する情報量を最低限にしたこともあって、聞き手はかなりわかり易かったはずだ。
 しかも、重要な箇所は課長に話を振って、自分の理解との認識にズレが無いかも押さえながら、説明を続けた。

 説明が終わりに近づくころ、まわりの空気を自分が完全に支配していることに気がついた。話しはじめたころと、メンバーが自分を見る目が完全に変わっていた。昔の自分に似ている、『マスヲJr.』ですら納得しているように見えた。
 だが、ここで大団円とはならなかった。課長が自分に対して、しょうもない揚げ足を取りにきたからだ。

 彼女は話題を変えて、来週からは自分が何をすべきかを聞いてきた。そんな話、今まで少しも聞いていないし、匂わされてもいないことだった。
 心の中で舌打ちしながらもアドリブで返すと、彼女は一気に畳みかけてきた。
 腹は立ったが大人しくしている方が良いことを察したので、彼女の言うままにしておいた。

 それでもその後、グループメンバーが自分への接し方が、明らかに変わったのがはっきりとわかった。
 そのことから考えると、課長から最後に自分が言われたことは、他人から見ても違和感を覚えたのだろう、きっと。

 彼らばかりか、美女課長が昨日から仕事のことで、自分が何を一番に考えているかは、知る由もないだろう。
 実は、ある会社から誘われていて、自分が迷っていることを。その返事を連休明けの火曜日しなければならないので、考えることができる時間は、あまり多くない。
 美女ではない課長とこのまま仕事を続けるかを、長くは迷っていられないのだ。

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今日の写真のモデルは柊七海さん。ナゴヤオートフェスティバルにて。