通勤電車で今朝もかつらをつけている男性に会った。その男性を以後、かつら男と呼ぶことにする。
かつら男の見ためは50代から60代。かつらだというのも、自分の推測だ。髪型と髪色があまりにも不自然なため、見ているだけで吹き出しそうになるほどだ。
今の現場になってから、かつら男を朝の通勤電車で見かけることが多い。
亡くなった父親は円形脱毛症だった。中年になったころには、アントラーズとヴェルディでプレーした元サッカー選手のアルシンドのような髪型になっていた。
年齢を重ねる毎に全体的に髪は薄くなっていったが、禿げ上がるところまではいかなかった。
それに対して義父、妻の父親はハゲの部類に入るだろう。自分が結婚のために、義父に初めて会ったときから髪の量はほとんど変わっていない。
子供のころから、かつらだと思われる不自然なオッサンを見つけると、囃し立てる奴らがまわりに何人か居た。自分の妻も、街中でそのようなオッサンを見かけると、かつらかどうかをよく口にしていた。
だが、自分は最近まで他人がかつらを使用していようが、まったく関心がなかったし、髪型が不自然かどうかも判断がつかなかった。
格好つけるわけではないが、そんなことを気にする人間に軽い軽蔑さえ覚えたほどだった。
また、オッサンというジャンル、性別と世代に分類されるカテゴリーに入る人たちに対して、興味を持てないでいた自分。
ところが、最近はオッサンたちに目が行ってしまう。自分がオッサンになったことが、おそらくは理由のひとつだろう。
最近になって、やっと人の不自然な髪型を見て、かつらかどうかの判別がつくようになってきた。
昔の自分から軽蔑されるような1人に、自分もなりつつある。
髪が寂しくなってきた男性は何故、かつらを使用するのだろう? 見た目を気にするのはわかるし、まったく気にしないよりは良いとは思うのだが、気にするポイントが違っているような気がするのは自分だけだろうか。
髪が薄いなら、薄いなりに似合った髪型があるとは思うのだが、どうだろう? 男らしく丸刈りでも全然おかしくないと思うのだが。
むかし、妻に言われたことがある。頭の形は悪くないのだから、禿げてきたら髪を短くするように。
他人から簡単にかつらだと思われるような安いものを身につけるくらいなら、高価かもしれないがかつらと見分けられない高品質なものを使用するか、植毛したらどうだろうか。どれくらいコストがかかるかは知らないが。
今朝は雨のため、通勤電車は混み合っていた。そんな中でもかつら男はしっかりと存在感を示していた。
余計なことかもしれないが、かつら男は腕時計や靴などの部分的なおしゃれには拘っている。
自分から見たら、疲れたスーツやぽっこりと出ているお腹と、それを支えているベルトの方が気になって仕方がないのだが、本人は気にならないのだろうか。ダサいサスペンダーを使っていないだけ、まだましか……。