朝から晩まで丸一日、娘と二人きりで過ごした昨日。
遠方にでも出かけないかぎり、娘が自分と会うときは自分の母親とも会うことが多い。よくあるパターンは午後の遅い時間に女同士二人でスーパー銭湯に行き、そのまま自分と弟を加えての男女二人ずつの計4人で一緒に夕食を食べることだ。
だが、昨日はそのパターンにならなかった。娘はおばあちゃんに会えないことを少しがっかりしていた様子だったので、妻の実家に送る前に電話で少し会話をさせたら、猫を被ったような声を出していたのが微笑ましかった。
最近、マスヲの母親は日曜日には家に居ない。もっと言うと、平日も含めて家に居ないことが圧倒的に多くなった。
実は、習い事から発したことを仕事にし始めたからだ。母がどれくらい前にそのことを習いだしたのかはっきりしないが、そのことを聞いた時には長続きしないと自分は高をくくっていた。というより、母の性格というか行動力をすっかり忘れていた。 我が家で一番行動力があるのは、自分ではない。上場会社に勤めていたのにその会社から離れ、自営としてエンジニアを続けた父親でもない。実は、母なのだ。
そのことについては亡くなった父親でさえ、おそらく同意してくれるだろう。
母が初めて海外に出かけた年令は今の自分くらいだった。彼女にとって初めての海外はタイだった。
その時の経験は彼女をかなり、興奮と感動をさせたのだろう。
それからしばらくは、何かにつけてある家族二人に対して海外に行くことの意義を熱く語ることが多くなった。その二人の家族とは、海外に行ったことがなかった父と弟だった。
それからは積極的に海外旅行に出かけるようになった。
偶然なのか遺伝の影響なのかはわからないが、いくつか自分と同じ国にも足を運んでいる。すぐに思いつくだけでもタイ、トルコ、ベトナムなどだ。
母が家族を驚かせるような行動は他にいくつもあるが、その中でも一番は、歳をとってから車の運転免許を取得したことだろう。
自分の運動神経が悪いのは、母の影響を多分に受けているからだと思う。父は身体を動かすことは好きではなかったが、運動神経自体はそれほど悪くはなかったが、母は逆だ。行動力があるためか、動くことは好きなくせして運動能力が優れているとは、お世辞にも言えない。それでも、自分よりは遙かにマシだとは思うが
そんな理由で母親が自動車の教習所に通うことを家族全員が反対したし、誰もが免許は取得できるとは考えていなかった。当時の母が50歳を過ぎていたことも考慮して。
だが、自分たちの予想は見事に裏切られた。結構な時間はかかったが、母は見事に運転免許を取得したのだ。
免許を取って母が車を買ってからは、父と弟は少しずつ態度を変えた。母の運転に頼るようになったのだ。特に父は車の免許を持っていないことも理由だっただろう。
母が今、仕事としているのは占い。しばらくの間、習っていたことも。彼女によると、手相と誕生日から占うらしい。
母の見立てによるとここだけの話、弟の結婚は難しいらしい。仮に結婚できたとしても、まわりがびっくりするような相手になるのだとか。
彼の恋路の先には、何が待ち受けているのだろうか。