根明なくせに、口にする言葉はネガティブで愚痴っぽい。
自身のことを一言で評すると、そうなるだろう。
素敵なことは一瞬で通り過ぎるだけでなく、出会える機会もわずか。
対して多くの煩わしいことに対峙し続けていかなければならないのが人生だと、頭ではわかっているが感情では理解できていない。
自分がイラついている原因を他人が見れば、笑ってしまうようなことも多いだろう。
他人のストレスの原因を聞かされたりすると、逆に微笑ましかったりすることも多い。 自分が気づかないでいた、このごろのストレスになっていた原因をひとつ見つけた。
日々の暮らしで負担に思っていたのは自炊だった。自分自身へ食事をもてなすことに嫌気が差していたのだ。
結婚してから気がついたことだが料理が好き。
妻は料理が得意ではなかったこと、仕事からの帰りが自分よりも遅いことが多かったことが理由で、自分がキッチンに立つことが次第に多くなった。
祖父祖母と同居していたのにも関わらず、包丁を握ることには意外と抵抗がなかった。不器用なので包丁が上手く使えているかは別にして。
調理をするだけでなく食べることも好き。
だが、コロナの感染に気をつけるようになってからは、外食の数が減った。在宅勤務になってからは、より一層に。
毎日毎食、自分で食べるものを自分で作り続けた。疑問に思うことはなかったが、そのことに対して気づかないうちに疲れていたのだろう。
今の現場には社員食堂があった。食堂の広さ以外はよい印象を抱いていた。
篠原涼子が主役を務めている人気ドラマの話ではないが、よその会社のお手伝いにいく自分のような立場だと社員食堂を利用しても、値段が差別されることは一般的なのではないか。
自分と同じ世代の男性で、毎日のようにキッチンに立っている人はどれくらいいるのだろう?
独り暮らしの経験がなく、親元に住み続けたままで結婚したら、台所に立つ機会はほとんどないだろう。
親や妻が不在な時、体調が優れない場合でもそんな場面は多くはないはず。
毎日、毎食でなければ外食しなくてもコンビニですぐに食べるものを買ったり、デリバリーを頼めばしのげる。
料理をすることが億劫になっていることに気がつけたことだけでも、よかった。
美味しいものを食べるのが好きである自分に、少し我慢させればよいのだから。
数日前に美味しいチャーハンを食べたいと思ったが、ずっと我慢していた。作るのが面倒だったからだ。
それでも今朝になって意を決した。チャーハンを作ることを。
冷蔵庫にあるもので作ろうとしたら、レタスチャーハンになってしまった。
チャーハンの中ではあまり好きではないが、作ってみたら思いの他に美味しかった。
食べることにうるさい自分が調理をした自分に対して、久しぶりにねぎらったような気がした。