淡白マスヲのたんぱく宣言 

40過ぎのおっさんのエッセイ。昨日より、今日見たことや感じたことを毎日書きたいと思っています。

久しぶりにスーツを着て出かけよう

 朝食後の先ほど、あることを調査した。
 自分宛てに届いた年賀状のお年玉当選番号。20枚ほどなのですぐに確認できた。はずれ番号ばかりだったので、より早く。
 いよいよ自分ののんびりした冬休みも終わりの兆しが見えてきた。

 今日の午後からは次の現場の面接を受けることになっている。しかもふたつの現場の。それ以外の現場候補の情報もここのところは毎日のように会社からメールで送られてくる。
 自社の上司が焦っているのを感じるが自分は動じていない。自分は自分の出来ることをするだけだからだ。身の丈にあったことしかできないのだから。

 上司には上司のできることをして欲しい。最近、外部に出している経歴書の年齢が間違っている。指摘したが相変わらずだ。
 また、現場が変わるたびにこちらで経歴書に加筆させる。上司だったら部下の状況を把握しているのが当然。だったら、彼が自分の経歴書に手を入れるのが筋だと思っているのだが、どうだろう。何も知らないのだろうか。
 入社する時には現場は名古屋市内であることを約束したのだが、送られてくる現場の中にはそれ以外のものが増えている。会社の約束は、どこでもおざなりになるものなのだろうか。

 自社で元役員で上司だった人に聞かれたことがある。現場での面接でどんなことを聞かれるのかを。
 徹夜は何日まで大丈夫か、年下や女性がリーダーでも従えるか、品質と納期のどちらを重要視するかなどなど。
 今まで聞かれたことのいくつかを答えると彼は次のようなことを言ってくれた。そんな馬鹿馬鹿しいことを聞かれるの、と。

 彼は某NECグループのある会社に勤めていたが、社長と縁があって自社に役員として迎えられた。だが、社長とだんだん反りが合わなくなったらしい。ほぼ社長から追い出されるような形で退職した。その話も会社からは何の説明もなく本人から直接後日に聞いた
 彼には在職中に助けられたので、後日ネクタイを贈った。感謝を込めて。

 今日着るスーツをゆっくりと考えて選んだ。選んだスーツを着て面接に出かけよう。今日は朝から穏やかに晴れている。
 どんな人間に何を質問されるかはわからないが、そんなことはまったく気にしていない。
 久しぶりにスーツで街中まで出かけるので、友人とお酒のグラスを傾けることになっている。帰りのことを考えるとコートを持って出かけるべきかを今一番悩んでいる。

雨降って雪固まる?

 今日、ホームである野麦峠スキー場にかけてきた。昨日、名古屋は雨。暖かったので標高の高い野麦でも雨によるゲレンデコンディションの不良のために休業していた。
 昨日のうちに今日の営業予定を電話で確認した。営業する予定だが、リフトやゲレンデコンディションの確認のために朝の立ち上がりが普段より遅れる可能性があることを教えてくれた。
 安心して夜更かし、油断しすぎて寝すぎてしまった。お寝坊スキーヤーの復活だ。

 雨は上がり、すっかり陽が昇りきった8時前に出発した。
 年度末が近い平日のせいか道路工事が多く、片側の交互通行に規制されていたのも1箇所や2箇所ではなかった。
 おかげで着替えてゲレンデに立つと12時になっていた。もちろん寝坊した自分が悪いのだが。

 駐車場に見慣れた観光バスが3台停まっていた。名古屋近郊ではよく見かける鯱バスだ。だが、このゲレンデで見た記憶はなかった。
 リフト券売り場でゲレンデのパトロール係に話しかけられたので、来場している団体を聞くと名古屋市内にある私立の高校生だと教えてくれた。高校の名前を聞いてテンションが上がった。その学校が元々は女子高だったからだ。最近、共学になってはいたが。女子学生が多いのかを聞き返すと、自分の期待通りの返答はもらえなかった。男子学生が多いとのことだった。

 今日の野麦は空いていた。平日は空いていることが多いのだが、パノラマゲレンデから下部はほとんど滑走者を見かけなかった。また、高校生たちが帰ってしまうと、ゲレンデ全体も閑散としていた。
 だが、ゲレンデ全体のコンディションは自分が考えていたよりは良好だった。整地コースは全てきれいに圧接されて雪も締まっていた。昨日の雨の影響を感じさせないほどだった。おそらく今週末も素晴らしいコンディションで滑走することができるだろう。
 ただ自分は土曜日が通院、日曜日がバイトのために来場することは難しいだろう。その代わりに今日滑走しに来た。
 整地コースを一通り滑った後に不整地を滑りたくなってきた。不整地は昨日の雨の影響をかなり受けていることが考えられたが、滑ることにした。2級に合格して浮かれていたのかもしれない。
 ユリワリコースの入口からコースを見下ろすと自分の想像以上にテクニカルなコンディションだった。後悔しながらも突撃するとろくなターンもさせてもらえないうちに玉砕。クラストしている雪に沈むようにバランスを崩して転倒した。
 立ち上がって滑り始めるとすぐにまた転んだ。下部まで怪我なく降りてこれたのは幸いだった。

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クラストしていたユリワリコー
 帰宅してからTwitterを見ていたら、あるツイートが目に留まった。『Feeling Ski School』のディレクターのツイートが。
 彼でも苦戦したならば自分が雪だるまになっても仕方がない。スキーはやはり奥が深い。

何度でも何度でも 【バッジテスト受験記~SAJスキー検定2級~】

 今週の月曜日、今シーズン初のバッジテストを受験した。鷲ヶ岳スキー場で。
 恥を承知で正直に書くと、昨シーズン2級に5回挑戦したが全て撃沈していた。一番合格に近かったのは、きそふくしまスキー場で受験したときだった。大回りとシュテムターンは65点、小回り64点。

 ちなみに自分の運動神経及び体力レベルとスキー歴は以下のようになる。
 運動神経は限りなくゼロ。バラエティ番組、『アメトーーク!』の運動神経悪い芸人で笑いが取れるようなレベルだ。スキップもまともにできないが自転車には乗れる。反射神経が悪すぎて車の運転免許の実技ではかなり苦労した。
 高校の保健体育では実技での点数不足を期末テストで不足分を補ってなんとか毎年落第を免れたほどだ。

 体力は同年代の中ではある方だろう。アラフィフのデスクワーカーの中では際立っているかもしれない。
 週末は人気ラーメン店で10年以上アルバイトをしている。5時間以上立ちっぱなしで、特に忙しい時などは走り回らなければならないからだ。
 ちなみに30歳まではランニングを嗜んでいて、ハーフマラソンの最速タイムは1時間34分だと記憶している。

 スキー歴は長い。高校の修学旅行で滑ったのが最初で、覚えてから数年はシーズンに1回出かける程度だったが、20歳のころに自分の道具を一式揃えてからはシーズン毎の滑走日数は10日を超していただろう。
 結婚後は小遣い制になったために、シーズン毎にゲレンデに顔を出すか出さないか程度になっていたが、3年ほど前から再度スキーにのめり込みだした。
 スキー道具も独身時代のものを全て買い替えて、年間に15日ほどは滑っている。

 昨シーズンは複数のゲレンデで受験をしていたのにも関わらず、受験経験がなかった鷲ヶ岳スキー場で何故バッジテストを受験することにしたのか。
 自分のスケジュールが空いている中で1番早いタイミングでテストが実施されたからだ。
 そのために、シーズンオフにもウイングヒルズで人工スノーマット「PIS*LAB」で滑走したりしていたし、先週の金曜と土曜日に出かけたのも、この受験の準備のためだった。特にモンデウス飛騨位山スノーパークのスクール受講は。
hatehatehahaha.hatenablog.com
 この日ばかりはお寝坊スキーヤーも頑張って6時前には起床した。おかげで余裕を持ってスキースクールでテストと事前講習の申し込みを行うことができた。
 何度も訪れていたゲレンデだったがスキースクールの場所を当日に初めて知った。
 事前講習の受講は迷ったが、どこのコースでテストが行われるか分からなかったので受講することにした。結果的にこの選択も重要だったと思う。

 車に戻って着替えると、事前講習までに時間があったので2回リフトに乗った。今シーズンになってからはこのゲレンデのブナ平コースが気に入っているので、そのコースを滑った。
 事前講習が始まる10分前に集合場所に着き、ゼッケンを着けて時間を待った。
 まわりを見ると自分と同じ緑色のゼッケンを着けているのは他に1人だけ。その1人は髭を蓄えて白髪も自分より多かった。50代前半くらいに見えた。黄色のゼッケンを着けているスキーヤーも居た。おそらく1級受験者だろう。

 スキースクールユニフォームだろうと思われるお揃いのウエアを着た2人表れた。男性と女性が1人づつ。女性指導員が2級の担当だった。悪い気がしなかった。彼女は自己紹介で山形と名乗った。事前講習は彼女のお世話になることになった。

 今まで何人かの指導員にレクチャを受けたが、自分は女性指導員の方が相性がいいような気がしていたからだ。自分が女性好きなのは否定できないが、理由は理論ばかりの指導に偏らないからだ。
 スキーは理論的なスポーツだ。だからこそ自分が夢中になっている。だが、教えてもらう立場であれば理論的な指導ばかりされても、なかなか身につかないことも分かってきた。
 理論的なことをよりかみ砕き、時には感覚で説明してもらうことの方が重要であることも。

 早速、もう1人の受講者と3人でクワッドリフトに乗って移動した。リフト乗車中は髭の男性と山形先生が会話を進めていた。
 彼は2級の受験が初めてであること。小学校の4年生と2年生の子供がいることを話していた。そんなことを話しているうちにリフト降り場に着いた。
 朝から気持ちよく晴れていて風もあまりない。ゲレンデトップからの眺望も素晴らしかった。山形先生もテストには良いコンディションだというようなことを話した。

 早速講習が始まった。まずはシュテムターンから。本番の検定はレインボーコースの前半部分で実施されることを知ると、気が楽になった。小回りほどではないがシュテムターンにはそれほど自信がなかったからだ。
 申し込み順でゼッケンの番号が決められていたようだ。おそらく本番の検定はその番号順だと思うが、自分の番号は髭の彼より小さかったが講習内での滑走順は常に彼が先になってくれた。
 一通り説明を受けると彼から滑りはじめた。彼はシュテムターンをかなり軽く考えていたようで、驚いていた。自分から見ていても滑りがぎこちないのがわかるほどだ。ゲレンデ下部で先生からいろいろと指導されているのがわかった。

 先生が手を上げたので自分も滑り出した。2人が待っているところで停まると先生が助言をしてくれた。今日はゲレンデコンディションが良いのでターン開始時の開脚は足を上げなくても、ずらすように開いてください、と。
 少し戸惑った。昨年ある岐阜県の他のスキー場で受講した際にはSAJの岐阜県連では足をリフトすることになっていると指導されたからだ。今年から変わったのだろうか。
 だが、当日のゲレンデコンディションが良好だったので、ずらす方がターンが滑らかになりやすいので、滑りやすかった。

 残りのイーグルコースでさらにシュテムターンの指導と練習をしながら降りていく。第1クワッドリフトの降り場を通り過ぎるとボーダーが増えてくる。
 ラビットコースの入口で先生に続いて自分たちも停まった。大回りの検定はラビットコースの上部で行われるらしい。先生の説明が終わると彼から滑り出す。続いて自分も。
 先生からコースの後半は問題ないのだが、滑り出しの2ターンはもっと板に乗れるようになると良いとのことだった。

 ラビットコースを彼女に続いて降りていく。最後は小回りだ。自分にとって一番鬼門の。
 山形先生が注意ポイントを説明してくれたので、自分は注意深く聞いた。スピードは必要なく等速であればよいこと。雪煙を上げるようなイメージが大事であることを。
 彼に続いて自分も降りると、自分には有益な指摘がいくつかあった。ストックワーク、とくにストックの着く位置を身体から離すこと。ニュートラルになる時に足首が伸びてしまうこと。右のターンで時々身体の正対が崩れてしまうことなどだ。最後の点は先日のモンデウスで大森先生にも言われていたので、さらに気を付けるようにした。

 事前講習では結局第2クワッドリフトをその後2回乗り、同じコースを二回りした。先生が特に重視して指導してくれたのはシュテムターンだった。自分の滑りの変化はそれほど分からなかったが、彼の滑りが変わっていくのがわかった。
 リフト乗車中は相変わらず、彼と先生がざっくばらんに会話をしていた。2人とも地元の郡上市在住らしい。
 会話の中で特に面白かったのは、郡上市にあるスキー場を郡上市民が利用した際の料金の話題だった。子供はリフト券がいつでも無料で、親が同伴した場合は親のリフト券も1000円になるらしい。

 事前講習は受講者が2人だけのこともあって、滑走距離も思っていたよりも多くて疲れた。だが、過ぎる時間が早く得ることも多かった気がする。
 テスト本番が13時集合であることと集合場所を説明されて解散となった。
 自分は疲れたのですぐに休憩することにした。

 ゲレンデに来るときはしっかりとした食事を取らないことも多い。だが、しっかりとしたご飯ものをゆっくりと食べた。それでもまだ本番まではかなりの時間があったので、車で休むことにした。
 昨年のきそふくしまスキー場では検定前に練習しすぎてテスト本番、特に小回りの時には疲れ切っていたからだ。
 車でくつろいでいてもどうしても緊張してくる。何度受けても、だ。練習したくなるが我慢した。

 集合時間の10分前に集まると受験者全員がほぼ集まっていた。髭の彼はお昼時間に滑り込んだと話してきた。
 もう1人緑色のゼッケンを着けた若い男性も居た。2級受験に事前講習は必要ないから不思議ではないが。1級も2級も受験者はそれぞれ3人だった。

 時間になるとスキースクールのスタッフが4人出てきた。検定員の3人がそれぞれ自己紹介をした。その中には山形先生も含まれている。挨拶をしなかった人は女性だった。彼女はカメラを持っている。
 検定の順番が説明された。1級と2級と並行して行われることと、2級と同時に行われる種目が終わった後に再度1級受験者はリフトに乗車して、横滑りと不整地の小回りをテストするようだ。

 リフトに乗っているときに髭の彼が緊張していることを口にした。
 彼は午前中に3級から受験した方がよかったかな、と度々口にしていたことを思い出したので、自分は3級を受験して1回で合格していること。2級は今回の受験で6回目であることを彼に打ち明けた。駄目ならまた練習して受験するだけだということも付け加えて。
 そんな話をしている内にリフトはコースのトップに到着した。

 リフトを降りて指定された場所で検定員を待った。主任検定員が2級のシュテムターンから行うことと種目毎に滑走順をローテーションしないことを説明すると、山形先生があることを補足した。検定中の滑りを動画に撮影するので、どの種目もカメラ前で停止することを。
 検定員が降りていき合図を待った。どの種目も自分がいつも最初になることを考えていると余計に緊張してきた。

 検定員の手が上がったのでスタートした。後ろと周りを見てスタートしたのだが、女性ボーダーが後ろから自分のフォールラインに入ってくる。急ではない斜面のシュテムターンなので外向を意識してゆっくりと滑りたいのに。
 よりによって自分がイメージしていたターンポイントと彼女のコース取りが重なりそうになった。そのことを意識していたせいでターン1回の開脚ができなかったが、心を折らずにカメラの前まで滑りきり停止した。

 次に大回りの検定コースに移動した。コースはほぼ1級受験者と一緒だが、スタート地点が少しだけ横にそれていた。
 検定員が降りて行ったが、ひとつ疑問が残った。1級と2級のどちらが先に滑走するのかが。
 今までの経験からだと1級からだと思ったが説明がなかったからだ。2級受験者の2人に話しかけると自分と同意見だった。

 検定員の手が上がったので1級受験者のスタート地点を見守っていると、1人が滑り出したのでほっとしていた。
 基礎大回りなんてできない、カービングでもいいのかな、と午前講習を受けなかった彼が突然言い出した。
 いいんじゃない、と自分は答えていた。彼のシュテムターンを先ほど見ていたので、彼の言いたいことがなんとなくわかった。事情は分からないが訳アリで2級を受けているのだろう。

 1級受験者の滑走が終わるとしばらく間があったので、緊張してくる。手が上がったので滑り出す。朝1番に山形先生に言われたこと、モンデウスで大森先生に言われたことを意識しながら。
 シュテムターンとは違いそれなりの手ごたえを感じながら、カメラの前に停まった。
 シュテムターンと同じように1級受験者と一緒に残りの2人の滑りを見守った。
 圧巻だったのは、基礎大回りが出来ない彼の滑りだ。高速で切れたカービングターンを見せつけていた。1級の受験者たちよりも気持ちよい滑りに見えたが、ゲレンデ上部から見るのと下部から見るのでは差があるのだろうか。

 このころからトイレに行きたくなってきた。緊張のせいもあるかもしれない。緊張を少しでもほぐすためにも膝と股関節の屈伸をしながら小回りの検定コースに向かった。小回りのコースもほぼ1級受験者と一緒だった。
 1級の検定が始まった。カメラの設置してある場所、ゴール地点が事前講習で聞いていた場所と違った。もし、ゴール地点が彼らと一緒であればコース取りが斜面に対して斜めになってしまうし、真ん中にちょっとした荒踏みもできている。
 不安になって髭の彼に話しかけると、同じように不安に思っているのが伝わってくる。

 1級の滑走が終わってしばらくすると、カメラ係の女性が動き出した。それを見てほっとしながら順番を待った。
 今思い返しても不思議だが、何故か小回りは緊張しなかった。自分で自分に期待していないせいか、それともカメラの移動で安心したのかはわからないが。
 1級受験者の前で不格好に滑っているのだろうな、と思いながらも斜度の変化や雪質の変化を意識しながら等速と体の正対に気をつけながら。無様な滑りを映してくれているカメラの前で停まった。
 2人の受験者の滑りをトイレに行きたいのを我慢してみていた。カービングターンの彼は小回りでも切れていた。

 検定員から2級の種目が終わったことと、検定結果の発表時間と場所を教えてくれた。
 また、興味があれば1級の残りの検定種目を見学が許可されたので、トイレに行ったあとに見学する意思を伝えて、トイレに急いだ。
 トイレから戻るとリフトに乗り、1級が受験しているコースに急いだ。次は横滑りなので興味があったからだ。
 自分が見学できる場所に辿りついた時には、もう横滑りがはじまっていた。
 続いて不整地の小回りも見学した。気が付くと髭の彼はいない。彼も見学したいようなことを言っていたような気がしたのだが。

 1級の受験種目が終わると手持ち無沙汰になってしまった。まだ、結果発表までは時間がある。
 仕方がないので、今日の検定コースで検定種目の滑りをすることにした。
 まずはシュテムターンのコースから。リフト降りてボーダーを見るとどうしても先ほどの検定のことを考えてしまった。タラレバを。今目の前に滑っているボーダーはもちろん、彼女にも責任はないはずなのに。

 大回りと小回りのコースを滑って降りてくると、発表時間が近くなってきたので、指定された時間に向かうことにした。もう、1本くらいリフトに乗れたかもしれないが、駄目だったときには素早く立ち去りたかったからだ。
 指定された場所に着くと先客も何人か居た。その後もぽつりぽつりと受験者が集まってきた。
 するとスキースクールのスタッフがテレビと動画の再生機を運んできた。セッティングが終わると動画を再生しだした。

 覚えのあるウエアが映っている。最初の受験種目の最初の受験者は自分だったからだ。シュテムターンで滑っている。見守っていると確かに1回のターンで開脚は確認できなかったが、他人に見られて恥ずかしいレベルだとは思わなかった。
 引き続き動画の再生が続いていくと少しずつざわめきが目立ってきた。受験者によっては自分の動画をスマホで撮影している人もいる。
 まわりも気になりながら、動画を見ているとすぐに自分の大回りになった。見ていると確かに滑り出しの斜度のある部分でのターンは若干板への踏み込みが甘い気もするが、悪くない気がした。先生の言っていたような滑りだ。

 このころにはほぼ全ての受験者が集まっていた気がする。髭の彼も横に居たので、小回りだけは無様過ぎて見たくないと口にした。
 だが、当然動画は再生され続けているので、自分の小回りも映される。
 心の準備をして小回りを見た。自分の滑りに驚いた。悪くない。自分が思っているよりも特に下半身は柔らかく動いているし、一応小回りになっている。
 見ているうちにひょっとしたらという気持ちになってきた。

 気が付くといつの間にかホワイトボードが用意されていて、そこに印刷された何かが2枚掲示されている。
 遠くから見ると片方には先頭行の1箇所、もう片方には先頭行と最終行の2箇所に赤で何か書かれている。おそらく『合格』の2文字が書かれているだろう。
 どちらが1級で2級なのだろう。だが、見せつけられたあのカービングターンを思い出すたびに、自分のひょっとしたらが仮説に代わり、仮説が淡い確信へと変わっていく。
 動画の再生が全て終わるとスクールのスタッフに促されて、受験者全員がホワイトボードに近づいた。

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2級の判定結果
 自分の名前の行の最後尾に合格の2文字が書かれている。
 2文字を確認した後でもうひとりの合格者の種目毎の点数を見た。どの種目も加点があり、想像通りぶっちぎっていた。何度も自分の不合格な点数も見てきたが、彼ほどの加点を見たのも初めてだ。
 彼の点数は208、自分は195でギリギリだ。だが、この検定でもらえるバッジと合格証は一緒。彼はおそらくすぐに1級を受験して合格できるだろうが。

 スキースクールの受付で合格者の公認バッジ料を支払ってバッジと合格証を受け取った。
 スクール側の事務手続きは山形先生だった。笑顔の彼女に心を込めてお礼を言った。おそらく自分も笑顔だったと思う。
 彼女に自分自身の滑りの動画を見た印象を話した。いかにも2級の合格者らしい滑りだ、と彼女は答えてくれた。

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合格証とバッジ
 SAJのバッジテストの2級が受かったくらいでと思う人が多いだろう。
 だが、子供のころから鉄棒の逆上がりもまともにできないようなドンくさい子供が、そのままアラフィフになったオッサンであったことを汲んで欲しい。
 実際、自分以外に何度も2級に挑戦している受験者も出会ってきたこともある。

 江夏豊の著書を読んで感銘を受けたことがある。彼ほどの大投手であっても反省は成功したときにしないということに。失敗したときには悔しく客観的になれないのが理由らしい。
 誰に取っても自分自身を客観視することは重要だろうが、彼ほどの大投手でもだ。自分ほどのレベルの人間であればなおさらだろう。
 だから、自分自身を客観的に分析するためにもこの文章を今書いているし、書き残しておきたい。

 また、自分が合格できた外的要因にあるBloggerが書いた検定の受験記と対策が役に立ったこともある。彼とは違うがアラフィフの運動神経の悪いオッサンの駄文が、これからの受験者の役に立てば幸いだ。
 上記Blogger以外にもお礼を伝えたい人たちがたくさんいる。

 高校時代の修学旅行で一緒にスキーの講習を受けた人たち。その中の何人かは今でも友人だ。さらにその中の1人は、当時からかなりの腕前だったのにも関わらず、自分が信じられないような失敗をしても笑って見逃してくれていたからだ。
 彼らの存在が無ければスキーに対しての第一印象は決定的に変わっていただろう。

『Feeling Ski School』の関係者。自分のホームである野麦峠スキー場に開設されている特徴のあるスキースクールだ。彼らのおかげでスキーは楽しいという当たり前のことと、生涯スポーツに成りうること、そして、練習次第では当時よりも上手く滑れるようになるかもしれないということを思わせてくれた。

 きそふくしまスキー場の木曽福島スキースクールの加藤指導員と嶋田指導員。加藤先生には3級受験時の講習内で常に2級を目指すように助言してくれたこと。
 嶋田指導員は感性の鈍い自分にも様々な工夫した指導をしてくれた。できれば彼女の前で昨シーズン合格したかったのだが。

 濁河温泉の露天風呂であった67歳でテクニカルプライズを取得したと話してくれたシニアスキーヤー。
 シーズンオフはウイングヒルズで滑走することと、シーズンに入ったらモンデウスのスクールを受講することを助言してくれたからだ。
 彼のようになれるわけはないが、少なくとも彼の年齢まではスキーを楽しめるように歳を重ねたい。

 モンデウス飛騨位山スノーパークの大森指導員。午後からの半日だけの受講だったが、基本のボーゲンから2級検定種目のポイントまでをしっかり押さえて指導してくれた。
 男性指導員にありがちな理論と滑走の見本だけを重視するようなタイプではなかったこともためになった。

 友人の娘でもあり、自分の最年少のガールフレンドとスキーを教えさせてもらった友人。
彼女を初めて連れてきたゲレンデが鷲ヶ岳スキー場であることだけでもちょっとした運命を感じる。
 人に教えることで自分の滑りにも確実に良い影響があったことは間違いない。

 最後に自分の娘。スキーが好きでいてくれて一緒に滑ってくれるだけでも嬉しいが、昨シーズンに上記の『Feeling Ski School』を受講させたら見違えるようなプルークボーゲンを見せてくれた。
 そのおかげで股関節を中心とした下半身の柔軟性は必須であることが理解できたからだ。
 今月末に彼女と一緒に滑る予定になっているが、その日が待ち遠しい。

 2級が受かっても自分の中では驚くほどほとんど何も変わらない。趣味とはいえ、こんなに真剣に打ち込んできたのにも関わらず。
 だが、合格したからこそそれまでのプロセスを客観視できるはずだ。これからも。
 今、確実に言えることはスキーがやっぱり好きだということだけだ。

信州路へ 【飛騨・信州路の冬のひとり旅 その5】

 7時前に目が覚めた。体は少しけだるい。昨夜のお酒が少し残っていたのかもしれない。目覚ましのためにも朝風呂に入ることにした。少し熱めの温泉の効果もあって幾分身体も楽になった気がする。
 湯上り後、またベッドに入ってまったりとして時間を過ごした。

 時計を見るといつの間にか8時を過ぎている。今日は高山から安房トンネルを通って長野県に抜けて、ホームゲレンデである野麦峠スキー場で滑走する予定だった。お腹も空いてきたので、朝食も食べたい。
 ホテルは素泊まりのプランで泊まったので、朝食は着いていない。チェーン店の牛丼屋で朝定食を食べようと考えて、インターネットで調べると付近に吉野家すき家があることがわかった。

 着替えて車に向かった。外が寒いことはわかっていたので車のアイドリングをしておくために。
 ホテルの玄関から駐車場を見ると停車してあった車はほぼ白くなっている。自分の車を見るとフロントガラスに最近では見たことがないほどに霜が氷着している。
 エンジンをかけて何回かにわけて荷物を車に乗せた。チェックアウトを済ませて車に乗り込もうとしても、フロントガラスの視界は悪いままだ。
 ホテルの玄関先に用意してあった霜取り用のブラシでなんとか視界を確保した。

 ナビの目的地に牛丼屋をセットしてホテルを後にした。牛丼屋は国道沿いにあるが、ホテルのある市街地をなかなか抜けることが出来ない。
 昨夜飲み歩いている時とは違って、車も通行人も多く見かけた。陽が差しはじめているとはいえ、外はおそらく氷点下以下だろう。
 市街地の道をゆっくりと走ると、右手に車が多く停車している店を見つけた。気になったのでよく見るとうどん屋のようだった。車の出入りがあったので営業しているようだ。
 お酒を飲みすぎた翌朝のうどんはあまりにも魅力的過ぎる。車を駐車場に入れた。

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朝からやっていたうどん屋さん
 入店すると厨房やお客が食べている丼から湯気が上がっている。見ているだけでより空腹を覚えた。他の客の動向から自分の食べたい商品の食券を券売機で事前購入するシステムのようだ。
 迷ったが天ぷらうどんを選んだ。金額は410円。

 前の客を真似て厨房カウンターの前の列に並んだ。自分の番になったので、食券を女性の店員に渡した。彼女に尋ねられた。うどんでいいですか、と。自分は了承する。
 次々と先に注文していたお客の商品がカウンターに出されていく。お客は自分でそれを受け取ってお盆に載せて思い思いの客席へと運んでいく。
 先ほど食券を渡した女性店員と目があったので、気になったことを質問してみた。うどんの他に何があるのかを。彼女はきしめんそばがあることを教えてくれた。
そばも気になったが名古屋っ子としてはきしめんも気になる。次回、立ち寄ることがあったら今度はきしめんも食べてみたい。
 自分の天ぷらうどんが出来上がると窓側のカウンターに座って食べはじめた。コシの強さを主張するようなタイプではないが、朝食べるにはふさわしいソフトな感触だった。あっという間に食べ終わると、丼を返却口まで運んでから退店した。

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注文した天ぷらうどん
 市街地から国道に入ると気持ちよくドライブできた。車を走らせ続けると少しずつ歩道や裏道に雪が目立つようになっていく。
 丹生川を過ぎてしばらくすると国道にも雪が目立ちはじめた。スタットレスタイヤを履いてはいたが速度を落としてより慎重にハンドルを握った。

 ほおのき平スキー場の辺りまでくると一面は真っ白になった。このゲレンデが魅力的だと度々耳にしている。いつかは滑ってみたいと思いながらも通り過ぎる。このころから後続車に道を譲ることも増えてきた。
安房トンネルの入り口に差し掛かると歩行者の集団を見かけた。ツアー客だろうか。冬のこの時期にどういった目的で何を観光するために寒い中、歩いていたのだろうか。自分には見当もつかない。

 長いトンネルを抜けて長野県に入った。ここからは信州路。気が付くと車がめっきり少なくなっていた。時折、対向車とはすれ違ったが。上高地の入り口をかすめて国道158号線を進んでいく。
 乗鞍高原へ向かう道との交差点を通過すると、急に車が多くなってきた。道の積雪はあきらかに減っていたが、前が車で詰まっているためにペースが遅くなった。

 右手に梓湖が見えてきた。奈川渡ダムの3差路を右折して県道を走らせれば、野麦峠スキー場まではあと少しだ。この辺りからトイレに行きなくなってきた。
 しばらく行くと県道のバイパスに入り、その道路わきに地産の直売所があることを記憶していた。建物はまだ新しくお手洗いも綺麗だったことも。
 トイレを我慢しながらその地点を目指した。幸い県道に入ってからは車が減っていたし、道に積雪はほとんどなくなっている。自分が思うようなスピードで車を走らせた。
 バイパスに入るとさらに速度を上げて、トレイを目指した。松本市役所の支所を通りすぎるとあっという間に広い駐車場が右手見えてきた。
 駐車場には車が1台もいない。車から降りて建物に近づくと冬季は閉鎖されていることが掲示してあった。がっかりしながら車に戻る。

 諦めてスキー場の入り口にある『そばの里 奈川』のトイレに急いだ。ホームゲレンデに行くときにはほぼ毎回利用させてもらっているので、閉鎖はされてはいないだろう。
 県道のバイパスを急ぐと旧道に合流した。前に1台地元の軽トラが走っている。スキー場に近づくにつれて、道路わきの雪がまた少しずつ増えている。
 軽トラが脇道にそれた。だが、そのころの車道にはところどころ積雪している。慎重にかつ大胆に先を急いだ。
 なんとか『そばの里 奈川』にたどり着き、お手洗いを利用した。

 スキー場に到着すると10時を過ぎている。着替えてゲレンデに向かった。昨日、朝は雪が降っていたが午後になるにつれて少しずつ天気は回復してきたが、今日はどうだろうか。雲が広がっている。
 夕方に10年以上あっていない友人とお酒を飲むことになっているので、ゲレンデを14時には去ることを決めていた。

 昨日のスクールで教えてもらったポイントを確認しながら滑った。SAJのバッジテスト2級の検定種目を意識して。
 その中でも基礎パラレル小回りを重点的に練習した。昨日の半日の指導の中では練習のポイントと自分についている癖で修正した方がいいところを指摘されていたからだ。正直言うともう少しだけ、昨日の講義を受けたかった。自分が朝起きられなかったので自業自得ではあるのだが。
 昨日も真剣に滑ったのでオッサンの自分としては疲れている。しかも小回りは指導員で滑っていると疲れることも教えてもらったので、自分であればなおさらだ。

 12時過ぎに軽食を取ることを兼ねて休憩することにした。曇りがちな天気のせいもあって身体も冷えてきたからだ。
 コーヒーショップでパンセットを注文した。実は野麦峠スキー場の一昨年から営業をはじめたコーヒーショップは隠れたゲレンデの名物になっている。近隣のスキー場の客がわざわざコーヒー目的で訪れるという噂を聞くくらいの。
 実は自分はここのコーヒーを飲むのは今年初。今自宅では昨年この店で初めて味わった『ケニア』を飲んでいる。そのことを顔なじみの店員に話すと嬉しそうに、今日のコーヒーについてもうんちくを語ってくれたので、参考にしてコスタリカを注文した。

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本日のコーヒーの説明がされている
 一口飲むとやはり美味しかった。最近飲んだコーヒーと比べると次元が違う。豆だけでなくやはり淹れ方の技術も相当高いのだろう。
 パンを食べながら残りのコーヒーを味わった。ストーブで身体を暖めながら。

 胃も少し満たされたので、あと少しだけ滑り込むことにした。午後からリフトの乗車回数は2、3回だったと思う。
 13時過ぎにはゲレンデを後にした。ゲレンデ滞在時間は3時間ほど。今シーズン最短の時間だがそれなりに手ごたえも感じていた。ゲレンデ入り口近くにある日帰り温泉施設の湯船に浸かりながら。

 いつもと逆方向から野麦峠スキー場にアプローチしていたために、帰り道の積雪状況がわからなかった。スキー場は合併のために今は松本市になっていて、隣の木曽町との境界にある境峠は雪が積雪しやすく、道路状況が悪くなりやすい。
 若いころに友人が運転する助手席に座っていたときに、対向車との事故が起きたことも今となっては思い出のひとつだ。友人も自分もたいした怪我がなかったこともあって。
 駐車場で名古屋ナンバーの車で訪れていた人に話を聞くと、道路状況は悪くはないと言っていた。

 県道を進んで行くと車道の残雪が増えていく。境峠に近づくにつれて、慎重に車を進めた。つくづく価値観や感覚は人によって違うことを思い知らされた。
 なんとか境峠を越えた。ここからはようやく木曽路だ。まだ、安心はできない。たいていの場合、峠を降りるまでは松本市側よりも木曽町側の方が雪は多いからだ。友人の事故もこちら側だった。
 慣れているせいもあり、無事に峠道を降りきった。ここからはほとんど積雪もなく国道19線までも走りやすい。

 国道19号線を走行中、時折雪がぱらついた。もちろん積もるほどではないのだが。まるで誰かが何かを伝えているようでもあり、何かの演出でもあるかのように。
 中津川からは中央道に乗り、無事に家まで帰宅できた。友人との飲み会にも間にあった。

 この2日間で感じたことがある。今まで『旅』と『旅行』を自分では区別していた。その違いというのを上手く説明できないのに。自分の中での定義も曖昧だった。
 1泊の場合は『旅』になりえないと考えていたが、この2日間の行動を文章にしながら振り返ってみると、少なくとも『旅行』ではなかったと思う。
 その違いについての答えは明確にならないかもしれないが、これからも自分なりに探し続けていきたい。(了)

北酒場③ 【飛騨・信州路の冬のひとり旅 その4】

 天ぷら屋は先ほどまで居たおでん屋にくらべると、ひとまわりほどこじんまりとしていた。席はおでん屋と同じでカウンターのみ。先客は男性2人。離れて座ってはいたが何となく顔見知りのようだった。
 自分はその間に割って入いるように座った。熱燗と春菊とごぼうの天ぷらを注文した。

 店のオーナーの自宅は飛騨古川であることを話してくれた。雪のない時期であれば車で20分ほどのようだが、この店を出店してからは高山に部屋を借りて住んでいるとのこと。
 おでん屋の女将さんの真新しい割烹着と違って彼の白衣は油などで汚れていた。使い込んでいる証拠だろう。
 どちらの天ぷらもそれなりに美味しかったので、天ぷら屋の出店の経緯を聞くと特別どこかで修業したわけではないようだ。

 熱燗を飲み切ったころには自分でもかなり酔っているのを自覚できるほどだった。こんなところでまだ飲み潰れるわけにはいかない。熱いお茶とえびの天茶を注文した。天茶は他にも貝柱もあったのだが、こちらを勧められたからだ。熱いお茶がしみいる。

 天ぷら茶漬けができる間に、この辺りにキャバクラなどがないかを全員に尋ねた。はじめは芳しい返答がなかったが、店の主人が思い出すように店の名前を教えてくれた。ワンカラットという店の名を。客の2人も納得するように頷いていた。

 左隣に座っているお客が呟いた。男性で黒縁の眼鏡をかけている。この街はコンパクトで便利ではあるけれど何もないからね、と。
 彼の話をさらに聞くと、夫婦で東京から移住してきたとのこと。彼の希望ではもっと田舎に住みたかったようだが、彼の妻があまり田舎だと生活しずらいということで、高山市内の街中に住んでいるらしい。この街での暮らし自体は気にいっているようだ。

 茶漬けを天主がカウンターに置いてくれた。出汁と天ぷらのあいまった匂いに惹かれてすぐに箸をつけた。瓶ビール1本と日本酒を5合も飲んでいたせいか無性にご飯が美味しく感じた。あっという間に完食して会計をお願いした。
 会計が終わるとそのまま店の外まで自分を見送ってくれて、ワンカラットまでの道を詳細に教えてくれた。店が2F にあるために階段を登る必要があることまでも。

 高山の寒い夜の中、期待に胸を膨らませてワンカラットまで歩きはじめた。心なしか少し速足のような気もする。
 スマホで時間を確認すると23時近く。2、3分ほど歩くと看板が見えてきた。確かにワンカラットと書かれている。階段を登り店の扉を開けた。

 入口のボックス席に待機の女性スタッフが何人か座っていた。男の店員に促されてボックス席に座る。
 自分の目線には通路で隔てられたボックス席にはサラリーマン風の2人が座っていたのが映った。キャストの2人が彼らをもてなしていた。彼らを見て今日が金曜日であることを思い出した。

 自分に1人目のキャストがついた。残念ながら自分のタイプではなかった。ヒッティングゾーンは狭いわりに、ストライクゾーンが広いのに。
 彼女にウイスキーの水割りを作ってもらい、適当な会話で時間をやり過ごした。失礼かもしれないが、今思い返しても彼女の顔はまったく思い出せない。
 正面の2人の客が席を立って帰っていった。彼らを見送りながら水割りをちびちびと飲んだ。

 しばらくすると彼女は呼ばれて代わりに違うキャストが横に座った。
 彼女を見て一目で気に入った。白いドレスが似合っていた。彼女から受け取った名刺に目を引かれてしまった。5センチほどの大きさの正方形をしていたからだ。彼女の名前が書かれている。『AYU』と。

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AYUちゃんの名刺
 年齢を聞くと27歳だと答えてくれた。AYUちゃんに飲み物を勧めて会話を続けた。むかし、名古屋に住んでいて錦で働いていたことを教えてくれた。
 自分が毎日blogを書いている話などもしたかもしれないが、とにかくあっという間に時間が過ぎてしまった。

 本当なら延長したいところだったが、今回の旅行の目的はスキーのはずだ。明日も早めに出発してゲレンデに向かいたかったし、ホテルの門限も気になった。
 自分を納得させるようにチェックをお願いした。その間にLINEの連絡先を彼女に聞いたら教えてくれた。
 支払いを済ますと店の外に出た。
 
 酔っていることもあり、無事にホテルまで戻れるか心配だったが迷うことなく辿りつくことができた。近い距離だとは思うが、道に迷ってどうしようもない場合にはタクシーを呼ぶことも考えていた。
 帰り道を彼女に聞いていた気もするが、正直そのあたりの記憶はおぼろげだ。

 ホテルの自分の部屋で時間を確認すると日付が変わっていた。
 彼女に巡りあったおかげで今夜の飲み歩きは気分よく幕を降ろすことができたし、それ以上に気分よく眠りに落ちていくことが出来た。
 旅はまだ明日というか、はじまったばかりの今日もある。(つづく)

北酒場② 【飛騨・信州路の冬のひとり旅 その3】

 愛知県から来ていたカップルが去ったので、サラリーマン風の男性と店内は2人だけになってしまった。彼の歳は自分と同じくらいだろう。
 カップルから受け取った枝豆を一緒に食べるためにカウンターで寄りそって飲みはじめた。

 彼は自分から仕事のことを話し出した。お酒と食べ物とのコーディネートや商品開発などの仕事をしているらしい。仕事柄、アルコールへの造詣が深く話を聞いていると面白かった。日本酒に醸造用アルコールを添加することについての是非なども話題になったが自分よりも高いレベルの知識を持っているのだが、偉そうなところもない。

 カウンター内の女性店員に対して熱燗のタイミングについても話していた。日本酒は燗が頃合になると膨張してくるのだそうだ。徳利の上から見てもわかるくらいに。
 確かに彼女が燗をつけるのもどことなくぎこちない。聞くとこのお店は今日が開店だったようだ。そのサービスなのか燗酒を注文すると彼にも自分にも最初の一杯だけお酌をしてくれた。着ている割烹着が似合っていた。

 しばらくするとニット帽を被った私服姿の男性客が訪ねてきた。自分より少し年上に見えた。彼が店の引き戸を開け入ってくるときに目があったので声を出して挨拶していた。こんばんは、と。
 彼はびっくりしていたが一応、挨拶を返してくれてL字型のカウンターの端に座った。
 3人でぽつりぽつりと会話をすると自分と隣の彼が知り合い同士だと思っていたようだ。お互いが初対面だと知るとまたびっくりしていた。

 自分の隣の彼が会計を済ませて帰っていくと、入れ替わりに若いカップルが入店してきた。枝豆を話のネタに話しかけると彼女の方が積極的になってくれて、自分の隣に座ってくれた。
 地元の看護学校に通っている看護学生で彼女の方が先輩のようだ。2人ともまだ素面だと語っていたが、彼女のほうはテンションも高い。彼によると普段から天真爛漫らしい。
 2人は交際している訳ではないようで、彼女には別に彼氏がいるとのこと。後輩の彼には交際している女性はいないと教えてくれた。
 彼女たちの話を聞いているとニット帽のオッサンと度々目があった。なんだが気分が良さそうなのがわかる。

 引き戸を開けて若いスーツ姿の男性が入ってきて、ニット帽のオッサンの横に座った。
 彼の髪型がむかしの速水もこみちを連想させた。30代の前半くらいだろうか。街のせいか店のせいなのかはわからないが、何かが彼をダサく見せていた。

 自分の座っている後ろから音がする。振り返ると若い女性が引き戸を外から叩いている。自分の隣に座っている彼女の知り合いだろう。彼女は立ち上がり、店の外で二言三言話して戻ってきた。

 きっかけはわからないが、男女の友情についての話題になっていた。若い時には欲求が強いため男女の友情の成立が難しいと自分は思っている。
 そのまま口にはしなかったが、酔いながらも言葉を選んで話した。
 そのセリフをオッサン2人が納得して聞いているように見えた。彼女たちは力を入れて反論していたが。

 隣の彼女はこの前の店でアルバイトをしていたので、その後の店がどのような店なのか気になったのだろう。後輩の彼を連れて来たのかもしれない。
 彼女は店を見ることができて満足したのか、オッサンたちの酒の肴にされたことに辟易したのかはわからないが、帰っていった。後輩も一緒に。枝豆を見るとまだかなり残っている。

 ニット帽が独り言のように話しだした。妻と別居して1年半になること。娘が居て今年二十歳になるが別居してから会っていないこと。自分の隣に座ってくれた彼女を見て、娘を思い出していたことなどを、だ。
 会えばいいんじゃないですか、と自分は口に出していた。さらに自分も妻との関係を簡単に説明し、別居生活だけは自分の方が先輩であることも付け加えた。
 いろいろあるの、と彼は言った自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。もこみちはただ黙ったまま隣で話を聞いていた。
 別居当初はつまらない自分の意地で娘になかなか会わなかったことも話した。だが、今は最低でも月に1回は会うようにしていることも。
 自分の言葉を彼がどう聞いたかはわからないが、お手洗いに行くために席を立った。

 戻ってくると話題は変わっていた。彼ら2人は顔見しりのようだった。ニット帽はどうやら自営で仕事をしているらしく、もこみちは税務署勤なのもわかった。
 話は税金のことになっていた。時間は過ぎていくが熱燗を呑みながら食べている枝豆はなかなか減らない。
 彼ら2人に枝豆を託して河岸を変えることにした。この店のオーナーが数件隣でてんぷら屋をやっていることを聞いたからだ。
 それなりに酔ってきたが、まだ目的を果たせていない。今夜のミッションは達成できるのだろうか。(つづく)

北酒場① 【飛騨・信州路の冬のひとり旅 その2】

 昨日のblogを書いた後、パソコンでインターネット検索をした。キーワードは『高山』、『キャバクラ』と『ガールズバー』で。だが、それらしい自分の知りたい情報が出てこなかった。
 せっかく愛知県から他県に来たのだから、魅力的な女性に1人でも多く会いたいし、会話を楽しみたい。愛知県は男性からしたら結婚適齢期の男女比率が全国ワースト1だから。
 実は高山の市街地に泊まるのは初めてだ。名古屋からだと高山市内目的だけの観光だとどうしても日帰りになるし、他の観光地とセットで周る時はどうしても他の温泉街などに泊まることが多くなる。飛騨地方には有名な温泉が多いせいだろう。

 ホテルのフロントで街歩きの地図と辺りの様子を聞いた。ホテルから高山駅までは思っていたよりも近い。歩いても15分ほどのようだ。駅に向かって歩けば、自分が遊びに行きたいような店が見つかるかもしれないと期待してホテルを出た。
 ホテルの右手にはスナックビルがあり、正面へ伸びる通りには居酒屋が連なっている。灯りが点いていない店もある。時間は18時を過ぎたばかりだからなのか、営業を辞めてしまったのかわからない。金曜日なので定休日ということはないだろう。

 5分ほど歩くと雰囲気の違った場所に出た。屋台村のような感じのところに。いくつかの店があるが時間がまだ早いせいかお客のいない店の方が多い。自分が気に入るようなこれといった店がなかなか見つからなかった。
 ある角の店にお客が3人座っているのが見えた。おでん屋さんのようだ。寒い高山で熱燗を呑みながら温かいおでんをつつくのも悪くない。入店することにした。

 カウンター内で50歳くらいの小綺麗な女性が店を切り盛りしていた。とりあえずビールを注文すると口取りに数の子が出てきた。今年の正月は食べていなかったせいもあって美味しく感じた。おでんの大根とこんにゃくと串カツを注文した。自分はおでんを食べながら酒を呑むのが好きだが、この店のおでんは残念ながら特筆すべき味ではなかった。おでんを肴にゆっくりとビールを飲み干した。次に地酒の熱燗を注文した。銘柄は『山車』。

 自分以外のお客は1組のカップルとサラリーマン。カップルはあまり会話がなかったので、夫婦かもしれない。自分が駅の方に向かいたいので情報が欲しかったので話しかけた。彼らは駅の方から来たようだ。彼らも愛知県から来ていて、今日は高山に泊まって明日は白川郷に行くらしい。
 彼らは他の店に移るのか会計をお願いしていた。注文したつまみが一品食べきれなかったようで自分ともう1人の男性に託された。
 彼らが出ていくと自分とサラリーマン風の男性2人になってしまった。
 果たしてキャバクラかガールズバーに辿りつけるのか。まだ、高山の宵ははじまったばかりだ。(つづく)