八月最後の日になった昨日、電車を乗り継いで夏らしい場所に行ってきた。2時間近くも電車に揺られて着いた駅は内海。名鉄知多新線の終着駅だ。
子供のころは一年に一度、家族で訪れていた駅に大人になってから初めて訪れた。子供のころは海水浴のためだったので、訪れていた時期はいつも夏の盛りだった。
そのころの駅は家族連れでごった返していた。浮き輪など水遊びをするものを携えている人が多かったことを、なんとなく覚えている。
数十年ぶりに内海駅に降り立ってびっくりした。昔の面影がすっかり無くなっていたから。
だが、本当はなんとなく気づいていた。電車に乗っている時から、乗客が少なかったからだ。
ただ、子供のころの賑わっていた内海駅のイメージを大事にしたかっただけなのかもしれない。
月日が流れれば景色も街も、そして人さえも変わってしまうのは当たり前のことなのに、それを受け入れたくない時もあるのは自分だけだろうか。 改札を通ると、知っている顔が二つあった。二人とも自分よりも一回りくらい上のカメラマン。
自分が2時間も電車に乗って海辺の駅までやってきたのは撮影会に参加し、夏の終わりの砂浜でポートレートを撮るためだった。
集合時間までは30分近くあったので、しばらく二人と雑談をした。
その中で二人は一日中、撮影会に参加することを聞いた。後で知ったが、朝一番の部のみの参加のみと決めていた自分は少数派だった。
2時間もかけて90分だけ撮影して帰るよりも、1日中撮影した方が確かに効率的な気はしたが、1日参加だと3部の参加になるので、撮影会の料金も結構な金額になってしまう。
また、今の自分の集中力だと1日中の撮影は無理だろう。そのあたりはカメラマンによって考え方は様々だろうが、女性のポートレートを撮るのは非常に心身ともに疲れるのだ。心地よい疲れではあるが。
昨日、自分が撮影したモデルはMumeiさん。
彼女の事情で、今回の撮影会でモデルの仕事を一旦、休止することを表明している。だから、昨日は彼女にとって休止前の最後の撮影会になった。
自分は彼女を撮影会で写真を撮らせてもらったのは2度目。8月10日にナイトポートレートを撮らせてもらったばかりだ。
実際、その時のデータを完全に現像しきっていないので、写真をまだ彼女に渡せないでいる。
そんな状態なのに、またすぐにカメラ片手に海辺まで来たのには、それなりの理由がある。 海辺で夏の終わりを感じたかったこと。海辺でのポートレートを撮りたかったこと。そして、彼女の休止前最後の撮影会に顔を出したかったことだ。
時折、彼女だけでなく夏の終わりの海辺もカメラに収めた。今、その写真を見ていると、遠のいていく夏を家の中に居ても感じることができる。改めて、写真はいいとしみじみしながら。