昨日の仕事帰り、乗換駅最寄りのスーパーで買い物をした。スーパーを出ようとした時だった。顔を知っている人物が自分の前を通り過ぎたので、思わず声をかけたが通り過ぎようとしてゆく。再度声をかけても、自分に気づかない。声は決して小さくない方なので、今思うと気づかないふりをされていたのかもしれない。
最後は自分も向きになったので、近づいてさらに大きな声で話しかけると、振り返ってくれた。かつては友人だと思っていた、ひとつ年上の男性が。
彼とは自分がフリーターだった二十歳のころに知りあった。テレビゲームやスキーなど、興味のあることが共通することが多かったこともあって、すぐに打ち解けた。
彼は自分とも知り合ったバイト先で見初めた女性と結婚したので、彼らの挙式と二次会に自分は出席した。それどころか、新郎の友人代表としてスピーチもさせてもらったし、二次会の幹事と司会をしたほど距離感は近かった。
一時はそんな間柄だったのに、最後に会ったのは10年以上前。あることがきっかけで二人の間はすっかり冷え切ってしまった。
そのきっかけとは二人にとって恩人でもあり、友人でもあった人物の披露宴がきっかけだった。
披露宴を盛り上げるために二人で何かすることになったのだが、お互いに対した芸がある訳でもなかったので、無難なところに落ち着いた。新婦が好きだった嵐の歌をカラオケで歌うことにしたのだ。
自分はただ歌うだけで良いと考えていたのだが、彼はある提案をした。カラオケだけだと出席者の視線が、マイクを握っている自分たち二人に集中してしまう。視線を自分たちから少しでも反らすために、彼は動画を作ってカラオケの最中に流すことを提案したのだ。
一旦は自分も了承したのだが、あることでその提案に賛同できなくなった。そのあることとは哀しいかな、金銭的な事情だ。
自分たちがカラオケを歌うことになっていた会場は、東京ディズニーリゾートで有名なホテル、ミラコスタ。
動画を流すために必要なプロジェクターを借りるために必要な金額が数万円だったのだ。
正直、今だったら出したかもしれないが、そのころは妻に財布を握られて小遣い制だったために、その金額を出費することは難しかった。
そのことを彼に相談してもわかってもらえないばかりか、口論になってしまった。
結局、動画を流すことなくカラオケを二人で歌ったが、その披露宴からはずっと会ってなかった。
久しぶりにバッタリ会ったので、数十分二人だけで話をしたが、もう彼に良い印象を抱くことはできなかった。彼は自分の変化に驚いてはいたが。
一度噛み合わなくなった人間関係はやはり、元に戻すのは難しい。