秋分の日、台風の影響で風が強かった。そんな中、自宅最寄りの駅まで傘を差しながら歩いた。
駅舎に入る寸前でビニル傘は風で煽られてひっくり返り、ジエンド。骨が折れてしまったのだ。それでも、ついていないとは思えなかった。
祝日なのに、台風なのに出勤させるヤツが悪いと思っていたからだ。
三連休の最終日の朝、ホームは閑散としていた。ホームで待っていた電車も心なしか、のんびりとホームまでやってきた気がした。乗車すると、席は選びたい放題だった。
雨降りの日は、晴れの日に比べて通勤電車は混雑することが多い。昨日は無縁に思えたが、それも数十分のことだった。
乗り換えのために愛知環状鉄道のホームに上がると、ちょっと前まで漂っていたのんびりとした雰囲気は消え去っていた。
ホームに滑り込んできた電車に乗り込むと、ムッとした。
しばらくはその理由に気がつかなかったが、電車を降りるころになって不快な空気が車内に漂っていた理由がわかった。
疲れてストレスフルの中年サラリーマンが醸し出す加齢臭が、少しも浄化されてなかったからだ。休日で女子学生がいなかったからだ。
自動車の街、豊田を走り抜けているこの電車は、社畜がTOYOTAカレンダーにしたがって運ばれていく。人によっては、ドナドナが聞こえているかもしれない。
今月から自分が働いている街、豊田ではラグビーのワールドカップの試合が誘致されている。
朝はまだ雨が残っていたが、お昼休みには雲が切れて晴れ渡っていた。
食事をするために表通りを歩くと、いつもと違ったインターナショナルな光景が広がっていた。
白人たちがいたるところで闊歩していた。皆、陽気で見るからに楽しそうだった。
交差点の角では、体格の良い初老の白人が座っていた。そんな彼にたいして、警察官が包帯を巻いていた。日本人を含めたアジア人には冷たいくせに、白人にはなぜ優しくするのだろうか。
最近よく利用する蕎麦屋を訪れると、休日出勤の弊害を味わった。ランチがなかったのだ。ざるそばの大盛を頼んだら、びっくりするような出費になってしまった。
これなら、体調不良だと連絡して自宅でまったりとしていた方がよかったと思ったが、そんなことはまだ序の口だった。
夕方の会議で自分の右隣に座る元請けの女性社員が、自分に突っかかってきた。そう、自分が好きになれない美人ではない女性課長が。
このごろは彼女が不似合いな耳飾りをしているのが、不快で仕方がない。だが、横に座って仕事をしていると見たくはないが、たまには目に入ってしまう。
いい歳なのに、なんで不似合いなものを身につけているのだろう? 彼女が一番マシに見える方法はただひとつ、痩せることなのに。
自分を含めたまわりは、誰も本当のことを言わないが。世間はいつだって、人に冷たい。