淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。広く浅く、そして薄い視点で気楽に書いてマース。

辻さんだって、やさぐれる夜がある

 辻仁成の日記が好きだ。芥川賞作家の彼は毎日、様々なことをblogに綴っている。フランスで暮らしている日常のこと。高校生になったばかりの、一人息子のこと。文筆活動や音楽活動のことなどなど。マルチに活躍している彼だからこそ、話題も広くて興味深いことが綴られている日が多い。
 毎日webで更新されて、誰でも無料で読めることは同じでも、誰かのblogとは偉い違いだ。
 そんな彼の日記の中でも、昨日書かれたものは今まで読んできた中では、ちょっと変わっていたので以下に紹介したい。
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 読んでもらうとわかるのだが、昨日の彼はやさぐれていた。還暦の誕生日を迎えたばかりの彼は、10代のナイーブな少年のような感じだった。
 その夜に彼が何を思って何について考え、何が許せなくて投げやりになっているのかが手に取るようにわかったのには、思わず唸ってしまった。流石に時代を代表する一流の作家であると思わざるを得なかった。
 それに彼のようなマルチな才能を持った人間でも、自分がしょっちゅう抱くようなネガティブな思いに耽るのかと思うと親近感がわいた。

 彼の才能、世に表してきたものなどはとても自分などが真似できることではないのに、何を悲観することがあるのだろうかとも思う。
 誰もが知っている女優二人と結婚したことも、そうだ。というか、そのことが男である自分としては一番羨ましいかもしれない。

 今から20年以上前の話だ。当時、自分はまだ20代の後半で小説教室に通っていた。
 ひとつ年上の男性の受講生と話をするようになった。歳だけでなく、住んでいるところが近いことも理由だったかもしれない。
 そんな彼に小説を書きはじめようとした理由を聞くと、中山美穂の結婚が理由だった。彼女が辻仁成の小説に憧れて結婚を決めたことに、彼女のファンであった彼は心を揺さぶられたようだった。

 そのころの自分はまだ、辻さんの小説を読んだことがなかったので、その話をどこか馬鹿にしたように聞いていた。
 だが後日、彼の小説を何作か読んでその考えが変わった。『サヨナライツカ』、には特に衝撃を受けた自分。こんな小説が書けたら、さぞ女性にモテるのではないだろうかという安易な考えが頭をよぎったまま、なかなか消えなかった。

 彼のような天才が還暦になっても、大人になりきれないでいる。なりきれないところを見せてくれていることに、自分は安心している。
 まだまだ、自分も大人になったフリなんかをしていてはいけない気がしてきた。

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今日の写真のモデルはまやさん。