淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。広く浅く、そして薄い視点で気楽に書いてマース。

エンドロールを最後まで見てしまった 【『男はつらいよ お帰り 寅さん』を鑑賞して】

『マチネの終わりに』を映画館で見た時、予告上映が気になった作品が二つある。 
 一作は『ラストレター』、そしてもう一作は昨日、観てきたばかりの『男はつらいよ お帰り 寅さん』。
 シリーズの主演を務めた渥美清が亡くなってから四半世紀近く経って、続編が制作されたことがさらに興味を引いていた。
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 若いころは渥美清に似ていると言われることが、ままあった自分。
 今思うと光栄なのだが、当時はそのことが嫌だった。
 寅さんの魅力や、山田洋次監督が手がけた作品の価値は若者にはわからないものなのだろう。

 この作品は細かいディティール、設定、リアリティーや整合性などを求めては駄目だ。
 そんなことを考えて観る作品ではない。
 寅さんを知っている人、寅さんを好きな人だけが楽しめばいいのだ。
 にわかファンの自分が言うのだから、間違いない。全49作の内、10作品も鑑賞していないのだから。

 懐かしさを感じる主題歌のイントロが流れてタイトルが映しだされただけで、センチメンタルになっていたが、すぐにあることが自分を別の感情にさせた。歌声が寅さんではなく、桑田佳祐だったから。桑田の演出染みた歌い方が鼻についたからだ。
 サザンも好きだし、桑田佳祐のことも嫌いじゃないのに。

 この作品を見終わって思うのは、もう一人の主役は吉岡秀隆だということ。ヒロインは後藤久美子だろう。
 亡くなった父親はデビューしたばかりの彼女を絶賛していたことをよく覚えている。
 世間でもてはやされてはいたが、自分のタイプではなかったので、彼女に対してはちょっとした反感すら覚えていた。思春期だったこともあったのだろう。
 だが、歳を重ねた彼女を観て、初めて素敵だと思った。スクリーンの中の吉岡秀隆演じる満男に代わって、彼女と向き合って話したいと思ったほどだ。

 また、平野啓一郎が書いた小説『マチネの終わりに』と山田洋次監督がこの作品に込めたテーマとサブテーマが重なって見えたことも興味深かった。
 人と人との関係性や昨今の世界情勢を、二人は似た視点で見ているのかもしれない。

 作品が終わってエンドロールが流れ初めても、自分は席を立たなかった。
 最近、映画館で作品を観てもクレジットはほとんど見ることはなかったのだが。
 涙を流していたのを他人に見られたくなかったこともあったが、作品の余韻に浸っていたかったからだ。渥美清の歌声にも。
 エンドロールを見ながら彼の声を聞いていると、あざとささえ感じた桑田佳祐の歌い方の印象が、すっかり変わってしまった。
 二人の歌い方を聞き比べるだけでも、この作品を見た価値はあった。
 おそらく、本当にシリーズ終作となる今作を見るかどうか迷っている人がいたら、是非に見てもらいたい。

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今日の写真のモデルはまやさん。