システムエンジニアってどうしてお酒が好きな人が多いのだろう？ しかも、独りではなくて仕事で関わった人と呑みたがるのが、余計にたちが悪い。
客先常駐のエンジニア同士であれば所属会社はもちろんのこと、立場、利害や収入などはバラバラ。一緒に酔って話したところで、コミュニケーションが図れるどころか、摩擦が起きるリスクは高いのに。
昨夜も幼馴染みの友人と二人、グラスを傾けた。保育園が一緒だった彼は、公立商業高校を卒業してすぐに地元の信用金庫に就職して、今もまだ在職中。システムエンジニアとして。
自分がエンジニアになったのは三十歳になってからなので、彼とは12年のキャリアの差がある。
昨夜は自分が誘った。
最近、鳥貴族に足を運んでいなかったので行きたくなったからだ。
一時は通い過ぎて飽きてしまった反動が、最近は近づきもしていなかった。
安普請な店内、大味なタレの焼き鶏が何故か恋しくなっていた。
彼の職場が最寄りなこと。自分の職場からも運がよければ乗り換えなしで行けることもあって、名駅西口店に行くことになった。
蛇足だが、なごやっこは名古屋駅のことを略して名駅と呼ぶ。
19時前に鳥貴族に着くと、先客が二組いた。10分ほど待っていたが、一組の先客も呼ばれなかったので場所を変えることにした。
火曜日なのにまさか、貧乏貴族にもなれずに漂う民になってしまった二人。
かつては親不孝通りと呼ばれていた場所を通り抜けて、串焼きともつ鍋の店の暖簾をくぐると、すぐに座ることができた。
カウンターに二人座って、ビールを傾けた。トマトもつ鍋を突きながら。
仕事の愚痴から現アメリカ大統領のトランプの分析まで話題は尽きなかった。
自分が居たのにも関わらず、話題が下振れせずにある程度の品を保っていたのは、友人の品性のおかげだろう。
だが、最後に自分が落ちをつけた。
会計後にお手洗いから戻ると飲み残していると思っていたアルコールを飲み干したが、自分のグラスではなかった。
先に帰った、お客のものだった。友人によると、他の国のカップル、しかも女性のものだったらしい。
今日になって友人から間接キスの味をメールで問われたが、全く覚えていない……。
