淡白マスヲのたんぱく宣言 

アラフィフのオッサンの雑記。広く浅く、そして薄い視点で気楽に書いてマース。

それでも彼女は待っていた

 仕事をしていても、人生を楽しんでいても、ぼんやりとしていても時は流れ、月日は移ろっていく。
 灯油の巡回販売になんとか慣れたがその分、緊張が解けはじめたせいかもしれないが、酷い疲れを感じた今日。
 平日五日間の長距離通勤と土曜日の副業による疲労が溜まっていたのだろう。
 そのおかげで、たいしたこともせずに一日をまったりと過ごした。

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昨日の巡回販売中に休憩した、ある道の駅の裏手にて。
 昨日はモテモテの一日だった。自分の車を自転車で追っかけてくれた女性が一人、自分と連絡先を交換したいという申し出をしてくれた女性が一人いた。
 だが、昨日の自分の心を一番揺さぶったのは彼女たちではない。
 別れの挨拶もせずに去っていたと思っていた女性が、じっと自分を待っていてくれたからだ。

 その女性は古い公営住宅に住んでいて足が少し悪い。彼女が住んでいる部屋は通りからは一番奥。
 先月の中頃までは、毎週のようにお客になってくれていた。その度に彼女が住む部屋の玄関先まで、灯油の入ったポリタンクを持って走った。

 だが、ある週の土曜日に彼女の住む近くまで行くと、風景が一変していた。
 ローリー車で進もうとする道にはダンプが横付けされていて通り抜けるのに苦労したが、ダンプ越しに見えた様子の方が気になった。
 古くなっていた建物の一部には幕が張られ、通りから視界が遮られていた。
 現場作業員が重機などを使って建物の解体を始めていた。
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 久しぶりの彼女はポリタンクの脇に佇んでいた。自分の顔を見ると笑んでくれたような気がした。
 彼女が住んでいた方を見ると更地の向こうに、一部だけコンクリートの建物が残っていた。
 ちょっと大袈裟かもしれないが、災害を受けて壊滅状態の中、奇跡的に残った建物のようだった。
 気がつくと次のようなことを口走っていた。もう会えないかと思った、と。

 彼女の脇にあったポリタンクはいつもよりも多い二つ。
 彼女曰く、もしものことに備えて灯油を余分に買っていたという。
 彼女が住む部屋の周りの建物の解体作業によって、自分を含めた巡回販売車から灯油を買えなくなってしまうということが、彼女のもしもの中に入っていたのだろうか。
 久しぶりに会って器が大きそうに見えた彼女にとっては、どうでもいいことなのかもしれないが。

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今日の写真のモデルはまやさん。