朝7時過ぎに電話の着信があった。相手は高校からの友人。
先々月からお酒を呑む約束をしていたので、その誘いだった。
外で呑むのではなくて、もう一人の友人と彼の自宅で呑むことを提案してくれたのだが、断った。
友人の大事な奥さんを自分たちの楽しみで、不幸な災いに巻き込むことになる可能性を鑑みたからだ。
在宅にこそなったが、それまでは毎日の朝夕にセントレア空港まで行き来する電車に、乗り続けていた。
自分がコロナの保菌者であってもおかしくはないと、常に思い続けていたからだ。
特に春節前後の電車内では神経質になってしまうことが多かった。
乗客が持ちこんでいた大きなトランクをより鬱陶しく思っていたのを、今でも覚えている。
コロナ疲れだけでなく、在宅勤務でもストレスが溜まっているので、本当は友人の誘いに応じたかった。
だが、友人には妻がいる。彼だけだったら、招きに応じたかもしれない。誘ってくれたので、相手もそれなりの覚悟はあったはず。
それでも彼の妻は別。自分にとっても大事な人だから。彼女は自分の妻の友人でもある。
友人から電話が会った時はまだ、ベッドで布団を被っていた自分。
寝起きだったこともあってか、友人には強い言葉を使ってしまったような感じがしていたので、後で少し気になっていた。
朝食を食べている時もそんなことを考えていたが、まわりの空気が少し違っていた。
電話ではあるが、友人と直接話したことで自分の心が和らいでいたことに気がついた。
在宅勤務のメリットはいくつかある。通勤に時間がかからないので、夜更かしも朝寝だってできる。
逆に一番のデメリットは、誰とも直接に触れあわないこと。
特に独り暮らしをしている自分にとっては、かなり堪える。
用件はなんでもいい。こんな時だからこそ、電話だってオンラインのツールだって構わない。
誰かとリアルタイムに話すこと、話せることがどんなに自分の気持ちを楽にしてくれるのかを、寝起きの自分に昔からの友人が教えてくれた。
一緒にグラスを合わせられるようになったら、今朝の電話のお礼を直接口にしたい、ありがとうの言葉と一緒に。
オッサンがオッサンに言うのは似合わない気はするが。