緊急事態宣言明けのある日、モデルと一対一でポートレートを撮影している時に、次のように言われたことがある。ななみんファンですよね、と。
ななみんとは、名古屋のプロダクションに所属しているタレント、加藤凪海さんのこと。
唐突に本当のことを言われたので、その後のしばらくは小っ恥ずかしくて自然な受け答えができなくなってしまった。
加藤凪海さんの個人撮影会が所属事務所の主催で来月の頭に予定されている。
撮影会に応募しても抽選に当たらなければ彼女を撮影することはできないが、予想の通り見事に選に漏れた事実がメールで返信されてきた。
運が悪いと思っている自分にとって、返信結果は想定内。
逆に抽選に当たったらどうなっただろう? いい年のオッサンがモジモジしながら、シャッターを切り続けるのだろうか。
対面した時に、世の中で自分が上手く言葉を選べなくなってしまう女性の一人を前にして。
今までに運が良かったと思ったことがない。
高校時代に東京の浅草寺でおみくじを引いたら、産まれて初めて見た本物の大凶。ムキになってすぐにもう一回引くとまたまた大凶。さすがにその時はしょげた。
友人たちの中で一人茶屋に座ってうなだれていると、店員に檄を入れられた。もう一回、引きに行くように。
三回目の挑戦でやっと大吉を引き当てたことを、30年経っても覚えている。
産まれてくる途中のどこでツキを落としてきたのだろう?
一方、実弟には今までに散々運の強さを見せつけられている。
運の良さ悪さは先天的なもの。自分は運が悪い理由は何だろう? 家系的なものだったら弟も同じはず。
弟と違って自分は前世で酷いことをしていたのだろうか。
水曜日に次の現場の面談を受けた。その結果は昨日までに受け取ることになっていたが、まだ梨の礫。
現場にあぶれて給料が減額される可能性も現実味を帯びてきたので、木曜日にある副業に応募したが、そちらからも返信はまだない。
コロナ禍という状況が持っている者、持っていない者、選ぶ者、選ばれる者の差をよりあぶり出している気がする。
その先には何が待っているのだろう?
それでも今はまだ、なんとか自分は好きなことを多少はできている。
だが、それらを完全に失った時の自分はどうなってしまうのだろう? 代わりに新しい何かを見つけることができるのだろうか。
好奇心だけは旺盛なので、きっと何かは見つけることができるのではないかと、楽観視している自分も居る。