昨シーズンに続いて、今シーズンも灯油の巡回販売をすることになった初日の昨日。
平日よりも少しだけ早起きをして高速を走らせた。ローリー車が止まっている営業所を訪れたのは今年の三月末以来のこと。
安普請の事務所に入ると、所長が担当エリアの地図や釣り銭などを準備してくれていた。
正直、車の運転には飽き飽きしているこのごろ。
ローリー車の運転席に座ってもそんな感情は同じで、木曽川を渡って岐阜県に入るまでが、より遠く感じた。
ウインターシーズン序盤のころ、車でゲレンデに向かうのがより遠く感じるのと、なんとなく似ていた。
それでも、昨シーズンに仕事を始めたころよりは明らかにローリー車の運転はスムーズだった。運転するにしたがって、マニュアルシフトの操作の感も戻ってきた。
営業開始地点に着いたのは8:15。
MP3プレーヤーのスイッチを入れると、童謡にのせた灯油18ℓの売値を伝えるナレーションが辺りに響きだした。
最初の販売エリアでは三件の予約を受けていた。そんなことは昨シーズンに一度もなかったことだった。
今シーズンの最初のお客さんは自分が想定していた女性。病気のために手に力が入りにくい年配だが、上品な笑顔が素敵な人だ。そんな彼女の笑顔をまたしばらくは、時折だが見ることができる。
出だしは飛ぶように売れた訳ではなかったが、ある喫茶店での販売を機に流れは変わった。
ポリタンク8個と給油タンクへの給油で200ℓが売れてから。店主にお土産にゆで卵をもらった。おそらくモーニングサービスに出していたものだろう。
その玉子は今日のお昼にインスタントラーメンと一緒に美味しく頂いた。
最初のエリアだけでいきなり、1,500ℓ売れた。代わりにそのエリアには5時間以上も滞在することになってしまったが。
何も食べずに6時間以上も連続で働いた。もちろん、それなりに疲れたが、そのことに不満は沸いてこなかったし、焦りもしなかった。
次からの3エリアの売り上げは落ち込んだ。おまけに、冷たい雨が降ってきたので、それなりに濡れた。
それでも、数少なかったお客のほとんどは顔なじみで、今年も自分でよかったと言ってくれた。名前さえ知らない自分のことを。
最後のエリアに入るころには雨が本降りとなった。マスクをしていると眼鏡が曇り、車の運転がしにくくなるほど。
暗くなったなか、なんとかいくつかのポリタンクを探すことができた。
正直、昨日は何個もポリタンクを見落としているだろう。
それでも、一日の売り上げは2,050ℓ。昨シーズンも含めても、自己記録を更新したのではないか。
営業所に戻って給油などの後処理を済ませると、所長たちと売り上げ歩合の話などになった。
相手は考えているようなポーズを取ったが、自分にとってはどうでもよかった。昨シーズン、一度も歩合を受け取っていないし。
日給12,000円。半日以上も拘束されて、それだけしか受け取れないことは承知の上。
不満がないこともないが、それ以上に得ているものがあの仕事にはあることを、はっきりと思い出させてもらった。