自分より歳下の人間に昔話をすることを自戒しているこのごろ。
そのかわりに気ままに書いているこのblogでは、自分の過去の話を好きなだけ触れてもいいだろう。
自分が成人式に参加したのはおよそ30年前。そう書いただけで随分と歳を取った気がするが、事実なのだから仕方がない。
当時の自分は学生でもなく、会社員でもなかった宙ぶらりんの状態。それでも厚かましくも成人式に参加した。
親が作ってくれたフルオーダーのダブルのスーツを着て。ちなみにその後にそのスーツを着た記憶はない。
当日は雪が降っていた。成人式の会場だったのは卒業した中学校の体育館。
そんな場所に体育服でもジャージ姿でもなくて、一張羅を着て同窓生たちが数年ぶりに集まった。
式中のことばかりでなく再会した同窓たちにちなんだ記憶もほとんど残っていない。
昔好きだった同級生にも再会したはずなのだが、そんな彼女のことすら覚えていないのだ。
若い女性の和装が好きではないことが理由なのかもしれない。着物を着慣れていない女性を見ると七五三みたいで、こちらが恥ずかしくなってくるから。
それでも記憶をひねり出して成人式の日の思い出を書いてみる。
式の日の夕方、親しい友人たちとチェーン店の居酒屋へ呑みに行った気がする。
幼馴染みの一人が日本酒で悪酔いしたこと、そんな友人を気にしながら市バスで帰ってきたことをおぼろげに覚えている。
あってもなくてもよかったような一日だったと今では思う。
それよりも印象強く記憶に残っているのは、成人式から数日後に自分の友人が亡くなったこと。彼とは中学校と高校も一緒だった。
葬式の日も雪は降らなかったが寒い日だった。葬儀は友人宅で行われ、出棺の光景は成人式のことよりも覚えている。
亡くなった友人とは中高の六年間一緒だったのに、自分が知らない女性が何人も泣いていたのに驚いたし、違和感を覚えた。自分が全く泣けなかったからかもしれない。
その時の自分は友人の死を受け入れることができなかったからではないかと、今になって思う。
それから今まで何人もの人を見送ってきた。
幸いなことにここ数年は葬式にも通夜にも縁がない。今年も喪服を着る必用がないことを願っている。