小説やblogを書いたり、写真を撮ったりしているのは、誰かに伝えたいことがあるからなのだろう。会話などではなく、それらでしか伝えられないことのはずだ。
自分の想いがどれだけ伝わるのかはもちろんわからない。才能がある訳ではないからだ。
昨日のことを伝えたいのだが、どのように整理して書いたらいいのか悩んだが、悩んだ甲斐はあったのだろうか。
大まかに書くと、毎土曜日にお手伝いしている灯油の巡回販売の担当コースが変わった。
原因は担当にしていたコースで他業者が大幅な値引きをして挑んできたからだ。
対して自分が手伝っている会社も18ℓで200円以上の値引きの措置をすることになった。
当然、売上げ量の大幅なアップが予想される。
そのことを伝えられたのは先週の木曜日の夕方。
テレワークでシステムエンジニアの仕事をしている最中に現場の責任社である所長から電話がかかってきた。
専従者に自分がコースを譲ったほうがいいのではないか、と所長は口にした。
確かに土曜日の副業まで、タフな仕事に耐えるのは相当に厳しいだろう。
それなりに納得して、コースを変わることを決めた。
前のコースは岐阜市の郊外から関市と美濃市まで。新しいコースは可児市だった。
可児市は友人が住んでいるので、関市や美濃市よりは土地勘があると思っていたが、何処をどのように走っているのかが、ほとんどわからなかった。
朝、タンクローリー車で出発する営業所から目的地までは前のコースよりも20分以上も早く着いた。
だが、いきなり苦戦する。会社が用意しているルート地図とスマホのアプリの地図を併用しながら走ったが、何度も道を間違えた。
だが、最初のエリアは自分が思っていたよりも少しは売れた。
街の雰囲気だけでは灯油が売れるか売れないかは、まだまだ自分なんかではわからない。
次のエリアに移動すると、そのエリアは広かった。紙の地図のサイズがB紙ほどもあり、その大部分が巡回エリア。
大規模な団地だったが無機質に感じた。どの家もわりと小綺麗なのだが、個性を感じなかった。変な表現かもしれないが、金太郎飴を切ったみたいだった。
おそらくは分譲地。それぞれに別のハウスメーカーの家なのだろうが、自分から見たらあまり違いがわからなかった。
そのせいか、団地の真ん中では何度も自分がどこに居るかがわからなくなった。アラフィフのオッサンはすっかり迷子になってしまった。
何度か客に地図を見せて、助けてもらったが精神的にもすっかり疲れてしまった。
このエリアでは予約注文まで受けていたが、頭はパニック状態。それどころではなかった。
午前中だけで自分の欠点をしっかりと確認させられたし、することができた。新しいことをすることが苦手であること、環境の変化に弱いことを。
時間の余裕が少しはあったので、ランチをゆっくりと食べてリフレッシュしたくなった。
だが、担当エリアにもエリア間のルート上にはめぼしい店がなかなか見つからなかった。
なんとかチェーン店のラーメン屋でランチセットを食べたが、げんなりした。
のびたラーメンと半チャーハンで1,100円以上もしたから。1時間以上も働いても、その金額は支払えない。
午後、最初に回ったエリアとその次のエリアではルートの開始地点すらわからずに彷徨った。
おそらくストレスが原因だろう。次のエリアでは途中からずっと変な頭痛がした。
美味しくないラーメンでは僅かしかリフレッシュできなかったのかもしれない。
頭の中がトロトロになりながらも、なんとか最後の販売エリア付近に辿り着いた。
なんとそのエリアは明智荘の近くだった。
歴史好きの自分としては、機会があれば訪れてみたいと思っていた場所。
三月までの間、そんな場所の近くを毎週のように走ることになるとが少しだけ嬉しかったりもした。
昨日の売上げは1,157ℓ。販売量以上にぐったりと疲れきっていたが、そのことに意味があるようにも思えてきた。
ちょっとした変化でも受け入れることが苦手であることを確認できた。苦手なことでも、まだなんとか対応できそうなことがわかったから。
自分が営業所を去ろうとすると、自分とコースを変わった彼がコースから戻ってきた。帰り道にかかる時間が30分以上は違うはずだから。
互いに挨拶をしてから立ち話をしたら、以外と長くなった。
どうやら、彼が自分のコースを奪った形になっていることに少し後ろめたさを感じているようだった。
彼は数日前に就職をしていた会社を辞めたばかりのことまで、自分に話してくれた。全く他人事のようには思えなかった。
灯油の巡回販売ができる人は、会社員として働く適性は低いとしか自分は思えないから。
ひょっとして、会社員で副業ができる人の全てに当てはまるのかもしれない。