どうやら、自我が強い女性に振り回されるのが自分の宿命のようだ。
自分の母親もはっきりしている性格だが、同居していた祖母もいろいろな意味で強い女性だった。
そんな家庭環境で育ったせいか、おしとやかな女性に憧れを抱いていた。そのはずだった。
だが、実際に気になった女性は自分を強く持っていた人ばかり。別れた妻も頑固だったし、娘もはっきりした性格な方だと思う。
もし、これから先に気になる女性に出会ったとしても、自我は強い人だろう。
水曜日の夕食後、パソコンを触っていると思ってもいない相手からの着信。別れた妻だった。
別れた妻からだったので、出たくなかったが条件反射でおびえながらも電話に出てしまったのは我ながら情けなかった気がする。
電話に出ると、いつも以上にエキサイトしていた彼女がまくし立ててきた。娘に対して熱くなっていることだけは伝わってきたが、詳細はわからなかった。
ただ、彼女が常軌を逸した感情に支配されていたことだけはわかったので、あることを提案した。しばらくの間、娘を自分が預かることだった。
即答で断られたが、数分後の電話で自分が娘を迎えに行くことが決まった。
今の季節は酒を口にしないことが多いのだが、酔っ払っていなくてよかったし、まだベッドに入ってなかったのも幸いだった。
最初の電話は23時少し前。眠りについていることも希にはある時間だったから。
そんなことから唐突に始まった娘との二人暮らしも今日で五日目。
一昨日は勤めていた会社に赴いて退職手続きをしてきた。
突然の娘との生活を迎えてなければ、辞めた会社に対してはもっと様々な感情がよぎったのかもしれない。
退職の手続きは保険証を返して、用意されていた退職届に署名しただけ。
あとは最後の担当だった営業と挨拶を兼ねて雑談を交わしたくらいだ。わずか30分ほどの時間だった。
支店長が顔を出したらイヤミの一つでも口にしてしまうかもしれないと思っていたが、杞憂だった。
先に金にならないことには最小限の手間しか払わない。わかっていたけれど、そんな会社だったことが最後の最後に再確認できた。退職の選択をしてよかったと、素直に思えた。
ちなみに、娘は今回のことをまわりには家出と称しているようだ。
彼女の家出はどれくらい続くのだろうか。気が済むまで、居てくれればよいとは思っているが、どうなのだろう。
春休みの思い出になるのかな?