昨夜、久しぶりに地元にあるショットバーに行った。ちなみにその店は40年以上も営んでいるらしい。
夕方から、中学校からの友人と二人でチェーン店の焼鳥屋で呑んでいたのだが、その店に通いすぎたせいかメニューに飽きてしまったので早々と店を変えることになって、そのショットバーを選んだ。
焼鳥屋が面している通りは地元ではそれなりの幹線道路。市バスも走っているし、自分が子供のころは名鉄だけでなく国鉄のバスも走っていた。
当時、市バスと名鉄はワンマンだったが国鉄バスの一部には車掌が乗っていたのが、子供だった自分の心に強く残っている。
国鉄が民営化されてもしばらくはバスが走っていたが、市バス以外のバスが走らなくなって久しい。
昨夜は酔い覚ましに歩くには少し寒かった。焼鳥屋からショットバーまでは歩くと15分ほどの距離だったが、深まった秋の夜風が歩いた時間を長く感じさせた。
途中でタクシーを拾うつもりだったが、一台もタクシーを見かけることもできなかったので、店まで歩ききった。
ショットバーの扉を開けるとホッとした。暖かかったからだ。店内を眺めると石油ストーブに灯が灯っていた。
土曜日だったのに自分たち以外に客はいなかった。
広くないカウンターに友人と二人で座ったが、それだけで自分はくつろげた。懐かしい感じがしたのだが、なぜだったのだろう?
独身のころに数えるほどしか来店したことがなかった店なのに。
最初に白州のハイボールを頼み、最後は善光寺のハイボールで締めた。
心地よく店での時間を楽しむことができたが、友人は自分と少し温度感の差があったようだ。
友人には気になることがあったらしい。マスターとちょっとした接点があったことが理由だったようだ。
むかしむかし、あるレンタルビデオ店でアルバイトをしていた友人。
今ではDVDですらレンタルしている店を探すのは難しいが、自分が二十歳くらいのころまではレンタルビデオショップをよく見かけた。
自分も高校生のころからよく利用していたし、いくつものレンタルショップの会員カードを持っていた。ビデオを借りるためには店毎に会員にならなければならなかったからだ。
マスターは友人が働いていたレンタルショップのお客だったらしい。
どれくらいの頻度で利用していたのかまでは話してくれていたのかは自分が酔っていたこともあっておぼろげだが、マスターは成人男性の欲求をビデオに求めていたことを友人は自分に教えてくれた。
大人の男としてはごく普通の欲求だから、マスターを咎める気など全くない。
けれど、非日常感を味わうために客として訪れた店で、スタッフから日常感を強く感じてしまったら興ざめてしまうのは仕方がないこと。せっかくの雰囲気も台無しになってしまう。
店を選んだ彼のせいではないし、店で出迎えてくれた彼のせいでもないのだけれど。