hatehatehahaha.hatenablog.com※ 昨日の記事の続きです。
欲しかったレンズを買うと急いで駐車場に停めてあった車に戻った。次の予定が迫っていたからだ。
15:25までにスタジオ、『kamome216 Studio』に到着しなければならなかったからだ。
時間は15時を過ぎていたが、車で10分ほどの距離だということはナビで確認してあった。
難波の繁華街を外れて人も車も少なくなったところに、そのスタジオはあった。
車でその前を通っただけで、そこがスタジオだとはっきりとわかった。目立つような看板などの表示はなかったが、スタジオの入口からしてセンスに溢れていたからだ。
www.kamome216.com
今まで写真撮影のために自分が訪れたスタジオは、全部で3か所。名古屋で2か所、大阪では1か所をポートレートの撮影会で利用していた。
中にはとてもスタジオだと呼ぶには無理があるようなところもあったし、そんな場所をスタジオと呼ぶことを許してしまうのは、やはり名古屋の地域性だろう。
文化、アートやカルチャーと呼ばれるようなものに、住んでいる人たちの関心が低い街だから仕方がない。昔の自分や実母なども、そうだ。
先日も名古屋市内を中心とした愛知県内で行われている国際的な芸術祭の運営が、ニュースになったことは記憶に新しい。自分もそのことについては、多々思うことがあってこのblogの記事として取り上げたほどだ。
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スタジオの場所がわかったので、付近で車を駐車できる場所を探した。歩いて2、3分のところにコインパーキングがあったので、そこに車を入れた。
カメラとレンズを持って、スタジオへ歩いた。その中には買ったばかりのレンズも当然含んでいた。
先ほど目を奪われたスタジオの入口を開けると、天井は高く開放感に溢れていた。
左手に机と椅子がいくつか置かれていて、そこに自分と似た年齢層の男性が何人も座っていた。彼らのほとんどはカメラ、レンズやストロボなどを触っていたので、撮影会に参加するカメラマンだろう。今まで自分が参加してきた撮影会のカメラマンたちよりも、アクが少ない気がした。大阪での撮影会に参加したのは二回目だったが、初回の他の撮影会の時も似たようなことを感じたのを思い出した。
その日、そのスタジオで自分が参加したのは、『momo撮影会』。以下に撮影会のホームページのリンクを張るが、最初にそのサイトを見た時から、印象が良くてずっと参加したいと考えていた。
正直、そのサイトはスタイリッシュとは言えなかったが、運営者の人柄がなんとなく伝わってくることに、なんとなく好感を抱いた。
momo-kansai.com
参加費を払ってカメラの準備をしていると、ある女性が自分の視野に突然入ってきた。そればかりか、こちらを覗き込むようにして、話しかけられたので焦った。
動揺しながらも、なんとか状況を理解した。話しかけてきたのは、撮影会の参加時に自分がモデルとして予約した女性であることを。彼女の名前は、まやさん。
まやさんは次のように話した。着ていた衣装の他にもう一組の装いがあることを。そちらの方がよければ着替える必要があるので、自分に伺いを立てにきたようだった。
着替える必要がないことを即答した。理由は簡単ではっきりしていた。
いきなり話しかけられて、自分が焦ったということが全てを証明している。魅力を感じない女性に話しかけられても、動揺したりはしないから。その魅力には、彼女が装っていたものも含まれていたはずだ。
15:30を過ぎると撮影会がはじまった。最初にスタジオの入口で撮影したいと思って、彼女に相談すると了承してくれた。
彼女に着替えてもらわなかった理由に、スタジオの入口をバックにしたときに写真映えすると感じていたからだ。実際、入口に彼女に立ってもらって撮影すると、期待以上に素敵な写真になった。
その時のワンショットが一昨日のblogの写真だが、同じ場所で撮った別のショットをここで披露したい。 スタジオ内に戻ると、モデルとカメラマンがペアになって、思い思いの場所で写真を撮っていた。
この撮影会は個撮だったから。個撮とは、カメラマン1人に対してモデルが1人で撮影する形式のこと。名古屋の撮影会ではあまり見かけない。
撮影会の申し込み時にカメラマンがモデルを1人選ぶことになっていて、決められた時間内は2人だけで撮影することになっていた。
今まで利用したスタジオで一番広かったし、個撮であるためにカメラマンの数も少ないので、他の人のファインダーに入ってしまうリスクをそれほど意識しなくてもいい点も快適だった。
カメラマンとモデル同士で譲りながら、ゆったりとした気分で空いている場所で撮影し、撮影したい場所が空いたらまた移動して撮影を続ければいい。
時間は60分だが、今まで自分が参加した撮影会の中では、断然余裕があった。時間に追われることもなかったので、カメラ操作をミスする確率も少なかった。
名古屋で多く行われている撮影会は、巡撮と囲み。どちらも1人のモデルに対して複数のカメラマンで撮影するのは一緒。
巡撮はカメラマン1人1人に決まった時間が割与えられ、その時間内で順番に撮影する方法。
囲みとは1人のモデルを複数のカメラマンで囲んで、一斉に撮影する方法だ。
巡撮の中には、自分の順番でなくても順番で撮影しているカメラマンの邪魔にならなければ、横や後方で撮ることが許可されている脇撮りという方法が併用されていることも、ままある。
仮に90分巡撮の撮影会に参加したとする。参加したカメラマンが7名だとすると、1人に与えられる時間は10分ほどだ。
多くの撮影会では撮影スポットを少しずつ変えていくので、ワンスポットでの撮影時間は一回で2分前後が多い。人によっては、2分で一体何ができるのだろうと感がる人も多いだろう。
実際、マニュアルで全てのカメラの設定をしていたら、時間が過ぎてしまったなんて、笑い話を聞いたことがあるし、あるカメラマンがスタジオでの撮影中にストロボの設定をしていたら、時間がほぼ過ぎていたことを自分は目にしたこともある。
初めて個撮を体験してみて、ポートレートを撮る上での考え方や価値観が変わったことは間違いない。
しかも、モデルを務めてくれたまやさんが、素敵でセンスがよく、カメラマンである自分の気持ちを察してくれたから。
具体的に次のようなエピソードがあった。
スタジオ内のある場所で撮影したので、次の場所へ移動する最中に彼女と取り留めの無い話をしていた。その会話中に、彼女がある場所に移動して、そこで立ち止まってくれた。
その場所は自分が撮影したいと思っていたポイントだったので驚いた。彼女は何故、自分の考えがわかったのだろう? お互いに、その日に初めて会ったばかりだったのに。
彼女のおかげで、素敵な写真を何枚も撮ることができた。そして、そのほとんどがその日に買ったばかりのレンズで写したものだったので、本当に良い買い物をしたと思う。
数日過ぎた今でも、撮影した時のことを思い出さずにはいられない。中でもスタジオのベランダで撮影した時のことを。
後で思い返すと、その時のシチュエーションは自分が好きな小説のワンシーンのようにも思えてくるから、不思議だ。きっと、誰に説明してもわかってもらえないかもしれないが。
あっという間に60分過ぎた。カメラやレンズを片づけながら、撮影会の主催者と少し会話した。主催者は男性で60歳くらいで穏やかそうな人に見えた。
この撮影会のサイトに書かれていた文章から、女性が主催者だと思い込んでいたら違ったが、穏やかそうな人に見えたので納得したことを。
すると、まわりに居た数人のカメラマンは苦笑いを浮かべていた。どうやら、ちょっと前まではそうでもなかったらしい。人はやはり変わっていくものなのだろう、いくつになっても。
気分が良いまま車に戻った。スマホで時間を見ると、16:45を過ぎている。次の予定のために、18:00までにあるところまで移動しなければならなかった。
まだまだ、この旅は終わらない。(つづく)